第64話 海人(うみんちゅ)
刺すような陽射しが降り続く中を村まで歩き続けている武田義信と織田信行は困惑している。
「おい信行。後ろの五人はなぜ無言なんだ?意思がない人形みたいだぞ。」
「そうなんだよ。魔法で奴隷にしたら自分の意思が無くなるんだよな。ほら、俺ってフィギュアが得意な人だろ?だから人間を奴隷だけどフィギュアの様にしてしまう魔法が身に着いたんじゃないかと思うんだけど。」
「無言でぞろぞろ歩いて、まるでゾンビみたいだ。魔法の呼び方を『サーバント』と言うより『ゾンビファイ』に変えた方が良くないか?」
「・・・・(-_-)ウーム。」
左手にエメラルドグリーンの綺麗な海、右手に緑の山、上に真っ青な空、これぞ南国と言える綺麗な景色に囲まれた風景の中を一行は北へ向かい歩き続ける。
暫く歩くと村が見えて来た。
「(琉球弁)【あれが私たちの村です。】」
「おい、奴隷一号がなんか言ってる。」
「多分、村の事を言ってるんだろ。」
奴隷2号が先に行って誰かを連れて戻って来た。老人だ。多分この村の長老だろう。年を取っていて皴が深い。しかし、
「(琉球弁)【この方がこの村の長老です。】」
「お前がこの村の長老だな。腹が減ったぞ。なんか食わせてくれ。」
「(琉球弁)【わしが、この村の長老だ。お前が子の五人の夫になったのは本当か。】」
長老が信行に問う。
「そうだ。俺はお腹が減ってるんだ何か食わせてくれ。」
「(琉球弁)【そうか。言葉が通じた様だな。では今晩は新しい夫を迎える宴を催そう。ずっと村で暮らしてくれるんだろ?】」
「そうだ、沢山だ。物凄く腹が減ってるんだぞ。」
「(琉球弁)【そうか、ずっと村で暮らしてくれるのか。】」
「魚で良いぞ。」
こうして会話がかみ合わないまま、信行を五人の夫として、義信を信行の弟としての村での生活が始まった。
一方、未だに梅雨の曇り空の甲府の
つまり、織田は武田との同盟と言う得を取り、今川は織田からの武器を得ることが出来、武田は補償をすることも無しに武器を得るという武田が一番得した形となった。
因みに、同盟は帰蝶が尾張の末森城まで転移して織田信秀を連れて来て成立した。ここに織田・武田・今川の三国同盟が成立した。
同盟が結ばれた後、吉法師と帰蝶とエリカの三人は
「上杉は同盟には加わらないか?」吉法師はエリカこと長尾景虎に聞いてみた。
「あのね。無理に決まってるでしょ。上杉は武田とは仲が悪いんだから。特に上杉謙信と武田信玄は川中島で何度も戦ってるくらい仲が悪いのよ。同盟なんか無理でしょ。」
「そうだよな。だったら、将来の上杉謙信はここにいるんだし、武田晴信殿と別に仲が悪い訳ではないだろ。武田と上杉の戦争は単に利害の衝突から来る戦争行為なんじゃないの。だから、エリカが上杉に帰れば武田との利害の衝突から例え仲が良くても戦争をせざるを得なくなる。だから、エリカが尾張に来れば上杉謙信と武田信玄が衝突する事はなくなるだろ。」
「あなたはどうしても私に尾張に来て欲しいみたいね。私がいなくても誰か、例えば上杉景勝とかが武田と戦を始めるんじゃないの。」
「でも、謙信がいなけりゃ戦争はすぐ終わるだろ。」
「でもその場合は私の故郷の越後が、上杉が負けちゃう(T_T)。」
「でも未来から来た俺達からすれば越後だ信濃だと言い争ってる方がおかしいだろ。その内帰蝶が日本を纏めるよ。」
「え?織田信長じゃないの?」
「織田信長はもう出て来ないよ。俺が良い方法を考えた。」
「何?何を考えたの?」
「俺は来年、元服だ。その時の俺が織田信長と名乗ることにする。そうすれば本物の織田信長が信長と名乗れなくなって、本物の織田信長がこの世界に存在しなくなるだろ?いい考えだと思わないか?o(`・ω´・+o) ドヤ。」
「はい、はい。(f^_^;)アッ、ソウナンスカ。でも、私が尾張に行ったら未来が変わって私が生まれなくなるん可能性があるんじゃないの?」
