第110話 襲撃
夏の終わりとは言え京の都は盆地になっていて暑い。その蒸れた空気の中を
「何だ?どうしたロワ、もう疲れたか?」
「きゅぅ~ん。」
「そうか、じゃあ歩くか。」
「きゃー、助けて下さいましぃ。」
「お?絹を引き裂く、異世界定番の女性の悲鳴が!ここはカッコよく助けて運命の出会いか?行くぞ、ロワ。」
「う〰〰、わん、わん。」
「な、何だ、その吠え方は?まぁ良い、行くぞ!」
ピロリロリン
『レベルアップしました。レベル2になりました。簡単な生活魔法が使えるようになりました。』
「なんだ?誰だ?どこに居る?」
『星人さんの頭の中に直接話しかけています。神にあなたを助けるように言われています。』
「お前は誰だ?」
『私は千奈。ただのヘルパーです。』
「へるぱぁ?」
『さぁ、助けに行くんでしょ。私はあなたの周りを飛んでいるハエ・・・あなたを見ています。』
「ま、まぁいい、その話は後だ。走るぞ、ロワ。」
「わぅ〰ん?」
声の方へ近づくと馬車、ではなく
侍は10人。
だが、襲っている山賊と思われる小汚い集団は倍の20人以上いる。
『襲われているのは貴族の馬車のようです。人数が倍違いますが逃げたほうが良いかと思われますが。』
「そうだな。助ける!」
「だいじょうぶですか?助太刀いたす。」
星人は時代劇風に行ってみた。
とは言うものの山賊と対峙してみると相手は日本刀。こちらは素手。到底勝てるとは思えない。
リーチが違う、当たれば死ぬかもしれない。
何より初めて見る日本刀の鈍い輝きが死を連想させる。初めて対峙する日本刀を持って本気で殺しに来る敵に恐怖しか感じない。
「あー、忘れてた。神にアメリカからアサルトライフルを買ってきてとお願いするのを忘れてたぁー!!!!」
星人は叫んでいた。
こんな大事なことを忘れるなんて。しかも、日本刀を構える敵と対峙して初めて思い出すなんて。って言うか日本刀に素手で挑むなんて!馬鹿だぁ!
星人は隣で日本刀を構える侍に聞いてみた。
「あの~、日本刀余ってませんか?」
「脇差なら有るぞ、ほら使え。」
「ありがとう、これでも無いよりマシだな。」
山賊が襲い始めた。血なまぐさい匂いが漂い始めた既に盗賊は三人倒れ、血を流している。一人は腕が切り落とされ呻いている。
こちら側の侍も一人切られ戦線を離脱した。
刀と刀がぶつかる甲高い音が響き渡る。
切られて吹き出す血が辺りに飛び散り、生臭い血の匂いが濃くなる。
切り離される四肢。
はみ出る内臓。
流れ出す血。
飛び出す目玉。
噴水のように首から噴出する血液。
そこに本当の戦いがあった。
今までやってきたのはガキの喧嘩だったことを悟る。
恐怖で足がすくむ。
攻撃しなければ。
ガードしなければ。
ただ、その思いだけが頭の中を駆け巡り、脳の指令が四肢にまで届かない。
手足は他人の身体のように自分の意志に反しその動きを止め、星人はただ呆然と立ち尽くしていた。
「おい、どうした?大丈夫か。助けに来たんじゃなかったのか?ぼーっとしてると殺されるぞ。」
脇差を貸してくれた侍が心配して肩を叩いた。
すると、叩かれたことで体が動き始めた。
山賊が星人を殺そうと日本刀を上段から打ち下ろしてきた。星人は間一髪その攻撃を避け、避けた体勢で相手の足を蹴りで薙ぎ払った。
その為山賊は転んだ。
星人は足で相手の刀を抑えて相手の顔面にパンチを打ち込んだ。
結果、顔面は陥没し山賊は意識を失った。
ピロリロリン
『レベルが上がりました。レベル2に到達しました。少々生活魔法が上手になりました。力が少し申し訳程度上がりました。』
「今はいい。後で教えてくれ。」
その声に驚いた所為で山賊の刀が左手をかすめた。
「痛ぁぁァ〰ぃ‼畜生ぉー!」
星人は倒した山賊の刀を拾い山賊を刀で攻撃した。普通に刀で防御された。
当然日本等など初めてで剣道さえ体育でしかやったことがない星人は普通に弱かった。
それに気づいたのかニヤリと笑った山賊が星との首を落とそうと横から薙ぎ払うように攻撃してきた。
「ひっ!」
星人は、あまりの怖さに腰が抜けたように後ろに転んで手をついた。
「終わりだ、小僧ぉ!」
