湖たちと向井がリストのことを話しているところへ休憩で戻ってきたのは櫻井というてっぷりとした体躯の男。担当は北極熊含む熊ゾーンだった。やはり大きめの動物には大きめの人があてがわれるのかと思いきや、北海道の大学で熊のことについて研究を重ねてきている人物であった。


「いやはや私は熊のことしか知らないもんでね、他の動物のことはうといんですわ。もちろんかわいいと思いますよ。けどもそこまでですわ。熊のことだったら深くしゃべれますけどね、それこそ明後日の朝までいけますわ。研究論文も書いていましてね、絶滅していく熊の手助けになるものはないかとまあ、研究研究の日々です」

 むさくるしい頭をぼりっとかきながら人のよさそうな笑みを浮かべた。

 向井の休憩と入れ替わりで入ってきたのは浅黒くて長身でイケメンな堀の深い男。名前を佐藤と言った。


「結婚してる?」

 お目目キラキラ光線で机から前に乗り出して放った白子の第一声目に、佐藤も向井も櫻井も目を皿のようにしていた。

「はは、まいりましたね。こんな美人さんにそれを言われたら、『してませんよ』って即答して食事のひとつでも誘いたいところですが、残念ながらできません。結婚してます」

 言われ慣れてるんだろうなあ、うまい。と思った。


「僕の担当はキリンとシマウマです。僕の場合、みんなと違ってなんや資格なんざなんも持ってないんですが、こどもの頃から動物園が好きで、将来の夢は動物園の飼育員さんになることだったんです。だから高卒でアルバイトで雇ってもらって一通りの動物のことを教えてもらったんです。で、今はキリンとシマウマ。半年前はライオンのとこにいました。僕はぐるっと一通りの動物のブースを回るのが仕事です」

 園長に頼りにされている佐藤は三ヶ月から半年のスパンでいろいろな動物のブースに入り、そこで動物たちの状態確認をするのがその仕事だ。あとでこっそり教えてくれたのは、『そこのゾーンで働く人たちの観察も入ってるんです』ということだ。


 超内内での事をも教えてくれたのは、釘をさす意味もある。自分が何をしているのかなど余計な事は他の人間に聞かないでほしいということだ。


 最後に入ってきたのは、小柄な男の人。身長は百六十あるかないかってところか。支給されているつなぎがダブダブで腕も足もまくっていた。

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