第65話 下呂温泉
ここは梅雨も真っただ中の西暦1545年、天文14年の美濃国下呂。辺りは鬱蒼とした森林に囲まれたこじんまりとした山の中の小さな猟師村。ここでは、昔から温泉が湧いていて近所の人達を楽しませている。猟師村であるが故に、この村人は弓を使い獣を取っているが、最近は
団長の一人、田吾作は身長160cm程でこの時代としては平均より少し高い程度だが筋骨隆々だ。目がデカくギラギラと辺りを威嚇し睥睨する、一目で団の長である事を辺りに知らしめる。そのデカい目は理性的であり知性を感じさせると共に狡猾さも感じさせる。近くを通った戦から落ち延びた兵、つまり落ち武者を襲い奪った、山賊団の中では一番良い鎧や具足を着けている。
副長である権兵衛は身長が170cmあり、この時代としては身長が高いが細身であり、蟷螂の様な印象を受ける。残忍で狭量であり狡猾そうな顔をしており、実際もその外見同様の性格をしている。この男も落ち武者から奪い取ったであろう鎧や具足を着けている。
田吾作も権兵衛も武器は落ち武者から奪い取った刀であり、背に弓も担いでいる。
この日も山賊団の団長の田吾作は団員を前にして団員にカツを入れていた。
「おい、お前ら、最近、獲物が少ないぞ。落ち武者がいれば生け捕りにしろ。人質交渉で大金が手に入るかもしれないからな。女がいれば丁寧に捕まえてこい。売り飛ばす。特に綺麗な貴族や武家のお姫様なら人質として大金と交換できるかもしれないし、高値で売り飛ばす事も出来る。」
「そうだぞ。」副長の権兵衛が続ける。「女は絶対連れて来いよ。俺が味見をして売り飛ばすからな。男も連れてこい。用が無くなれば俺が甚振って体中を切り刻んで殺すからな。」
「おい、権兵衛。お前は女も甚振り過ぎるぞ。売り物にならなくなるだろ。」
「あ”‼俺の勝手だろうが!俺はやりたい事をやるんだ。俺に指図するな。」
団長の田吾作は権兵衛の日頃の振る舞いを
すると団員が騒ぎ始めた。田吾作が騒ぎ始めた団員を見ると上を見上げている。鷲でもいるのかと田吾作も団員が見ている方向を見上げると何かが飛んでいた。鷲よりデカい何かが。
「なんだ!あれは?」田吾作が叫ぶ。
「鷹か?」
「いや、鷲だろ?」
「それにしてはデカいぞ。」
「こりゃ高く売れるかも知れん。お前ら、追いかけるぞ‼。」
田吾作が叫ぶと全員で追いかけ始めた。金になりそうな案件に関しては田吾作と権兵衛の意見は一致しており権兵衛が反対する事もなく行動が乱れる事もない。一致団結している。
「お。降りて来たぞ!」
「林の向こうに降りたぞ。温泉のある方向だ!」
山賊団が飛んできた鳥の様なものを追いかけて温泉の近くまで来ると人がいるのが見えた。
「おっ‼女がいるぞ‼四人もいるぞ‼高そうな着物を着ている‼こりゃ高く売れるぞ。お前ら未だ近寄るなよ。侍は刀持ってるからな。弓でも攻撃するなよ。女に当たれば高く売れなくなるからな。」
「おい、田吾作。あの小さい女は俺が貰うぞ。他の鎧を着ている女も俺が貰う。他の着物の二人は田吾作が貰え。」
「お前はいつも!綺麗な女は自分が貰うんだな。よし、温泉に入るようだ。どうやら男女別の湯船に入るようだ。男と別れたら女を襲うぞ。女を人質に男も捕まえる。まずは服と武器を奪えよ。」田吾作が声を潜めて団員に指示を出した。
山賊団は音を立てないように来た方とは反対側の女がいる湯船の側から近づいた。女性は寛いでいるようであり、盗賊に気付かない。
「田吾作さん、女の子が一人見えませんが。」団員が田吾作に指示を仰いだ。
「かまわん。子供は後でどうとでもなる。」
盗賊団は服と刀を奪い女風呂へ雪崩れ込んだ。刀を三人の女性に突き付けると田吾作が叫ぶ。
「お前ら、動くなよ。お前らは今日から俺の奴隷だ。」
その声を合図に男がいる湯舟へと別動隊が雪崩れ込んだ。刀を奪い温泉に浸かっている男たちに叫ぶ。
