嘘つきな僕達

木々ノ目 つばさ

第1話 同じ目をしていた




 高校の入学式。

 昇降口前に張り出されたクラス表の前に生徒達が集まっていて賑やかだ。


 同じクラスになれて喜んでいたり、離れて悲しんでたり、どうでも良さそうにしてたり。


 自分はどのクラスだろうと少し後ろから顔を覗かせる。少し見づらいが見えそうだ。


 佐々野、佐々野っと、2組か。

 他に知り合いとか居るかな。



「「あっ」」


 あ?と同時に呟いた方を見れば、ショートカットの良く似合う可愛い女の子だった。


 目が合ってお互いに理解したと思う。

 コイツも同類だと。


 会釈してクラスに向かえば少し緊迫感のある独特の空気感がそこにはあって、人見知りの自分には少し入りづらい。


 自分の席に座って教室を眺める。一番後ろの席ラッキーだな。


 周りに人もいないからとSNS眺めながら時間が過ぎるのを待っていると。


「どーもー!俺、財木よろしく!」

「え、あ、佐々野です。 よろしく」

「人見知りしちゃう系の人?俺うるさいって良く言われんだよねー、邪魔なら言って!」


 こっちの返答待たずに話すな、元気なのはいいけど置いてけぼりにすんな。


「邪魔ではない、大丈夫」

「そ?ならよかった」


 チャラそうな奴だけど、悪い奴じゃ無さそう。


「あ、さっきの」

「え?」


 隣に座ってきたのはさっきの女子だった。


「なになに知り合い?ちょー可愛いね!彼氏とかいる?」

「うるさい」


 見事に一刀両断されてしょんぼりしてる財木。本当にうるさいって言われてるのな。


「佐々野、よろしく」

「宮城」


 淡々と名前だけ告げて窓の外を眺める彼女の背中は何処か寂しそうな気がした。


「ちょークールじゃん」

「お前本当に頭いいの?」

「勉強?ぼちぼち出来るくらい?」


 進学校とまでは行かないがそこそこ偏差値の高い学校だから馬鹿ではないんだよな、こいつ。


 そんなこんな財木が喋ってるのを聞いていたら肩を叩かれ振り返る。


「よ!また同じクラスだな」

「梓!」

「高校でもよろしく」

「おー!」


 後でなと手を振って席に戻っていくのを見届けるとジッと視線を感じて隣を見る。


「なに?」

「別に、アレがねーと思って」

「は?」


 よく分からないまま頭に?を浮かべていると。


「ゆーちゃん!」

「おはよう」


 清楚系、というかお嬢様系?

 黒髪ロングが風に揺れてシャンプーの匂いがした。


 宮城も可愛いと思ったけど、この子見ると美人系なんだなぁって思う。


「このクラス結構女子のレベル高いよな」

「あー、確かに」

「どの子タイプ?」

「え、あー、んー、あの子?」

「佐々野は巨乳派か」

「ち、ちげーよ!顔の話だろ!?」


 この手の話は正直苦手だ。

 女子の事は可愛いと思うけど、好きとかそういうのはちょっと分からない。


 ゲイなのかと思ったけど、そういうのを見ても興奮しなかった。


 多分、宮城もそうなんだと思う。

 "アレが"というのは梓のことだろう、多分俺の好きな人。


 そして彼女が宮城の好きな人。



 今日がこれから始まる嘘に塗れた僕達の恋物語の1ページだった。



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嘘つきな僕達 木々ノ目 つばさ @yoku_89

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