「この際だから言わせてもらうと、占い師なんてそんな怪しい人、俺は信じちゃいない。動物の窃盗なんだからこんなもんさっさと警察に言えば丸く収まるんだよ。これをこんなインチキくさい人たちに来てもらってさ、わけわからねえっていうか、園長の気が知れねえ」

「やめないか、それは園長に牙をむくことになるんだぞ」

 櫻井が向井の腕を強めに叩いた。


「だから、その刑事が出てきてくれりゃああたしたちがわざわざこんなど田舎まで足を運ぶ理由なんてなかったのよ。むしろ文句を言いたいのはこっちだわ。刑事じゃ解決できないと踏んだからあたしたちに頼ったんでしょう。こっちからお願いしたわけじゃないのよ。そんなことも分からないの? この不細工。悪いのは頭と顔だけにしてよね。その頭の中には脳味噌入ってないのかしら?」


 白子は笑顔で毒を吐く。手は腰、足は肩幅に開き、胸を張り、堂々としている。かつて今までに言われたことのない言葉を真っ正面から突き刺され、向井は口をぽかんと開けたまま白子を凝視し、白子はそんな向井をスナイパーさながらの睨みで圧倒する。


「白子さん、ちょっと落ち着いて」

 今度は湖がなだめる番だ。

「あたしは落ち着いてるわよ。いつでもね」

 鼻で笑い返した。

「…………」

 ゆっくりと視線を外し、床の方に目を落とした向井は、それ以上何も言うことはなかった。


「そろそろ見回りの時間じゃないの? 早く行ってよ。なんであたしが言わなきゃなんないのよ」

 白子の一言に皆はっとし時計をみたらもう一時になろうとしているところであった。

「とりあえず私は外回りに一緒に着いて行きますので」

「……分かりました」しぶしぶ了承する向井の目はまだ納得はしていなかった。

「よろしくお願いします。怖いことは何もないんで。動物みんな寝てますから」

 櫻井が湖の不安を取り除いてくれた。

「それ聞いて安心しました」

 万が一熊やライオンが園内をふらついていたらどうしようという些細な不安はあっという間に消え去った。

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