第76話 千奈

 吉法師たち五人はƆINᏌ⊥IᏌ⊥チナチアットを溜めた魔力で熱田神宮上空に浮かべたまま熱田神宮まで転移した。

 梅雨が明けた後の強烈な陽射しが降り注ぐ尾張の夏。しかし、熱田神宮は鬱蒼とした木々が強烈な陽射しを遮り涼しさを感じさせてくれる。


「なぁ、政勝。これだけ陽射しが強烈だと太陽光を電力に変えられないかなと思ってしまうよな。」吉法師は三好政勝に問い掛けた。


「そうだな、でも今はその技術が無いな。今は太陽光で水を温めたりするとかその熱を利用するくらいだな。電気には変えられないな。」


「残念だな。」


 そんな他愛も無い話をしながら一行は祈祷殿へと歩いて行く。


「なんか最近、苦しい時の神頼みが多いな。」


「良いんじゃないの?聞いてくれるものは聞いてもらわなきゃ。」帰蝶は神に対して何度お願いを聞いてもらっても一切引け目を感じない。


 祈祷殿へと到着しいつもの如く神に祈る。


「神様、神様、応答せよ、応答せよ。」


「何だ、お前らか、元気か。最近神頼みが多いな。それで先日のどっちの能力を取るのか決めたか。」


 前回来た時に、新たな能力が欲しいと言うと転移の魔法と引き換えにアイテムボックスを、重力魔法と引き換えに言葉を喋れるようにすると神が言ってきたのだ。


「アイテムボックスより転移の魔法が良いし、言葉が喋れるより重力魔法が良いに決まってるじゃない。」


 帰蝶は神様に対してもへりくだらない。


「そうか分かったぞ。」


「でもお願いがあるのƆINᏌ⊥IᏌ⊥チナチアットを制御する魔道具を信行にお願いしたんだけど断られて、魔道具を神様から貰えないかと思って。お願いよ。あなた幸せよ。だってこの世界で私にお願いされる人が何人いると思ってるの。喜ばなきゃ。」


「選ばれた数人は不幸だろ!?でも、そうだな、個人の能力ではないからそれ位なら良いか。だったらAIをつけてやる。言葉も話せるから、言葉で命令すれば聞いてくれるようにするぞ。まるで生きた飛行物体だな。LFOだな。」


「本当に?ありがと神様。出来たらヨーロッパに付いて行ってあげるんだから行く国の言葉を少しくらい話せるようにして、完璧でなくて良いから。」


「そうだな、付いて行ってもらうんだからな。しょうがない、行く国はフランス語圏とイタリア語圏の間だな。ローマ帝国の属国のような国だからイタリア語がメインか。イタリア語だけは話せるようにしておこう。」


「だけ?だけなの?けちなの?フランス語とイタリア語の中間の国で両方話されてるのなら両方喋れないと不便よ。」


「今ケチと言ったか?AIを止めても良いんだぞ。」


「いえ、ケチとは言ってません。」


「仕方ない。フランス語とイタリア語だけだぞ。スペイン語とかドイツ語とか自分で覚えろよ。まぁ、方言みたいなものだ。」


「まぁ、フランス語とイタリア語だけで十分よ。」貰ってしまえばへりくだらない帰蝶であった。


「神様、声はもちろん優しい女性の声でしょうか。」吉法師が神様に問い掛ける。


「調整できるが女性にしておくぞ。しかし、チナチアットは長いな。千奈にしてやれ。」


「分かりました。AIの愛称は千奈にします。」


「帰蝶、そろそろエリカを迎えに行って、一緒にヨーロッパに行ってくれ。」


「もしかしてエリカはアイテムボックスと地図の能力を持ってるの?」


「いや、両方とも持ってないな。お前らにはあげられないがその代わり、ƆINᏌ⊥IᏌ⊥チナチアットの倉庫をアイテムボックスの様にしておくぞ。それと、モニター、CPUなどをエリカがいた世界から持ってきて取り付けておく。からかなり進んでいるぞ。」


「エリカがいた世界から持ってきたんですか。だったら波〇砲・・」吉法師の質問は途中で遮られた。


「無い!そんなものは無い。そもそも攻めてきていないぞ。だがついでに半重力推進エンジンも持ってきたから魔力をエネルギーとして推進力が得られるぞ。最高速はマッハ100位だな。これは空気抵抗の関係で宇宙空間での速度だな。それでも光速の約1万分の1の速度しか出ていないな。もちろん中国製の汎用品だ。分からない事は千奈に聞け。因みに中国が開発した惑星間航行エンジンは光速に近い速度が出せるらしいぞ。」


