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入り口は開け放たれていた。嫌な予感がしたけれど、立ち止まっている場合ではない。
「誰かいまっ……」
「え? そんなに焦ってどうしたんですか?」
相変わらずパソコンを叩いている甲乙がびっくりしてこちらに顔を向けた。
「白子さん、まだ戻ってないですか?」
「ええ、まだ戻ってないですよ」
「そうですか。ほんと、どこ行っちゃったんだろ」
「お手洗いにいなかったんですか?」
「はい。どこにも」
「もしかしたら、園内を調べているとかではないですか?」
「こんな夜中にしかも一人でですか?」
それはないと思うと言おうとしたところで、
「そういえば先程、夜の園内も調べておかないとって仰ってましたよ」
「私たちが見回ってるのに、そんなことを?」
「はい。犯人は油断しているかもしれないから、あとでそっと園内を回ってみようとも仰ってましたよ」
……それはないと思った。ここの従業員を一人にして出掛けるなんてこと、絶対にない。
だとしたら、甲乙は嘘をついているということになる。
「あのう、甲乙さん。向井さんと櫻井さんはどちらに行かれたんでしょうか」
「二人は仮眠すると言って寮に戻ると出ていきました」
「寮に戻るなんてそんなことできるんですか? 夜勤ですよね?」
寮に戻ることなんて、そんなことありえるのか。仮眠室があるとしたらここに併設されているか、それともそこのソファーかで休むかになるのがふつうだ。
「園長には内緒にしてくださいね。たまーにやるんですよ。深夜一時を過ぎたら特にやることもなくなるので。園内見回りが終わるとそろそろ二時も過ぎるんです。早朝当番も起き始める時間なので、早めに上がることもあるんです」
そうは言っても、外部の私たちが来ているっていうのにそんなことをするだろうか。向井さんも櫻井さんもそんなことしなさそうだけど。と湖は一人疑ってかかる。
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