出雲大社曰く、時間が経てば経つほど悪い結果に繋がることになるそうだ。できるだけ早く見つけ出さなければならないと付け加え、

「君は左の方を見てくれる」

 と、左側の森の中を指差した。

 森は深々と繁りに繁りまくり、深緑色の葉がわさわさと音を立てていて、最大限に努力しても、入りたくなかった。


「僕はこっちを」

 そこは森の中ではなく、道の脇に重なるように置かれている何かの機材や棄てられたゴミのようなもののところへ歩いていくところであった。

「ちょっと待ってください」

「君と意見交換をしている暇はない。それに君の意見なんざ屁の役にもたたない」

「そうじゃなくて、なんで私が森の中なんですか」

 普通、女の子にこんな森の中へ入れなんて言えないと思う。


「君はほら、田舎育ちだから体力、腕力、脚力に視力、聴力には自信があるだろう? 丁度いいじゃないか」

「まったく丁度よくないです。山ヒルだっているかもしれないし、もしかしたら熊だっているかもしれないじゃないですか」

「まあ、仕方ないよね。そうだ、これは豆知識なんだけどね、熊が出たら静かに後ろ向きでゆっくりと後ずさって逃げるといいよ。と、テレビでやっていた。それに君の報酬だって弾む予定だよ」

「ためにならないアドバイス、ありがとうございます」

「どういたしまして。じゃ、さっさと行って」

 報酬のことを出されちゃ嫌とは言えない。湖にとって今一番欲しいものは転職するための蓄えなのだ。

 とはいえ、嫌みのひとつも言わなきゃやってられなかったがどうやら湖が森の中へ行くのは、出雲大社の中では既に決まっていた。

 鼻歌まじりに歩く出雲大社の背中をじっと睨み、姿が遠退いてから、湖は森に目を向けた。


 この中には見つけてはならないものが一体、いや、二体、三体、よ……とにかく、いくつか埋まっていそうな気がしてならないが、こんな広い森の中だ。森の熊さんにはそうそう出くわすはずもないだろうと考え直し、森の中へ入れるような獣道がないか探してみた。

 何を探すのかはだいたいの検討はついているが、新人の私には少々酷な話ではないか。しかもそれが生きていないものだと考えると、湖は引き返したくなった。

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