体を揺さぶられていることに気づいたのはどのくらいの時間が経ってからだろうか。体がひんやりとしている。


 『起きてください』と声が聞こえた。手足の感覚を確かめれば、両手は後ろに、脚は揃えてきつく結ばれている感覚がある。この場合どうするか。それは……

 目をうっすら開き、自分の前を確認する。意外と広い。左右にケージが積み重なって置かれているけれど、前のほうにスペースはある。そして、この部屋は獣の臭いがした。ケージの中には薄汚れた羽のようなものがこびりついていた。危ない。ここにいてはダメだ。鼓動が早くなった。


 両目をしっかり開けたと同時に横たわっている体を前方へ力一杯投げ出し、二、三度転がった。後ろを向いた短い時間に誰がいるのかを瞬時に確認した。そこにはまさかの人がいた。

 しっかりと距離をとり、湖は今、お姉さん座りをしてその人物と対面している。なぜこの人がここにいるのか。


「……甲乙さん。なんで、どうして?」

 目の前には額から血を流し、同じように腕を後ろで縛られた甲乙が脚を投げ出す形で壁に背を預けて顔には苦痛の色を浮かべて座っていた。

「すみません朝倉さん。こんなことになってしまって」

「あなたが向井さんや櫻井さん、それに私たちの飲み物に睡眠薬を混ぜたんでしょ? さっき言ってたじゃないですか! あなただったんでしょ? それなのになんでこんなことに」

 湖のアイスコーヒーに薬を入れたのは甲乙だ。あの冷たい目は覚えている。それなのに彼は今、顔に怪我をして、湖と同じように縛られていた。

湖にはこの状況がよく飲み込めなかった。


「それは彼らのお芝居です。最初からそういう段取りになっていたんです。あなたが白子さんを探しに行ったあとに入ってきたあの二人、櫻井さんと向井君に私は殴られたんです。私はいつもあの二人に脅されていたんです。あなた方二人が来たら研究の邪魔になるって。だから、あなた方を眠らせて殺してしまおうと企んでいたんです」

「それならなぜ甲乙さんまでこんなことになってるんですか」

「きっとわたしに罪をなすりつける気なんでしょう」

甲乙は悲しそうに下を向いた。そして、

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