第4話 言語の加護と神の言葉?


 俺の持ってる加護が微妙な気がする…まぁなかったら詰んでたんだけどさぁ…。

 けど能力とかが与えられるって聞いたら、なんかもっとカッコよくてド派手なの想像するじゃない!?


 翻訳…それとも通訳の加護…?微妙だぁ…。


「ええっと…言語の加護とでもいいましょうか…?」

「あ、そういえば文献とかあるんだったよね?それには加護の事について詳しくは書いてなかったの?どんな加護を持ってた人が来たとか」


「文献と申しましても、歴代の巫女様が神託で伝えられた内容と起こった事の簡単な概要だけを書き綴られている物なので…、少なくても私が目を通した中には、加護の種類などについては書かれてはいませんでした、もしかしたら他の神殿に残っているモノには書かれているのかもしれませんが。」

「そっかぁ…」


 世界の崩壊を救うために神に願って初めて送られてきた人材が俺みたいな微妙なのでいいのか!?コレじゃない感がヤバイんじゃないの?


 いや、めちゃくちゃ必要よ?翻訳ってか通訳ってさ!

 まず最初に話が出来なければ、この世界の問題についても分からない事が今以上にあったしさぁ、……けどなぁ、通訳以上の事が出来ないんじゃないのは問題じゃない?


 ん…?違うか?通訳が出来るんだ。

 これ以上を求めるのは望みすぎじゃないか?

 不思議と体の不調だったのも消えてるし、どんな形でも人の役にたてるのならいいじゃないか!

 充分与えられているのに何を考えてたんだ俺は!


 ……そうだな!考えてみればこれはめっちゃ役に立つ能力じゃないか!人に頼りにされまくれる能力だよコレ!めっちゃチートだ!すげぇわコレ!!


「うん!めっちゃいい加護だなコレ!言語の加護か!いいね!その名前で決定!!」

「ひぅっ!?…え?急にどうしたんですか?」

「いや、気に入っただけだよ、うん、これはいい加護だ!」

「そ…そうですか…」


 あ、いきなり俺がテンション上がったからパーチェが引いてる、ちょっと落ち着こう、深呼吸しよう。


「ごめん、加護がわかったからちょっと浮かれてたわ」

「…まぁ喜ばれてたのならよかったです、最初何か落ち込んでいった様に見えたので」

「最初は、何この加護?微妙…と思ったけどさ、考えたら今後絶対に必要になる能力だと理解できたんだよね」

「そうですね、現状でタカユキさん以外とは会話が成立してないわけですし…このままでは説明もできません」

「じゃ取り敢えず、俺がさっきパーチェに聞いたことをあの二人に伝えてこようか?わからない質問をされたらその都度パーチェか、えっと…」


 そういえばこの体格の良い男の人の名前しらないわ。


「あ、私はビルと申します!」


 と思ったけど見てたら察してくれたみたいだ、気遣いができる系の人なのかな?声はデカイけど…。

 さっき、俺がパーチェと二人組に交互に話しかけてた時にも、話に無理矢理入ってこようとはしてなかったし。


「ビルさんに聞きにこればいいでしょ、通訳するよ」

「ええ、そうですね、タカユキさんにはお手数お掛けしますが、お手伝いいただけたら私達もとても助かります」

「ああ、最初から俺は手伝うつもりだったんだから出来ることはやるよ」

「そういっていただけると本当に助かります、申し訳ありませんが、よろしくお願い致します」

「まぁ、といっても通訳だけしか出来ないんだけどね、説明を通訳するだけだから…そんなお願いされる事もないよ」


 さて、やるか!気合いをいれて二人組のほうを見たけどヤバイ、ちょっと放置して喋りすぎてたか?女の子が不安そうな顔になってる。


 取り敢えずどうなるかはわからないけど、気合い入れて説明しないとな!





 先に椅子に座ってもらってからな…、うん、ずっと立って待っていた。

 序盤から躓いてた、悪い事をした…。

 まぁ気を取り直して、座ってもらってからこの場所、この世界は日本ではなく異世界だって事、加護の事、神様の事やこの世界の現状についてなど、俺が聞いた事だけを取り敢えず説明していった。


 やはり二人は聞くたびに驚いていたし、すぐには帰れないのかとも聞いてきた、いきなり連れてこられてこの世界を救えと言われても納得はできないし帰してくれとも女の子は言っていた。


 一応、帰れないのかと聞かれた時には、パーチェ達に確認してみたが、文献にはこの世界に呼び出された時の願いが叶えられれば帰れるとしか書かれていなかったらしい、過去に送られてきた人がその文献の通りに帰った記述が残っていたそうだから、コレは間違いないと思っておこう。


 聞いた事をそのまま伝えると、結局やらないと帰れないじゃない…と言って、小さく泣き出してしまった。


 その通りだと思うし普通はこのような反応で当然だと思う、拉致されて帰りたかったら世界を救えって言われたらそりゃ無理だって思うさ。


 さて女の子の方はこんな反応だったけど、男の子の方は女の子が泣き出してしまった後に


「…そっか、やっぱりそうなのか、俺ここに来る前にすごい綺麗な女の人に会ったんだ!助けてくれって言われてたんだよ!そっかぁ…アレは夢じゃなかったんだ!すげぇよ姉ちゃん!これマジモンの異世界だってさ!漫画とかゲームみたいな冒険ができるんだぜ!?」


 てな感じで騒ぎだした。


 てか姉ちゃんって事は兄弟だったのかな?

