・・・

 ニワトリたちの話によると、毎日一羽ずつ食われていたそうだ。この動物園では食用の動物は一匹、一羽、一頭たりともいないはずだ。社訓でそう決められている。それをこの男は小屋を任されたことをいいことにやりたい放題やっていたわけだ。動物園の動物を味見のごとく喰いまくっていた。


「さて、そろそろこのクソ男の審議に入るけど」

 床に散らばった紙の束を容赦なく踏んづけ、出雲大社はひとつのファイルを手に取り、そこに乗っている埃をふっと吹いた。埃が舞い、当たり前のように床に散らばって落ちた。

「このファイルの中にあることはね、当たり前のことじゃないんだよ」

「おまえ、それには触るな! そこには俺の大切なことが書かれているんだ。それは俺だけの、俺だけの物だ!」


 唾を飛ばして喚いている。汚いモノには触りたくないとあからさまに距離を取る出雲大社の態度は、長年虐げられてきた甲乙たけしにとっては敏感に察するところでもあるが、人の気持ちなど知ったことかという考えの出雲大社にはまったく通じない。


「なぜ君が動物を盗んだかってことだけど、君は最初から間違いを犯している」

「間違いなんかない! あるわけがないんだ! そんなところで間違えたりはしない。お前に何がわかる!」

「ポンコツはポンコツだな」首を振る。

「たかが占い師の分際で何が分かるんだ! インチキ占い師が。お前のようなあこぎな商売人こそ、ムカついてくる! 人を馬鹿にしやがって」唾を更に飛ばしている。


「バカとは話をするのも時間の無駄なんだけど、ここではっきり言っておかないとまた同じことをするから、仕方なく教えてあげますよ」


 出雲大社はファイルを甲乙に向けて放り投げた。ファイルは彼の足に当たり、砂埃を上げて床に落ちて中の紙が散乱した。紙には様々な動物の絵が描かれていた。甲乙たけしは喚きながら自由のきく足で紙を擦り集めている。それを薄ら笑いを浮かべながら出雲大社は見下ろしている。

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