「ひぃ〰!」
恐怖で叫びながら相手の攻撃を避けるために手を前に出した。
すると手から火が出た。
相手はその火で死にも火傷もしなかったが、突然僻目の前に現れたことに驚いた。
「しめた、今だ。」
星人は驚いてたじろいだ山賊の喉を刀で突いた。
山賊は絶命した。
ピロリロリン。
「今のではレベルは上がりませんでした。」
「だったら、そのアナウンス必要ないからぁ!」
星人は必要のない邪魔な案内に苛ついた。が星人は小さい頃から空手で鍛えた集中力で苛つきを忘れ山賊に対処することにした。
先程、脇差を貸してくれた侍が今まさに殺それようとしていた。侍は地面に倒されていた。
星人は走り、今まさに刀を振り下ろそうとしている山賊の頭らしい男の手前でジャンプし胴回し蹴りを首に放った。
山賊のお頭は動かなくなった。絶命したようだ。
「おー。」
一斉に歓声が上がった。
頭を倒されたことで残った山賊は逃げていった。
侍も二人死亡し、5人は傷を追っている。内二人は重症だ。
「あの~千奈さん、聞こえる?」
『はい、聞こえます。』
「さっきからレベルが上った、魔法が使えるとか行ってましたけど、俺って治癒魔法使えますか?」
『いえ、使えません。今でしたら、全力で患部を暖かくするくらいだと思われます。』
「異世界に来ると皆魔法が使えるようになるんですか。」
『いえ、使えない人もいます。』
「千奈さんはハエですけど、魔法は使えますか?」
『いえ、私はハエではないですが使えません。』
星人は千奈をハエと勘違いしていた。
「いや、先ほどはかたじけない。助かった。私は、
「京の都へ行こうと思って。誰か武将に仕えられたら使えたいと考えているんです。」
「そうか。京には各地から大名が将軍に会いに来るぞ。もし誰かいれば拙者が紹介してしんぜよう。拙者の主人が武将なら良かったのだが、貴族だからな。だが、侮るなよ。
「お、陰陽師ですか?」
「そうだ。知ってるのか、陰陽師。」
「私の国では有名でした。」
「そうか。ところで、今日泊まるところはあるのか?ないなら家に来ると良い。歓迎するぞ、命の恩人だからな。」
「はい、ありがとうございます。ではお言葉に甘えまして。お邪魔させてください。」
「あの~・・・」
十二単のような重ねた着物を着た可憐な美少女が立っていた。
「はい?」
「こちらは、
「助けて頂いて有難う御座いました。細川まで殺されてしまえば、逆にこちらが総崩れで全員殺され私も囚われるところでした。良ければお礼させて頂きたいので当家までお越し願えないでしょうか。」
「はい。喜んで。」
星人は数秒前に細川家にお邪魔するという約束をしたことをすっかり忘れたことにして、
「そうだな。今日は
「ほ、本当ですか?では明日お伺いします。」
ちょっとムッとする貴子様がいた。
そういう目で見れば細川さんはいい男で娘の顔も綺麗そうだ。明日が楽しみだ。まぁ、今日も楽しみだが貴族のお嬢様だからな、敷居が高い。そもそもこの時代に名前に子が着くのは選ばれた上の方の人だけじゃなかったか。
「ところでその犬珍しい顔をしているな。」
「そうですね、外国の犬ですね。」
「そうか、珍しいな。織田家から手に入れたのか?」
「織田家?」
「最近貿易やってるらしいからな。」
「そうなんですね。ところで、今の将軍様って誰ですか?」
「まぁ田舎の出なら知らなくても当然だな。足利義晴様だ。ちなみに副将軍がさっき話が出た織田の信長殿だ。尾張は未だ信秀殿が当主だがな。」
「えっ‼織田信長が副将軍?(なんか、俺がいた世界の歴史とはずれてるな。)やっぱり怖いでしょ?」
「そうだな。見た目と違い恐ろしいぞ。そのうち、この戦国の世を統一するかもな。」
「そんなにですか。京にも来るんですか?」
「そうだな。何回も来てるぞ。俺は見ただけだがな。いつか遠くから見れるかもな。さぁ、行こうか。お前らはここで怪我人の治療を続けろ。拙者はこのまま護衛し途中で助けを来させる。さ、貴子様参りましょう。」
こうして一行は
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