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「お疲れでしょう。さ、どうぞ」

 アイスコーヒーをテーブルに置いてくれて、「お砂糖とミルクはご自由に」と、テーブルの真ん中に置いてある砂糖とミルクを指差した。そこには象の絵の描かれた陶器の入れ物の中に、たくさんの砂糖とミルクが入れてあった。


 視線を甲乙さんに戻すと、パソコンを打ちながらアイスコーヒーを一口飲んでいた。

 お砂糖とミルクをひとつずつ取ってアイスコーヒーの中に入れてかき混ぜる。


「それじゃ、いただきます」

 そのアイスコーヒーに口をつけた。

 十分もすると瞼が重くなってきた。コーヒーを飲んだのにおかしい。うとうとして力が入らなくなってきた。


「すみません、甲乙さん。私、なんだか眠くなってきてしまって。疲れてるのかなあ」

「……今日は長旅でしたからね。ご苦労様でした。遅くなりましたが、ああ、よかった」

「遅いって、何がですか」

「あなたがさっさと麦茶に口をつけていれば、全てが早くいったものを。予定がそこで狂いました。なのでコーヒーには多めに入れてあるんですよ。くく」

「ちょ……どういうこ……と、ですか」

「意識を保つのきついでしょう? 彼女もそうでした。彼女の場合は牛乳に混ぜましたが」

 頭がぼーっとしてきて声が響いて聞こえるので耳に指をつっこんで頭を振ってみた。

「かなりきつめの睡眠薬なのでね、今は我慢できてもすぐに眠りの世界に入りますよ」

 氷のように冷たい目で見下ろしていて、汚い笑いかたをした。今までとはまるで別人だ。杖をついて体を支えながら、私に手を伸ばしてきた。

「それじゃあ、行きましょうか」

 腕を掴まれる瞬間までなんとか瞼を押し上げていたけれど、左右に大きく振られて首ががくんと揺れた直後、湖の意識は真上に吸い上げられるように上っていった。

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