「来客中でしたか。それではまた後で来ます」

「いえ、すぐに出ますのでお気になさらず入ってください。私どものほうが気を使わなくてはならないところ、すみません」

 事務所を出て行こうと後ろを振り返った小柄な男の人に慌てて声をかけた。


「そうですか、それでは私はここに」

 甲乙と名乗った小柄な男は足をひきずるようにこちらへ歩いてきた。

 湖も白子も失礼にならない程度に甲乙のことを見、話を向井に振った。


「甲乙はなかよし広場に設けているニワトリ、それとひよこ、モルモットゾーン担当で、こどもからえっらい好かれてる奴ですわ。な。で、今、ここに入ったり出たりした人間が交代で夜勤っちゅーわけです。夜勤っても二人一組で園内の見回りですけどね。夜行性の動物以外みーんなしんと寝てますからまあ平和です」


 猿担当の向井、熊担当の櫻井、ニワトリ、モルモット担当の甲乙、オールマイティーな佐藤。この四人が夜勤で入っていることが分かった。


 佐藤は今日明日は近隣の動物園、水族館、植物園などが集まる大きなミーティングに行かなければならないとかで早々に席を後にしたのだった。それと共に湖と白子も今日のところは一旦仕事場へ帰ることになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る