第91話 タイタンまでどれ位?

「え?復讐するの?どうやって?」梨乃は首を傾けて聞いてくる。


「神様にお願いして一時的に元の世界に帰してもらう。そこで、政府を転覆させて、またこの世界に戻ってくる。予定。」


「できるの?」


「大丈夫でしょ。その前に、一緒に殺された友達もこの世界に転生してるらしいんだよね。その彼女を探して一緒に帰るつもり。だから、亜里沙と二人で来週からヨーロッパに行くんだ。」


「大丈夫なのは、元の世界へ帰る事?それとも、帰る事と転覆させる事の両方?」


「今大丈夫だと言ったのは、帰る事。転覆させる自信はまだない。ほとんど亜里沙頼み?」


「ねぇ、探す友達って、エライザ?」


「そう。知ってるの?」


「名前だけはね。あなたとエライザはふたりともハーフで綺麗だったから有名人だったし。エライザも次こそ大奥へ連れて行かれるぞって言われてたから。」


「さ。昔話はそれくらいにして、いや未来の話か?時間的には過去になってるわよね。さ、信長に会いに行く?」亜里沙は過去の話を終わらせるように提案した。


「会いたい。会ってみたい。会って皇帝と一緒になる決心をつけるよ。」


「ヘイ、千奈。那古屋城へ行って。」


『私はグーグルではありません。ですので、会話の流れから推測して既に到着してます。』


「流石千奈ね。グーグルとは一味違うわ。」


 三人は吉法師の部屋へと転移した。


「あら、まだいたわね。」


 吉法師の部屋には今朝と同じ状態で吉法師、その横には珠、そして対面には三好政勝とその妻となる予定の妻木が仲良く座っている。


「だ、だ、誰だ?そ、その綺麗な人は?」


「あーはっはっはっ、ちょっとぉ。ダーリン、最近どもり芸が激しくなってない?笑わせないで。この人が今朝言っていた。ダーリンの嫁になりたいって言ってた皇帝のお嫁さんよ。」


 帰蝶は笑いをこらえながら説明した。


「皇帝の嫁は辞めて俺の嫁にならないか?」


「うーん、皇帝は家を贈るって言ってるわ。」


「じゃあ、俺は、VTOL(垂直離着陸)ジェット機をプレゼントするぞ。性能はF22より上だぞ。多分。」


「あのね、私はあなた達の居た時代よりも、もっと、もっと未来から来たの。そんな前前時代的な羽の生えた化石燃料を使う飛行機なんて怖くて乗れないわ。」


「いつ頃から転生してきたんだ?」


「西暦2200年よ。ヤ○トもガ○ラスもないわよ。」


「知ってる。」


「あ、新たな反応だわ。エリカに聞いたのね。」


「チナチアットに乗ってここまで来たよな。あんな飛行機をプレゼントするぞ。」


『無理です。まだ反重力推進エンジン作る材料がありません』


 突然千奈が耳の後ろに貼り付けた音声骨伝導伝達装置から伝えてきた。


「それはまだ無理だそうだが、いずれはできるぞ。その時には渡せるぞ。」


「あー、反重力推進装置の材料がないのね。あれは中国が土星付近の衛星から採取した特殊な鉱物が使われてるらしいから。」


「へー、そうなんだ。千奈、他にはないのか?」


『西暦2200年当時迄には土星の衛星タイタンでしか発見されてません。しかし、その他にない訳ではないと思われます。』


「チナチアットで土星まで行って採取してくるぞ。造ったらお前に贈る。だからどうだ?」


「でも、あなたは奥さんが沢山いるんでしょ?」


「何言ってる。妻はまだ一人も居ないぞ。」


「そうなの、帰蝶さんは?」


「帰蝶は嫁ではなく俺が帰蝶の嫁みたいなものだ。だから嫁ではない。実際結婚もまだしてないし。隣の珠は俺の世話係だ。本当は帰蝶の付き人だけど。他には居ないぞ。っていうか、俺はまだ十一歳だぞ。今朝やっと元服式を終えたばかりだ。」


「そうか。マセガキなのね。じゃあ正妻の座を貰えるなら美味しいかな。でも、明の皇帝と、一国の主でさえない男じゃ、比べようがないかな。それにこれから側室を沢山作るでしょ。」


「それは仕様がないだろ、子作りは領主の責務だから。」


「私が居た世界でも、市長の中国人がそう言ってたわ。『中国人を増やすことは中国人の責務だ。』って。昔は一人っ子政策をしてたみたいだけど、世界中を中国が支配するようになって人口の半分が中国人になったけど、世界中に散らばっていたせいで人口増加も全く中国は困らなかったし。それに、宇宙にも沢山人を送って月や火星や木星の衛星でも中国人は生活したから。」


「凄いな中国。でも、皇帝厚熜こうそうも側室たくさん作るぞ。」


「でも、皇帝が俺が世界を統一して人が争わない国を作るって言ってたから、私は皇帝の考えに賛成。だから皇帝の妻になるわ。」


「それは良かった。皇帝を助けてやってくれ。(/ヘ ̄、)グスン」強がる信長であった。


 それから暫くして三人はチナチアットに帰っていった。


「なぁ、正勝、あいつ一体何しに来たんだ?」


「さぁ。何しに来たんだろうね。」正勝も首を傾けていた。


「なぁ、千奈。」


『なんでしょう。』


「土星までどれ位の時間がかかる?」


「タイタンまで15億キロの距離がありますのでこの機体の最高速のマッハ100で12,148時間かかります。日数で506日、月で17ヶ月程かかります。』


「そんなにか?遠いな。」


『ちなみに、西暦2200年当時の中国軍の最新の機体の場合は秒速3万キロの速度が出ますので14時間ほどで行くことができます。』


「じゃ、その最新式の機体を作れるか。」


『難しいです。データがありません。能力からエンジンを推測し一から設計することになります。AIは創造力という点に於いては人間に勝ることはないかもしれません。しかし人間の創造力を知識を元にした思考の発展型だと仮定した場合、AIも現在存在するデータを組み合わせてより良いものを作ることも可能であり、それを創造力と呼ぶことができるかもしれません。だとすれば、西暦2200年当時最新であった機体以上の性能のエンジンを創造することも不可能ではないと思います。挑戦してみます。』


「お前ならできる。頑張れよ。」


『ありがとうございます。』


「良し、お前ら、今日は味噌カツ定食だ。食堂行くぞ。」


 今日も尾張は平和に暮れて行くのであった。

















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