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出雲大社は饒舌に言いながらも甲乙を柱にくくりつけていた。それも本人にわからないように、字のごとく、真綿で首を絞めるように。
「おまえらみんな殺してやる!」
「はいはい。君に僕が殺せるはずがない。動物しか殺せないのに。そうでしょう? 今までに何匹殺ってきました? 君の後ろにニワトリが視える。彼らが必死に止めているよ。君が動物を殺すのを必死に止めている。だから、この小屋に近づくと偏頭痛がするんじゃない?」
顔面蒼白。甲乙たけしは震えだした。
「なんでそれを」
「だから、視えるんです。君は間違いを犯したね。それは償わなければならない。その前に、僕はまだ君を許したわけじゃない、法で裁かれる前に僕が君を裁く、この意味、分かるよね? …………甲乙たけし君」
マエストロのごとく滑らかに手を上に振り上げた。その手が下ろされれば甲乙たけしは殺されるだろう。
「出雲さんダメです。殺しちゃダメです!」
こんな奴でも殺してはいけない。いくら生きる価値のない人間だったとしてもこんなやつのために手を汚す必用ない!
「何を勘違いしているんだい朝倉君。君じゃあるまいし僕のこの綺麗な手を自分で汚すようなことなどしないよ。こんな汚物以下、相手にするわけがないだろう。今のところ落ち着かしてはいるけれど、僕の腹の中は煮えたぎっているってことは敢えて伝えておこう」
出雲大社はもごもごと口を動かして親指と人差し指、中指を数度擦り合わせた。扉の鍵を開けるときの金属の音がいくつかすると、ロバの入っていたケージの鍵が開き、よろめきながらもロバが走り出た。上に置かれているケージの鍵も開き、中からニワトリが羽を伸ばしながら羽ばたき降りてきた。
「大丈夫ですよ、あなたがたはもう食われませんからね。ああ、なんと可哀想なこと。いいえ、それには及びません。はい? はあ、それは事務所に行ったほうが宜しいかと。外にはライオンなんかもいますでしょ。間違ってそこに入って行ったらエサと間違われてパクっと……」
出雲大社は事もあろうかニワトリと話をしていた。
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