第74話 ƆINᏌ⊥IᏌ⊥

 すると、テントから帰蝶が出てきた。


「おはよ。何今の?」


「帰蝶。セスナあげたから那古野城まで転移してくれ。」


「はぁ?あんた、バッカじゃないの?セスナあげた?はぁ?まじ?あんた馬鹿なの?私のセスナをあげた?」


「今のは中国の皇帝だぞ。しかも転生者。そいつの力でお前らは眠らされていたんだぞ。」


「いえ、私まどろんでただけですけど・・・。」


「いや、それ寝てるって事だろ?皇帝のお前を眠らせる力が全く分からなかったんだ。だから抵抗しなかった。分かったことはテレバシーは持っていない事と重力魔法は使えないという事、もしかしたら相手の能力が分かる能力も持っている可能性もあるな。後、前世でセスナを運転した事があるだろうという事。何も聞かずに運転し始めたからな。それ位だな。それから現在日本を侵攻中という事だ。」


「え?日本に攻め込んでるの?なぜそんな大事な事をついでの様に言うの!馬鹿なの?数は聞いたの?」


「10万人って言ってたぞ?」


「はぁ?10万人?で、どこ?日本のどこを攻めてるの?」


「聞いてないな。」


「はぁ!?あんた馬鹿?あんた馬鹿なの?なぜそんな大事な事を聞いて無いの。」


帰蝶の怒りは沸点に達していた。


「仕方ないだろ?」


「って、何が仕方ないのよ。仕方がない根拠がないわ。馬鹿なの?」


「馬鹿馬鹿言うな。馬鹿というものが馬鹿だぞ。皇帝は俺達のことを中国人だと思ってた。まさか日本からはるばるやって来たとは思いもしなかったらしいな。だから、中国人と思ったようだ。俺を部下にするから紫禁城に来いって言ってたよ。日本へ一緒に侵攻状況を確認しに行くとも言ってたぞ。」


「ちょっと、待って。那古野城に帰って来る。」


 そう言うと帰蝶は消えて約十分後戻ってきた。


「まだ那古野も京都もいつも通り。空からも見たけどまだ大丈夫みたい。ダーリンは暫く紫禁城で働きなさい。そこで、皇帝と明の力を調べて。潜入捜査よ。ダーリンが言うほど強いなら情報を集めないと。後で皇帝と一緒に日本へ来るならその時に状況報告という事で。それとも、そのまま子分になる?紫禁城にはいつ行くの?それまでにUFO作って。」


「そうだな。ここには材料も沢山あるし。巨大な飛行物体作るか。」


「魔力溜めるのが大変だからほどほどの大きさにして。まずは魔力集積装置を作ってそれから外殻と内装作って。可能なら、空気中に存在する魔素を取り込んで上空に浮かんでおけるようにして。」


「なるほど、浮かべておけば駐車場に困らないな。でも制御する為には魔道具で制御装置を作る必要があるな。信行探し出してお願いするしかないか。」


「絶対探し出して。その為のGPSでしょ。それと、UFOの外殻をヒヒイロカネで作ったらどう?魔力も溜めれるし、魔力で外殻を硬化できる可能性もあるんじゃないの?」


「それは一考の余地ありだな。一応試してみるか。」


「後は、アンプ、つまり増幅装置を使って魔力を増幅できないかな。政勝得意でしょ。」


「はい、電気製品は得意ですよ。アンプを作って魔力を増幅できるようにしてみましょう。」


「俺がガソリンタンク作って、政勝がターボ作るみたいな感じだな。エンジンは重力魔法が使える俺か帰蝶だな。CPUは信行頼みか。それとセスナもう一基作るから、帰蝶モーターまた作ってくれ。よし、今日一日で作り上げるぞ。まずは飯だな。珠、妻木飯作ってくれ。」吉法師はまさかその信行が明の軍団引き連れて琉球国から日本へ侵攻しようとしているとは思いもしない。


 こうして昼頃には、吉法師は巨大な魔力集積装置を2個造り、帰蝶はモーターをセスナ用とUFOのドア等に使う為の小さいモーターを数個作り、政勝は、魔力増幅用の巨大なアンプを2個作り上げた。


