・・
「エスカレートして行くところまで行っちゃったんだ」
「はい。そうなんです。もっと早く私が嫌だと言えばよかったのかもしれないんですけど」
「そこは関係ないよね。そういうことをする奴は遅かれ早かれやるんだよ。そんなクソ男、さっさと捨てたほうがいい」
出雲大社が花井の彼氏をばっさりと切り捨てた。
流石に湖はそれは許せなかった。どんな形であれ言ってみたら人の彼氏なのだ。台所から体を乗り出し、
「出雲さん、人の彼氏になんてことを言うんですか」
あまりにも酷いですよ。とこぼす。
「黙れ」
「だ、黙れってそんな。それに、いいか悪いかなんてそんなの本人同士にしか分からないことなんですよ」
「クソを擁護するわけか。だとしたら君もクソ仲間だな。連盟でおクソ同盟でも作りたまえ」
「言い方ってもんがあるでしょうに!」
この人のこの言い方はなんなんだ。人に対することばってものがぜんぜんなってないと湖は心から憤慨し、なんとかこの流れを止めたいと、花井の様子を片隅に感じながら出雲大社に向き合う。
「ヒト以下だね」
「ヒト以下って」
「だってそうだろ。人を傷つける権利は何人も持っていない」
よくもまあそこまで言って退けられるものだと、口をあんぐりと開けて目をぱちぱちさせる。今まさに私を傷つけてるじゃないか。
「確かにそうかもしれないですね。対等に話すような人じゃないのかも」
意外にも、花井がぽつんとことばを漏らす。
「ほらね、気づいたでしょう。それでいいんですよ。じゃ、朝倉さん用意して」
「用意って、何を」
「でかけますから、裏口鍵しめてきてください」
「出かけるってどこにですか」
「うそ。今のやり取りで分からない?」
「全くもって分かるような内容じゃなかったと思いますけど」
「予知ってよ。僕だって最後まで言うの面倒くさいんだよ」
「そんなことできるの、先生くらいですよ。お願いですから予知ることを期待しないで最初から話していただけるとすごーく助かります」
何がどうなっているのかもう湖にはわからなかった。展開が早すぎるし、きっとこの後がどうなるのかは、出雲大社しか理解できていない。
分かっていないのは湖と花井のみだ。
ひとまず言われた通りに鍵をかけ、出雲大社に指示された通り、キッチンの棚の中から黄色の財布を取り出し中身を確認すると、いくらかのお金が入っていた。それをバッグに入れる。
「じゃ、行きましょうか」
何の説明もなく自ら先頭に立つ。
湖と花井は顔を見合わせ、首を振り、ただ着いて行くしかなかった。
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