中編 いつの間にか

「ねぇヴェルン。俺、君が好きなんだ」


 幼かった男、スイルはいつの間にか大きくなっていて、誰かに愛を伝えるような年齢になっていた。


「……へ? 私?」


 まさか、私にするとは思わなかったけど。


「それは……恋愛的な意味で、かしら?」


 なんて、あなたの真っ赤な顔を見ればわかることなのに。


「はは。

 この状況で家族的な意味だったら、俺はとんだ男に育ったものだね」


「言うじゃない」


 まったく、誰に似たのかしらぁ。


「それはもちろん、ヴェルンと一緒に暮らしてきたからね」


 ……私だったのね。


 へらりと笑いながら答えたあなたが愛しくて堪らない。


「ねぇスイル。

 私も、あなたが大好きよ?」


 ただ、ただひたすらに私は、あなたと一緒に、生きたかった。

 生きていきたかった。


 それが叶わない願いだと知っていても。

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