「材料が沢山あったから集積装置とアンプが巨大になったな。あとは、UFOの外側だな。風呂も作るか?」


「風呂は必要でしょ。私の寝室も作って。」


「魔力集積装置とアンプがかなり巨大だからな、部屋はそんなに大きくできない。1畳くらいで良いなら作れない事もないな。」


「それ、カプセルホテル‼」


「じゃあ、二階建てにするか?そうすれば、かなり広くなるぞ。」


「楽しみ。」


「家みたいになるな。」


「家ごと移動できたら便利だね。それにこれからエリカとヨーロッパに行くんだから。」


「え?帰蝶がヨーロッパに乗っていくのか?」


「当り前でしょ。それに、あなたはセスナを作るんでしょ。」


「え~~!∑( ̄□ ̄ノ)ノ 」吉法師は少し落胆した。



 そうこうしているうちに辺りは陽が沈み、暗くなり始めた。UFOは外観だけは既に完成していた。楕円形の平べったい形をしていた。


「名前を決めたぞ。『 ƆINᏌ⊥IᏌ⊥ 』チナチアットだ。」


「何それ?どうしてそんな変な名前?しかも変な綴り?」


「逆さにするとTAITANIC、つまりタイタニック。逆さにしたんだから沈まないって事だな。」吉法師は得意げに説明する。


「なるほど!でも、船ならもっと良かったのにね。」


「船にもなるぞ。自動で二酸化炭素を酸素に変換できれば宇宙にも行けるぞ。魔道具で重力魔法を使えば常に機内に重力を発生させ普通に生活できるぞ。取り敢えず大気中の魔素を取り込んで浮かべるようにはしたいな。信行頼みだな。外殻もヒヒイロカネで作ったから魔力を流してバリアに出来るかは実験してみないと分からないな。外殻にも魔力を溜めることが出来るぞ。でもCPUが必要だな。全部まとめて制御させないと。信行見つけるか。」


信行は魔道具作成能力があり過去の様々な魔道具を作って吉法師を苦しめてきた。


「魔力集積装置にフルに溜めたとしてどれだけ飛行できる?」


「それも実験してみないと。一応政勝がメーター付けたから残量は分かるけど。」


「政勝、アンプはどう?どれくらい増幅できる?」


「実験してみないと分かりませんが、多分、数倍から十倍くらいの出力で飛行できるのではないでしょうか。」


「楽しみね。」


 ƆINᏌ⊥IᏌ⊥(チナチアット)の大きさは、長さ30メートル幅15メートル高さ10メートルの楕円形の3階建てになっている。ラグビーボールを上と下から潰した様な形だ。1階の室内高は3メートル。エンジンルームなので高め。2階と3階は2.5メートルとなっている。

 1階の前部には長さ10メートル幅5メートル高さ2.5メートルの魔力集積装置が2個並列で繋がれ、非常時には直列に変えることが出来る。豊富な中国の資源をふんだんに使ってしまった。

 後部には縦5メートル×横5メートル×高さ2.5メートルのアンプが2個並べている。その後ろにはエアコンの室外機と冷蔵庫や冷凍庫やトイレなどがあり、まだかなりの空間が開いているが二酸化炭素を酸素に変える装置等、水中や宇宙に行けるようにする装置を置く予定だ。勿論、冷蔵庫等の簡単な装置以外は信行頼みだ。

 2階は操縦室とリビングと個室に分かれ、操縦室は先端の5メートル部分が当てられ、その残りの2階前部10メートルⅹ10メートルがリビングとキッチンとなっている。

 そして、2階の後部は真ん中に幅1メートルの廊下が通りその両側に4メートルx4メートルの部屋が左右に二つずつあり、突き当りの2階後端、つまり楕円の先端部が展望台兼バーとなっている。勿論、未だカウンターもお酒も置いてない。


