第10話 止まる儀式と謎の人物


 殴られた頭を押さえていたら、勢いよく扉が開かれた。


『す…すいません! すぐに来ていただけますか!?』

「えっ!?」


 そこにいたのはパーチェだった、走ってきたのか、息を切らし頬には汗が流れる汗が見えた。


『お願いします! 召喚の儀式が不自然に止まってしまって、巫女様が狼狽なされてしまっているそうなんです……サトリ様ならもしかしたら原因がわかるかと思いまして…!』


 聡莉さんなら……あぁ、加護で調べればわかるかもって事か。

 あれ? なら直接出向かなくてもココで調べた結果をパーチェに伝えてもらえばいいんじゃない?


 菱川さんはどうするか聞こうとしたけど、早口だったのでパーチェの言葉をうまく聞き取れなかったらしい。

 菱川さ……っと聡莉さんにパーチェが話していた内容を伝えて再度聞いてみる。


「菱……聡莉さん、どうする?」

「う~ん……召喚の儀式が止まった理由でしょ?………ダメね、召喚の儀式に対して、私が元から知っている知識がフワッとし過ぎてて、そんな緊急事態の原因まではわからないわ」

「そうなんだ、ならそれをパーチェに伝えてこようか…」

「待って! …行ってみない? 現場を見たら詳しく調べられて原因も分かるかも知れないし……」

「そうなの?」

「ええ、それに…調べようとしたら阻まれた感じもあったのよね……」

「まぁいいや、なら行くって伝えるよ」


 パーチェに行く事を伝えると、すぐに出発する事になった。

 少しは休んだほうがと言ったんだけど、そんな暇はありません、と叫ぶように断られてしまった。


 さっきまでのパーチェとは全然違う受け答えに少し動揺したが、そこまでの事態なのかと気持ちを切り替えて、パーチェに案内についていった。





 パーチェに案内されて到着した所は俺達が召喚された場所の裏側にある扉の前だった、扉といっても取っ手もないしどうやって開くのかわからないんだけどね。

 今はパーチェが扉の横にあるガラスの様なものに手を触れている、っと思ったら扉が横に開いた!?


 扉が開いたらすぐ入って欲しいといわれたので、開いた瞬間に扉の先へ行く、扉を抜けてでた先は部屋だった。

 部屋の先には扉があり、壁際のほうには人が二人、そのうちの一人が俺達が入ってきたのを見て怪訝そうな顔をしているが続けてパーチェが入ってきた時にその顔は怒りに染まった。


『失礼します!! 召喚された使徒様御二人をつれてまいりました!』

『お前! 許可のないモノを此所に連れてくるとは何を考えているんだ! 此所は一部の神官と巫女しか入っては駄目だというに!!』

『御二人は神により選ばれ、召喚された使徒様です! 使徒様が部屋に入る事は問題なかったはずですが?……それにもしかしたら今回、何故予定していたより早く儀式が終わった理由もわかるかもしれません』

『何だと?……何故それを!?…っ!もしや加護が何か関係あるのか?』



 部屋に入った途端、パーチェが俺と聡莉さんを連れてきているのを知って怒鳴った男……思い出した、俺が召喚された時にも怒鳴ってた男だ…。


 まぁそれはいいか…、それよりも……アイツはなんだ?


 壁際にいるもう一人、怒鳴っていた男がパーチェのほうに移動してもこいつは動かない、というか微動だにしない。

 ブカブカの服を着てフードを深く被っているので顔も性別もわからないんだけど、ただ…なんだろう、こいつからは何にも感じない・・・・・・・…。


 ……てかパーチェがこの場所に俺達を連れてきたのは独断だったのね…。

 巫女さんが狼狽してるって知って、いてもたってもいられなかったのかな?