「この世界の未来に、エリカが生まれても生まれなくても目の前にいるエリカとは全く関係が無いよ。結局この世界はエリカが元いた世界とは別の世界で、俺がいた世界とも別の世界だから。つまり、俺達がいた世界とは連続性の無いただの異世界と言う訳だ。だから、エリカの先祖が死んだからと言って突然目の前からエリカが消える事はないぞ。」
「ホント?」
「ホント、神が言ってたよ別世界だって。それで、尾張に来るのか?」
「いつかね。今は越後に戻るわ。」
「え?帰るのか(/ヘ ̄、)グスン。じゃぁ、俺達も尾張へ帰るか。」
「温泉寄らないの?この辺りなら温泉沢山あるんじゃないの。」帰蝶が温泉を提案して来た。
「えー、温泉?どうしようかな?エリカが行くなら俺も行く。」吉法師が行きたくないが、エリカが行くなら仕方がなく温泉に行く
「何?僕ぅ、一緒に温泉に入りたいのぉ?」
「入ってやっても良いぞ。」
「ませガキね。(* ̄^ ̄*)ふんっ。」
「よし、じゃぁ、みんなで下呂温泉に行くか。」
「下呂温泉って、既に町か村があるの?亜里沙知ってる?」エリカが帰蝶に聞く。
「知らない。でも、温泉はあるでしょ。無ければダーリンが作る。」
「おーい、政勝!帰るぞ。」隣の建物の縁側にいる政勝らに大きな声で呼びかけた。
吉法師は立ち上がり、縁側を後にし武田晴信と今川義元と妻の花と織田信秀の四人が話している常御座所に来た。
「晴信殿、世話になったな。親父殿もう帰るぞ。」
「もう帰るのか?吉法師殿にはこちらの方が世話になった。」武田晴信は本当に感謝しているようだ。
「吉法師、もう帰るのか?初めて甲府に来たのに。」織田信秀は、帰るのが名残惜しそうな顔をしている。
「いつでも来れる。これから温泉に寄ってから帰るぞ。」
「温泉でおじゃるか、余も連れて行ってくれるのか。」
「あー、義元殿も花さんも連れてくぞ。」
「だったら儂も連れて行ってくれ。」
「いや、晴信殿は、今動く訳には行かないだろう。色々戦後処理が必要だろうし。」
「そうでおじゃるな。余も早く帰らないといけないでおじゃるな。」今川義元も、籠城戦の後の長篠城が気になるようだ。
「だったら、帰蝶、転移で直ぐに駿府へお連れしろ。」
「分かったわ。義元さん、戦争のあった長篠城へ寄ってから駿府城へ帰るでしょ。」
「そうでおじゃるな。駿府城に未だ雪斎がいるなら雪斎と一緒に駿府へ帰りたいでおじゃるな。」
「分かったわ。もう連れて行って良い?花さんも良い?」
「晴信殿、世話になったでおじゃる。信秀殿も吉法師殿も息災で。帰蝶殿、行くでおじゃるよ。」
「はーい、帰るまでが修学旅行ですよ。行きますよ。」
「(o゚-゚o)ン?」花が首をかしげて不思議そうな顔をしている。
「これは御屋形様に奥方様と鬼嫁様。」
「もう、戦は終わったぞ。戦は息子の義信が謀反を起こしたんじゃ。」
「そうなのですか?義信殿の謀反だったんですか。それで義信殿は?」
「帰蝶殿に、倒されたんじゃな。その後は行方が分からぬな。」
「鬼嫁様、この銃を貸して頂きありがとうございました。」
「それ、あげるわよ。弾はダーリンが作ったらまた持って行くから。ここはもう安心ね。早く駿府城行くわよ。雪斎さんも行くでしょ。」
「え、これから帰りますが。」
「兵隊より先に皆で駿府城へ行くわよ。」
そう言うと帰蝶ら一行は駿府城へと向かうのであった。
一方、帰蝶が転移した後の吉法師達は帰蝶の帰りを常御座所でお茶を飲みながら待っていた。
「なぁ、エリカ、本当に尾張に来ないのか?」
「奥さんがいない所で口説かない。ε-( ̄ヘ ̄)┌ ダミダコリャ…」
「何、私がいない所でエリカを口説いているのよ('Д')。」
突如帰ってきた帰蝶が文句を言う。
「Σ(゚Д゚;)ギクッ!な、何だ、か、帰って来たのか。帰って来るなら連絡くれよ。」
「スマホ忘れちゃって・・・・って、ここは昔の世界の日本じゃないわよ!」
「じゃあ、下呂温泉行くぞセスナに乗れ。」
こうして、吉法師、帰蝶、政勝、エリカ、珠、妻木と織田信秀はセスナに乗り込み下呂温泉へと向かうのであった。
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