第122話 10月31日 募る不安

 翌日も志保は学校に来なかった。担任の黒崎も家に電話しているがどの時間帯にかけても出ない。

 クラスでももし事情を知っている人がいたら報告してほしい、とホームルームで皆に向けて伝えた。

 どこに消えたのか、もしかしてもう本当に灰にされてしまったのではないか、そんな不安と恐怖が直哉と真一の心に入り混じる。


 そしてもう1つ。塩野と小林の復学だ。

 石田は報復を恐れて必ず泊や川口たちと一緒にいるようになった。小島もまたいじめられやしないか、とびくびくしていた。

 復学初日から問題を起こすようなことはなく、至って大人しくしていた。ただ昔の仲間のほとんどは彼らに近づいていき、なぜか讃えた。1年の井口もわざわざ2年生の階まで上がってきた程だ。

 休み時間になると大野たちも集まり、何か話している。周りの不安げな目など全く気にする素振りはない。


 それを見て泊が意味が解らない、と漏らすと石田も同調した。

 石田も1人でいるといつ呼ばれるともわからないので、誰でもいいから一緒にいた。この頃になると川口たち女子経由でだいぶ他の生徒とも親密さが増し、地味な集団と見られていた文化祭の「お面屋チーム」の面子とも、自分で意外に思うほど仲良くなっていた。なのでみんな石田に対しては優しかった。


 真一も直哉も、再び帰りに志保の家の様子を見に行く。昨日と変わらず誰もいないし、郵便受けの郵便物も新聞が数束入り口に刺さったまま。取り出された形跡がない。

「本当にこのままいなくなっちゃうのかな……」

「このままで終わるわけないと思う、俺らを絶対狙ってるはずだ」

 怖くないと言えば嘘になる。たとえ帰り道でも、後ろから誰か来る気配があれば執拗に振り返ったし、風の子園の周りに変な奴がいないか窓から見たり、警戒心は高まっていた。


 だが、それは突然やってきた。

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