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濡れた土の感覚が靴ごしに感じる。ぱきっと小枝が折れる音が不気味な音に聞こえてしまう。
「くそう。余計な感情を植え付けやがって」
暴言だって聞こえてなきゃ同じだろう。言いたい放題言ってやる。女の私に森の中へ入れと命じ、自分はきれいな舗装された道の上を歩いているわけだ。暴言のひとつも言わなきゃ進んでいけん。それにもんくを言ってりゃ怖さも半減する。
『けっこう中の方を探してみて。入り口なんて誰だって探せるんだから』
そんなことを言っていたが、そんなところを探したければ捜索犬でも用意しろと愚痴る。
こんなところに高宮さんの彼氏が埋まっているなんて考えたくない。いや、無惨に放置されているなんて、可哀想で不憫でならないではないか。
まだほんの高校生だ。幸先ある未来が既になくなってしまっているなんて、こんな切ないことはない。いつのまにか知らぬ討ちに湖の思考回路は『生存確率百パーセントゼロ』の方向に傾いていた。
かれこれどのくらい森の中を捜し回っただろう、夢中になって探していた結果、奥深くまで入ってきてしまっていた。
気づいて後ろを向いた時には時既に遅し。木々で道は塞がれ、どこをどうやって入ってきたのか分からなくなっていた。
帰れない。と思うと全身に冷たい汗が這う。
キキキキキと何か変な動物が鳴いている。首の後ろに鳥肌、頭のてっぺんまで寒気が走った。
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