 そして3階は1階とほぼ同じ広さではあるが高さが2.5メートルと低い。前方には個室があり5メートル四方の部屋が二つ。中央部右側には5メートル四方の浴室があり。中には幅2メートルx2メートルの浴槽がある。勿論天井を開けることが出来、露天風呂にすることが出来る。中央部左側縦5メートル四方の未だ目的未定の部屋があり、部屋と風呂の間には廊下が通っている。二階と三階の移動はリビングの横にエレベーターが作ってある。後部には入り口から3階への階段もある。このエレベーターも冷蔵庫も魔力備蓄装置の魔力によって動いている。三階後部の約10メートル四方の空間もあるがはまだ決まってない。


 結局エンジンが大きくなってしまったからその入れ物も大きくなってしまったような状況だ。


「後部の下側から乗るんだぞ。この蓋をスライドさせて中のボタンがスイッチ。押せば開く。本当は青い光線を下に出して人を引き上げたかったんだけど、無理。スイッチを押すと外殻が下がってきて階段になるぞ。上ると直ぐのドアがエンジンルーム、さらに上がると2階で、こっちの後部が展望台兼バーにする予定。まだ何も置いてないけど。」


「ならすぐに作りなさいよ。」


「明日な。明日作るよ。先行くぞ。左右の四つの扉が個室。個室は3階にも2部屋あるぞ。3階の方が少し広いし進行方向が窓越しに見れるぞ。」


「へぇー、だったら私3階ね。ここは8畳くらいありそうね。広い。窓が無いけど。」


「魔力を流すと透明になるぞ。窓の横のスイッチ押したら透明になるから。声に反応して透明にはならないけど。やっぱりCPUが必要だな。まぁ、信行だな。」


「ベッドとソファーが欲しいわ。明日作ってね。」


「わかったよ。それで突き当りのドアを開けるとリビング。10メートル四方あるぞ。」


「うわぁー、広-い!これだけ広かったら飛ばす魔力がかなり必要になるんじゃないの?」


「違うぞ。魔力を溜める装置を巨大にしてしまったから必然的に居住空間も広くなってしまったんだ。でっかいエンジン積んだら車もデカくなったみたいなもんだ。それでこの先のドアを開けると操縦室。」


 一行は操縦室の中へと入って行った。操縦室の中はバケットシートが窓に向かって2脚。その手前にテーブルがあり、更にて前にバケットシートが4脚。壁際にも椅子が左右に2脚ずつある。この操縦室だけでセスナよりも広い。


「ここも外が見えないわよ。」


「通常外からも中からも見えないようになるな。もしガラスにしたら強度が全然足りないだろ。これなら金属なのに透明に出来るから攻撃されても宇宙で隕石が当たっても大丈夫。」


「でも限度があるでしょ。宇宙を飛ぶ時はバリアを機体の周りにも張り続けた方が良くない?」


「でも、多分機体の外殻を魔力で強化できるからバリアを張っている状態だけど。」


「それでも限度があるでしょ。飛行中はバリアを張れるようにして。」


「それと魔力を溜める時はリビングのソファーでも操縦席のイスでもできる様にしたぞ。前の計器は、水平器、高度計、速度計、地下の魔力集積装置①と②の残量と外殻の魔力集積装置の魔力の残量。」


「じゃあ、早速三人で溜めるわよ。これがメーターね。運転席はもちろん私よ。」


 早速三人で操縦席の椅子に座り魔力を溜め始めた。1時間が経過した。1メモリ分増えた。1メモリで10%だ。


「え?あと9時間!?ちょっと、珠、妻木、飯作って。勿論、外で作ってよ。私のチナチアット汚さないでよ。」


「何が私のだよ。」吉法師は一寸ムッとした。


「何か文句でも?」帰蝶が怖い顔で睨む。


「いえ、有りません。」吉法師は帰蝶の怖い顔に怯んだ。


「ご飯まで私一人で溜めておくから、ベッド作って、コイルスプリング沢山でお願いね。」


「はい、はい。承知致しましたよ。帰蝶様。」吉法師は女王の様に振る舞う帰蝶に厭味ったらしく敬語で話す。


「はいは一回。」


「はい。」


 飛行機の操縦だけでなく亭主の操縦にも長けている帰蝶であった。



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