あなたと一緒に、いきたかった。

湊賀藁友

前編 幸せな日々

 私は、森の中に一人で住んでいる魔女。


 薬を作るのが得意だから、たまに村に薬を売りに行って、欲しい家財があれば貯めたお金で買いに行く。


 そんな日々……、だった。


 昔は。


「ヴェルン、たまには部屋を片付けて……。

 あぁ、また髪ボサボサにして……! 

 ほら、昨日も部屋にこもってたんだからちゃんと朝ごはん食べてね」


 そう声をかけてきたこのオカン……もとい男は、約10年前に森で倒れているのを私が拾った人間。


「わかってるわよぉ……」


 その時は確かまだ7、8歳で可愛かったのよねぇ。



『お姉さん、こんな森の中でなにやってるの?』


『……あなたこそ、なにやってるの?』


『……お母さんが、俺はもういらないんだって』


『そう。……じゃあ、私と来るといいわぁ。

 私が、あなたを立派な人間に育ててあげる』



「どうしてこんなオカンに育っちゃったのかしら……」


「? 


 何か言った?」


「いいえ、なんにも?」


「そう? 

 あ、今日の朝ごはんはサラダとさっき焼き上がったばかりのパンだよ」


 ……家政夫かせいふっていうよりは、オカンなのよねぇ。

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