 う~ん…、聡莉さんの加護で原因がわかればいいんだけど…。


 あれ? 巫女が狼狽してる原因ってそんなにすぐに調べなきゃいけない事なのか? わざわざ狼狽してる巫女がいる中でする事なのか? 落ち着いた後にでも原因を調べるだけなら別に問題ないのに…………。


「…ねぇ崇志君、さっき無理矢理にでも従わせようとする人達がいるかもって言ってたの覚えてる?」

「ん、ああ、いってたね」


 小声で聡莉さんが話しかけてきたので俺も一応小声で答える。


「あの怒鳴ってた男の人、今軽くだけ調べてみたんだけど真っ黒なのよ」

「え?」

「多分今パーチェが私達の加護の事について話してると思うんだけど、警戒しておいて……あの男は無理矢理にでも従わせようとしてきてもおかしくない」

「……わかった警戒しておく、後で詳しく教えて、朝桐君も交えて話をしよう」

「ええ…」

「今は頼りないかもしれないけど、俺から離れないでな」

「…うん」


 真っ黒か……、てかそういうことなら今此所にいる俺と聡莉さんの二人組はヤバいな…、何かあったときに俺の加護じゃ対応できない。

 力尽くで来られた場合喋れても意味がないし…、小学校の時に喧嘩したくらいしか俺も対人経験はない……。


 でも警戒だけは言われた通りしておこう、何か出来るとも思えないけど何か出来るかもしれないから。


『すいません、許可が下りました、もう少しで目的地なのでついてきてください』


 聡莉さんと話しているとパーチェが戻ってきた。

 怒鳴ってた男は何やら考え事をしているのか? 心做し機嫌が良さそうにも見える…、聡莉さんの警告もあるし危険な事考えてるようにしか見えないぞ。

 ……フードのやつはやっぱり動いてないな、ただそこにいるだけって感じだ。


 とにかく此処にいても仕方がないし危ないのでパーチェの案内についていく。


 扉を抜けた先は長い一本道の廊下になっていた、廊下の奥の方に扉があるのでそこが多分目的地だと思う。

 こんなに長い廊下なのに見た感じ扉が一つしかない、何の意味があるんだこの長い廊下……、雰囲気はあるけどそれだけって事はないだろ。





 しばらく歩いているけどまだつかない………どうなってんだ? 廊下の真ん中くらいまで進んでからどれだけ歩いても扉が近くならない、ずっと同じ場所を歩いてる気になる。

 パーチェに聞いてもしばらくしたら到着しますので、としかいわないし……。


 それに聡莉さんの様子が少しおかしい、先ほど会話してから顔色も悪いし…。


「…聡莉さん、大丈夫?」

「……ええ、大丈夫よ 心配しないで別に体調が悪いとかじゃないから」


 そうはいってもなぁ、やっぱり何かつらそうなんだよな、体調が悪い訳じゃないのなら精神的にって事か?

 つらそうにしてる理由は聞かれたくなさそうだから、違う会話してみるか。


「…召喚の儀式については調べられないのはわかったけどさ、巫女については調べられないの?」

「……ん?…うん、ああ、実は最初にパーチェが部屋に駆け込んで

来て、儀式が止まった理由を調べた時に一緒に調べてたのよね……で、結果は巫女の役職についてはわかるけど個人となったらわからなかったわ」

「それは会って見れば変わるの?」

「少なくとも精度はかなり変わるわね、どういえばいいのかしら……検索を掛ける際に検索のワードが少なかったら望んでた情報ってすぐに手に入らないでしょ? それと一緒で知らない状態から調べるとなると凄く手間と時間がかかるのよね……」

「そうなんだ……っと!?」


 話していたらいつの間にか到着してたっぽい、隣を歩いてた聡莉さんを見てたら、扉の前で止まっていたパーチェにぶつかりそうになった。

 扉の前でパーチェが一呼吸した後、慎重にノックしてる。


『…誰だ?』

『申し訳ありません、司祭のパチフェストと申します。召喚の儀式がお止まりになったと聞きつけ、もしかしたら解決の糸口になるかもしれないと加護をお持ちの使徒様と参りました。』

『………入れ』


 お、入室の許可が下りた……パーチェの独断の行動だったからここで入れないってのも可能性として考えてたわ。


『失礼します』


 まずはパーチェが先行して部屋に入る、その後に俺と聡莉さんも続いて入る。

 部屋の中は召喚された人達を待っていた部屋の半分ほどの大きさしかなかった、部屋には机も椅子もなく、あるのは俺達が召喚されたのに似た小さい台座だけ。


 その台座が部屋の中央に置いてあり、その台座の上に正座で座る長い銀髪の女の人と、その人を守る様に四方に立っている護衛の人の計五人が部屋の中にいた。


 そして俺と聡莉さんが部屋に入って扉を閉めたところで床に座っていた人が立ち上がってこちらを向き


「ようこそ、おいでくださいました異界の方々。今回は異世界から私の呼びかけに応じて来てくださってありがとうございます」


 と微笑みながら言った。

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