 女の子の方は泣いているので男の子に聞いてみると兄弟だと答えてくれた。


「んでさ、おっちゃんは日本人なんだろ?じゃぁ俺と姉ちゃんと一緒で、送られてきたって事でいいの?」

「おっちゃん!?……まぁいいか、そうなるな、たださっきキミが言ってた綺麗な女の人に会った記憶はないんだよね…、異世界に来る前に死にかけてたからかな?」

「そうなのか、じゃぁおっちゃんはっ…っって、あぁっ!」

「うぉぅ!?…どうした?」


「思い出した!その女の人が他の神様も訪ねて見てっていってたんだ!あの時はいきなり助けてほしい、そのために力をお貸しください、望むべく力を与えますって、一方的に言われててさぁ、何言ってるんだろう、何で俺が喋っても返事返してくれないんだろう、とは思ってたけどそういうことだったのか!」


 んん?何かというか微妙によくわかんなかったぞ…。


「えっと、ちょっと確認するよ?」

「うん」

「君はこの場所で目が覚める前に神様と思われる女の人と会ってる、これは合ってる?」

「ああ、そうだぜおっちゃん!その時にさっき言った感じで女の人が一方的に話していたんだ、こっちが話しかけても全然返事をしてくれねぇの!」

「話してた時間ってどのくらいだった?」

「ええっと、そんなに時間は経ってないと思うんだけど、あっれ?どうだったかな」


「……そのメッセージを伝えられた時間だけだと思います」


 男の子が悩み始めたとおもったら、泣いていた女の子が答えてくれた。


「私も、体験しました、忘れてはいませんでしたけど夢か何かだと思っていたので…、この子が体験した内容と同じです、綺麗な女の人に一方的に伝えられました。

弟が言っていた、『他の神様も訪ねてください』という言葉に付け加えるなら、『説明するための時間がない』とも言っていました」

「そうだった、『最初に時間がないので』みたいな事もいってた!姉ちゃんよく覚えてたな!」

「覚えてたけど夢だと思ってたのよ…」


 そこから弟君が姉の方にテンション高く話しかけて、それにつられるようにして姉の方も話始めたんだが、俺そっちのけで話始めた…。

 まぁ、さっきの不安そうな感じよりかはいいと思うし、しばらく喋っていればある程度落ち着いてくるだろ。

 この二人組は姉弟で話終えるまで放置して、先にこの姉弟から聞いた事をパーチェ達に伝えにいくか。





「ではお二人は姉弟で、こちらの世界に召喚される際にフィーリア様と思われる方にお会いになられてるのですね。」

「おお、うらやましいですな!私もそのお姿をご拝見したいですぞ!」

「それで、そこで出た話なんだけど、フィーリア様だと思われる神様が言うには『他の神様も訪ねてください』って言ってたらしいんだ…他の神様に会う方法ってわかる?

というかどの神様が欠けたのかも現状はわからないんだったよね?あ、欠けた神様がどの神様だったか目安はついてる?」

「いえ、欠けた神がどの神様かは現状わかりません、フィーリア様は当てはまらないので除外するとして…」


「ですな!、それに時間がないと仰っていたのも巫女に神託を届け、それにこの世界の維持のためにも力を使われているはずですから、そのため余裕がなかったのかもしれませぬ!その様な状態なのに我等の事を気にかけて頂けるとは、感謝してもしたりませんぞ!」

「そっか、まだ情報が無さすぎるし取り敢えずは他の召喚されて来る人達にも話を聞いてから、これからの事を判断しようか…、現状でこの状態だと何から手を出せばいいのかわからないし」

「そうですね、あ、一応他国の神々が奉られている場所については情報がございますので、此方で詳しく調べて起きますね」


「しかし今回は何人召喚される事になるのか…、陣が輝いている限りは召喚が継続されるらしいですが、召喚のために神をその身に降ろしている巫女様のお体も心配になってきますぞ!」

「え?召喚のために神を降ろす?どういうことパーチェ?」

「ええと、召喚の儀式は巫女様のお体に神の御霊を降ろされてなされるんです、だから長時間続けていると当然負担は巫女様に溜まっていきます、多分ですが今回の様に長く行われると、代償に最低でも5年は昏睡状態になってしまわれると思われます…酷かったらそのまま…」

「…そこまでなのか」


 やっぱり、異世界から人を呼び寄せるのは生半可な事ではないんだな、俺の元いた世界だったら神は身近な存在ではなかったから、この世界の様な解決方法はできなかった、というか考えもしなかっただろうし…。


「まぁまぁ、とりあえず今は召喚者を待ちましょうぞ!言葉が通じなければこちらに参られるでしょうし、もし何かあっても他の者から連絡が来るでしょう!」

「あ!」

「ん?どうしましたかな?」

「そういえば、言葉が通じるかの確認にビルさんは来てたけど、それを誰かに報告しなくてもいいの?」

「ああ!そういえばそうでしたな!これは報告しておいた方がいい事ですな!すいませんが一度報告に戻ります!パーチェ、すまぬが二人をお頼み申す」

「はぁ…、はい、わかりました、次の召喚者が来る前にいってらっしゃいな」

「すいません!失礼しますぞ!」


 ビルさんは急いで報告に戻っていった。

 他の召喚者か…、どんな人がくるのかな、俺以外にも言葉がわかる人って来るのかな?


 取り敢えず待ってる間に二人組はどのような加護を持っているのか聞いてみるか。

 さっき男の子が神様に『望むべく力を与える』みたいな事を聞かれてたって言ってたし認識してる可能性も高そうだ。



 あ、また名前聞き忘れてるわ、まずは名前から聞かなきゃな。

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