・・・
「朝倉君、どう思う?」
と水を向けられた湖は、話したいことは全部話終わったんだ。そして、なんとなく話が終わらない状況を察知して、めんどくさいことは私に丸っと寄越したってわけか。と理解した。
「……いや、私も霊はいないと思います。てか、そう願いたいですね。怖いし、見たくないし。百歩譲って居たとしてもですね、ぜひとも私の前には出てきてほしくないものです」
「えっ、そうなの? うそ、ほんとに? へー、知らなかった」
目を真ん丸くしてびっくりするほどのことでもないと思うが、出雲大社はほとほと驚いた顔をしていた。咳を一つ打ち、
「幽霊の正体見たり枯れ尾花ってところかな、君たち二人の言うところは。それで話を続けると、君が最後に彼氏と話したのは電話越しだった。しかもすごいノイズだったんだよね。それ以来会ってない。今も連絡つかないんだよね?」
「はい、ぜんぜんまったく連絡がつきません」
「それなら、ちょっと君の電話貸してくれるかな」
「いいですけど」
高宮がかばんの中に手を入れて電話を出そうとしているのを横目に出雲大社はモカを一口口に入れ、
「うん、おいしいね」
と独り言を言った。
褒められたらそれはそれは嬉しいけれども、結局スティックコーヒーだし。サンドイッチを褒められたい気持ちが強い自分に驚いた。
「すみませんあの、電話、忘れてきてしまったみたいで」
「そうなんだ。じゃ、取りに行こう」
「今からですか」
高宮は行きたくないように見えた。顔が嫌そうに歪んでいた。
「君の問題を解決しよう。じゃないと今のままじゃ無理。見つけられない。見つけたとしても入れない」
よくわからないことを言っているが、きっと彼の中では答えは出ている。最後まで分かっている。もしかしたらこの性格の悪さで私たちを混乱させて楽しんでいるのかもしれない。
でもぜんぜん私には何がなんだかわからない。と湖は眉間に皺をこしらえて唸った。
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