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温めのミルクを仕事場の円卓に置き、白子は両手で持ちながら目を細めて舐めている。
あの後、夜勤のリストを向井が出してくれ、詳しい勤務時間に休憩時間、担当動物をも聞いてもいないのに書いてくれた。塩対応だったり神対応だったりと、複雑な人だと思ったが、これも彼なりの動物愛なのだろう。
「この四人の中にいるのは確かなのよね。でも、それぞれに動機がないことが問題なのよ」
「確かにこの中にいるのかもしれないですけど、外部からの侵入者ってことも考えられませんか? 動物園のまわり、草木すごいですし」
「それはないわね」
ミルクの入ったマグカップを置いてしつこいくらいに唇をべろんべろんと舐め回している。
「だってこの動物園、いかに回りに草木があろうとも寮と犬で囲ってるのよ。しかもお金持ち動物園みたいだからこの一帯回り近所、みーんな園長のものみたいなものでしょう、敷地内に寮だってあるんだから外部からの侵入は考えにくいわ」
「なるほど、そう言われると確かにそうですね。そうなるとやはり内部……」
湖はこの内部者の中からどうやって犯人を炙り出すのか教えてほしいと、奥の部屋、出雲大社の部屋であろう方を何気なしに見た。
しかしやはり気配がない。このお告げカフェの中にいる気配はない。もちろん開かずの間の中を確かめたわけじゃないけれど、そんな気がしてならなかった。
「湖ちゃん、たいちゃんのこと大好きなんだね」
困った顔に唇を尖らせて目を真ん丸くしている白子に、
「そんなんじゃないです!」と語尾強めに言い捨てたけど、「隠さなくてもいいじゃない。私たちもう仲間でしょ。家族じゃなあい」と猫なで声を出す。
「あなたがここへ来たときから気付いてた」
「そういえば、ノリコやコテツは?」
白子の強烈なインパクトによって仔猫のノリコと母猫、ふとっちょコテツの存在を忘れていた。どこにも見当たらない。話を変えるチャンスでもあったので丁度よかったが、いつもうろちょろしている猫たちの気配がない。
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