「おい動くなよ。今の声が聞こえたろ。女は人質に取った。動けば女ば死ぬぞ。まぁ、こっちには刀があるんだ。動いても無駄だろうけどな。」
「あ、そう。がんばれよー。」
「そうだぞ。頑張れー。」
温泉に浸かっている子供が応援してくる。自分の置かれている状況を理解していないのだろうと刀を向ける。
「お前ら外に出ろ。」
山賊団が命令する。
「嫌だ。未だ入ったばかりで温まってないぞ。」
「うるさい。勝手に言っとけ。未だ出ないぞ。」
「政勝、飲み物持ってないか?」
「冷たいのならあるぞ。」
そう言うと政勝は、銃を収納魔法で銃を二丁取り出し一丁を吉法師に渡し、もう一丁を自分で構えた。
銃を見た事のない山賊団は何をやっているんだと訝しむだけで、大きな音がしたと思ったら全員倒れて脚から血を流していた。
一方、大きく連続的なフルオートの銃撃音が続いたのを聞いた女風呂の山賊は本能的に危険を感じ女性三人を拉致し逃げて行った。
一方、用を足しに木陰でしゃがんでいた帰蝶は銃撃音に驚き温泉に駆け付けようと思うが出るものが出ず動けずにいた。
「こんな時に限って切れが悪い!?」
世の中そんなものである。
一方、吉法師、政勝、信秀の三人は未だにお湯につかっていた。
「吉法師、のんびりお湯につかっていていいのか?」信秀は不安を吐露してきた。
「あー、大丈夫だ。帰蝶がいるからな。普通の人間が何人いようと帰蝶には敵わないよ。任せておけば安心だ。((ミ ̄エ ̄ミ)) ボーーー」吉法師は安心しきって温泉を満喫している。
「そうだな、帰蝶様に任せておけば大丈夫だな。」政勝は帰蝶の部下のくせに帰蝶に任せっきりだ。
すると、突然素っ裸でタオルで前を隠しただけの帰蝶が駆け込んで来た。
「どうなったの?エリカたちがいないけど?って、こいつらは何?」
「は?こいつらは山賊だろ。帰蝶、何言ってんだお前が助けたんじゃないのか?」
「私はトイレに行ってたのぉ!(*/∇\*))))))ィャ――――冫♪」
「大変だ!エリカたちが攫われたぞ‼」事態に気付いた吉法師が叫んだ。
「ダーリン、地図で確かめて。エリカたちは何処にいる。」
「それよりこいつらに案内させるか?」
「嫌よ、こいつら治すのは。」
男風呂にいる山賊は皆足を撃ち抜かれて動けずにいる。
「おい、山賊ども。女を
「は、はい。攫って売り飛ばします。ただ副団長が女好きの酷いことする男でただじゃすまないかもしれません。」
「その時はお前らもただじゃすまないから覚悟しておけ。殺すなんて生ぬるい事はしない。手足全て切り落として生かしてやる。覚悟しておけよ。吉法師、さっさと探しに行くぞ。」政勝は脅すだけ脅して探索を提案した。
一方、山賊団の一味は大いに焦っていた。
「おい、隣の風呂がどうなったか見た奴居るか?」
「へい、あっしが見やした。何か黒い物から轟音と共に火が出て全員脚から血を噴出させながら倒れやした。」
「おい、そんな物騒な人間の仲間を
「あなた達直ぐに私達を開放しなさい。あなた達が手を出してるのは、この国のお姫様よ。国主の斎藤利政の娘よ。お殿様が怒るわよ。」
「な、何だとぉー‼」
「ど、ど、どうする、田吾作?」
「そ、そうだな、どうする、権兵衛?」
「やったな!」
「おう、やったぞ!国主の娘が手に入いるぞ。これで人質交渉すれば金は思いのままだ。上手く行きゃ、城が手に入るかもしれないぞ。」
「そうだな。やるぞ。捕まえに行くぞ。」
今まで、相手の武器の凄さに圧倒され意気消沈していた山賊がこの国の姫がいる事を知って金の匂いに恐怖が吹き飛んでしまったようだ。
「人質を連れてこい。さぁ、温泉へ戻るぞ。」
山賊は村から温泉への道程を戻って行った。
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