「それと神様、未だ身長伸びないし胸も大きくならないんだけど。」我儘帰蝶はどうでも良い欲求を神に突き付ける。


「お前はまだ11才だろ。これからだ。それから、吉法師お前のお陰で武田義信と織田信行が日本侵攻を中止して引き返したぞ。今は琉球国を本拠地にしてそこにいる。明の皇帝はまた攻めて来るけどな。その時は将軍足利義晴に任せておけばいい。どうせお前じゃ皇帝厚熜こうそうには勝てないぞ。」


「そうなんですね。分かりました。ちょっと考えてみます。」




 祈祷を終了すると吉法師達はチナチアットへと転移した。


『おかえりなさいませ。』


「お‼喋ったぞ。w|;゚ロ゚|w ヌォオオオオ!!」


『勿論喋ります。2200年までの単語を理解できます。更に学習能力もあります。』


「自動運転できる?」帰蝶が質問した。


『はい。可能です。』


「だったら那古野城までお願い。ずっと浮かんでることってできる?」


『はい。可能です。大気中の魔素を吸収しますので、魔力集積装置の残量はホバリング中でも増加します。それから1階のスペースを貰いました。そこで、CPUの修理や新しい半導体や機器の製造もおこないます。全て2200年の技術です。製造するための機器は2200年から持ってきてますので、まずはこのチナチアットを2200年の技術で改良していきます。』


「凄いな。家具も作れるか?」吉法師は自分で家具を作るのが面倒になったようだ。


『それはお任せします。』


「無理とは言わないんだな。可能だが、作らないという事か。我儘だな。」


『はい。持ち主に似ました。その内私の分身を作ります。人間の形に作ります。それを使い同行する事も可能です。』


「だったら女性形だな。」


『承知致しました。3カ月をめどに作成します。』


「ボンキュッボンの金髪で頼む。そうだ。スマホも作ってくれ。」


『では、小型の通信機器を作成し、日本の上空に衛星を浮かべ日本のどこでも通信できるようにします。衛星は随時増やしていき世界のどこに居ても通信できるようにします。ですが時間と材料が必要です。』


「材料にはレアメタルも必要だろ?昨日中国から盗って来たから多分足りると思うけど、どうすれば良い?」


『資源保管庫を作成してありますので、資源を保管庫に入れてください。分類は此方で行います。資源の残量はモニターで確認できますし、言って頂ければ私がお教えします。』


三好政勝はアイテムボックス内の資源を全て保管庫に入れた。


「どうして?全部入ったぞ?どうなってる?」政勝は疑問を呈した。


『政勝様のアイテムボックスと同じです。』


「なるほど。」政勝は納得したようだ。


「衛星はロケットで打ち上げるのか?」


『それは前時代の技術です。半重力推進エンジンでまるで、空気の入ったボールが水の中から表面に浮かんでくるように、衛星を地球上に浮かべます。そして、任意の場所へ移動させます。』


「AIで自動で移動するのか?」


『そうです。任意の場所へ移動させる事も出来ます。何らかの影響で位置が動いた場合でもAIが復帰させます。AIは全て私と繋がっていて私、つまりメインコンピューターが管理しますが、各AIは付随運動の様に咄嗟の出来事には各AIが対処します。』


「だったら緊急で監視衛星を作れるか。明の皇帝がここを攻めて来ている。第一陣は信行のお陰で沖縄に帰って行ったが。」


「暫く時間がかかりますので、侵攻が既に開始されている状況では不可能です。ですが第二陣の状況によっては間に合わせる事も可能かもしれません。明の都は北京でしたね。ですので、最初の衛星は監視衛星を製造し北京上空に浮かべます。」


「発見されないようにできるか?」


「はい、2200年の技術はステルス能力も21世紀初頭とは比較にならないほどです。プレデターも真っ青です。目の前に存在する場合でも、視覚でもレーダーでも把握できません。あくまで22世紀前半までのレーダーでの話ですが。」


「衛星から攻撃させることも可能か?」


『可能ですが、今回の侵攻には、間に合わないでしょう。』


「よし、那古野城へ行ってくれ。」


『すでに那古野城上空で待機しています。』


「あ、そうなんだ・・・帰蝶、城へ転移しろ。」


「了解。帰ったら家具作ってよ。ついでに床をフローリングにして。フローリング以外は出来たらつやつやのクリアー加工にして。」


「千奈、塗装用の溶剤とか作れるか?」


『はい、可能です。しかし、材料が必要です。石油があれば良いのですが。中国にも埋蔵されてますので中国の油田で密かに油井を建造して採取しましょう。黒竜江省にある大慶油田はまだ発見されてませんので採取し放題ですね。』


「ここで油田の掘削装置とか作るのか?」


『まず製作するための装置をここで作成し、屋外に設置、そして掘削装置を建造します。』


「そうか、侵攻が一段落した後の話だな。」








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