スキゾフレニア異能バトル
@hsuzuki1982
第1話
ふわり、とスカートがめくれ上がった。その下に見えたのは、純白のパンティー。
初めて直視する女の子のパンツに、俺は言葉を失った。
なぜこんなことになったのか……話は、三日前にさかのぼる。
「君は統合失調症だ」
医者の冷徹な声が響いた。
違う。あんたに俺の何がわかる?俺は病気なんかじゃない……。
「薬を飲めば症状はおさまる」
違う、キチガイはあんたの方だ……。
「だが、私はそれをおすすめしない」
え?
なんだ、この医者は?
今までの医者とは雰囲気が違う。これまでの医者は、どいつもこいつも投薬治療が必要だと自分の意見を押し付けてきた。
そのたびに。俺が医者をぶん殴り、親父の取り計らいでどうにか刑事事件は免れてきたが……。
「君は、いや、君たちは、新人類『スキゾフレニア』だ」
スキゾフレニア。医者はそう言った。聞いたこともない言葉だ。
それは、何なんだ?
「君は、自分に不思議な力があると思ったことはないかね?」
「……不思議な、力ですか?」ようやく俺は自分から言葉を発した。この診察室に入ってから、30分経過しての第一声だった。
「そうだ。たとえば、他人に見えないものが見えたりしないかね? 霊とか、人のオーラだとか、あるいは……怪物とかが」
核心を突かれ、度肝を抜かれた。なぜそれを知ってる?
「……見えたとしたらどうなんですか? 俺を精神病院に収監するつもりですか? それとも、政府に売り飛ばして解剖や人体実験の道具にする?」
恐怖に震えた。この「人外視」の能力に気づかれたら、強制入院どころじゃ済まなくなる。罪もない宇宙人を捕えては非道な実験を繰り返し、高度なテクノロジーや超能力の秘密を手に入れようとしている政府は、俺をミンチになるまで解剖するに決まっているからだ。
「安心したまえ、私は君を誰かに売る気なんてさらさらない。さっきも言ったが、私は君の、君たちの能力を殺してしまうのには賛成できない」
……ふと、違和感を覚えた。さっきから、この医者は、俺のことを「君たち」と言っている。この部屋には霊もいない。俺とこの医者だけのはずなのに、なぜ……。
「さっきの反応だと、霊やオーラを見る能力はすでに持っているようだね。では、手から光を……そうだな、光の剣なんかを出すことはできるかい?」
光の剣?
何を言ってるんだこの医者は? オカルトマニアか、それとも本物のキチガイか?
「……どうやら、そこまでの力はまだないようだね。
いいかい、君たちは、常人のおよびもつかない力を持っている。君がすでに持っている超常現象を視る能力や、いま私が言ったオーラを武器にする能力、そしてそのほかのたくさんの能力もだ。」
「人外視以外にも、俺には特別な能力があるってのか?」
「人外視と呼んでいるのか。なかなかいいネーミングだね。君たちの異能を視る能力につける適切な名前が思いつかなかったが、これから私もそう呼ぶことにしよう」
人外視なんていうのは、つけた俺でも平凡だと思うようなありきたりな名前だ。そんなものでここまで感心するこの医者は、医者のくせに国語ができなかったんだなと思った。
ひょっとして、アホかもしれない。そう思うと、この先もこの医者にかかることになった場合、医療ミスでもされないかと少し怖くなってきた。
「さあ、今日はこれくらいにしよう。いきなりすべてを説明してもすぐにはわからないだろうからね。続きは来週の診察の時間にしよう。ご両親には、週一回の継続した診察が必要ですと言っておくから」
病院を出た俺は、帰り道をとぼとぼ歩いていた。
時刻は午後四時。学校を早退させられ、病院に連れて行かれてから二時間が経過していた。
俺は医者に渡された名刺を眺めていた。
「医師 多々良 源三」。見たところ四十そこそこの医者だったが、それにしては古臭い名前だった。
おかしな医者だったが、俺の持つ「人外視」の能力を知っていたのが気がかりだった。確かに、今までの聞く耳を持たないバカ医者どもとはいささか雰囲気が違う。
しかし、だからといって敵でないとは限らない。言葉巧みに俺の警戒心を解き、政府の研究機関に売り飛ばす気かも……そんなことを考えながら歩いていると、知った顔に出くわした。
スキゾフレニア異能バトル @hsuzuki1982
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