第61話 騙された!!
次の日の、エリカとの約束の日の夜、独房から抜け出し主殿前の庭園へ行くとエリカが待っていた。
「はい、亜里沙。体調はどう。」
「はい、エリカ。元気だけど、昨日、出兵したような声や音が聞こえたんだけど。」
「出兵したみたいね。まずは今川領を占拠しながら尾張へと進むはずだから尾張は暫くは大丈夫よ。それよりここ占領しちゃう?」エリカこと景虎が提案してくる。
「
「じゃあ、義信を倒して甲府と甲斐を頂きましょう。」
「駄目、甲府と甲斐は晴信さんに返さないと。そうすれば武田と同盟が結べるの。そう晴信さんと約束したのよ。」
「そうなんだ。でも必要な情報は得たから明日行動を起こしましょうか。名付けて
「その必要な情報って上杉に必要な情報であって私には無関係な情報じゃないの?」
「だって、義信と信行はずっといないんだからしょうがないじゃない。
(#⌒∇⌒#)ゞイヤァー 」エリカは自分にだけ必要な情報を得たから行動しようとしたことがばれてもあっけらかんとしている。我儘もしくは即物的な性格なのだろうか。
「でも、義信と信行が戻ってきたら勝つ自信ないわよ。特に義信にどんな力があるのか分からない事には勝てないかもしれない。」帰蝶にしては珍しく弱気になっている。
「でも、やるしかないわよ。でないと、日本は義信のものよ。武田幕府が出来ちゃうわよ。」
「そうよね、織田幕府を開かないと。」
「無理よ。織田は幕府を開けないわよ。」
「なんでよ!」
「織田は平氏でしょ?幕府が開けるのは源氏だけよ。」
「えー?そうなの?じゃぁ、織田政府?いや、織田王国にするわ。」
「王国も無理でしょ。天皇がいるんだから。」
「なんか不便。やっぱり、チンギスハーンよね。それが一番だわ。」
「それいいかも。私もチンギスハーンに一票だわ。引き抜いてもらおうかな。」
「それじゃ、明日日没直後
帰蝶はその後、明日に備えて独房に帰って睡眠をとった。
次の日の朝、部屋へ客が来た。義信と信行だった。
「帰蝶殿、喜べ。もう尾張に帰らなくて良くなったぞ。俺の嫁になれるぞ。」信行がそう言って、歪んだ笑顔を見せる。
「どう言う事?」
「駿河も遠江も三河も占領した。勿論尾張もだ。」
「え?もう?」
「そうだ、移動時間が不要だからな。」
「そうか、転移魔法か。どれくらいの距離まで飛べるの?」
「なぜそんなことまで知りたがる?」
「だってあなたの嫁になるんでしょ。だったら、味方の事は詳しく知りたいじゃない。」
「そうだな。飛べる距離はな・・・って教えるかぁ!」
「 ( ̄ ̄ ̄ ̄□ ̄ ̄ ̄ ̄)チッ 、騙されなかったか。」
「兎に角大人しくしておけ。そうすれば嫁にしてやる。次は美濃だからな。稲葉山城で結婚式でもあげるか。楽しみにしておけよ。」
そう言うと、義信と信行は次の独房へと移動していった。
帰蝶は日没を待つ予定だったが、義信と信行が帰って来たのは想定外だ。作戦を変更しないといけない。未だエリカは知らないだろう。日暮れ前に教える必要があるが場所が分からない。見つかるリスクはあるがこのまま作戦を決行するよりもましだろうという結論に達した帰蝶は牢を出るのであった。
独房のある地階を出て地上へ出ると兵士はいない。
露のさなかであり、空はどんより曇り、まとまった雨こそ降らないが時折小雨が降る。じめじめした嫌な季節だ。
門から
城の周りを暫く散策するとエリカが帰蝶に気付き近づいて来た。
「亜里沙、どうしたの。なにかあった。」
「もしかして、レーダーの能力持ってる?」帰蝶の行動を分かっていたように出現したエリカの行動に対して帰蝶は疑問に思った事を聞いてみた。
「レーダーはないけど魔力感知で似たようなことは出来るわよ。」
「それ私にもできないかな。」
「特別な能力じゃないから訓練すれば出来るようになるんじゃないの。ところで、何かあったの。」
「そう、忘れてたわ。義信と信行が帰って来てるわ。既に、駿河・遠江・三河・尾張を占領したらしい。たった三日で。」
「ホント?家が無くなっちゃったんだ。だったら、義信倒すか尾張を取り戻さないと帰れないじゃない。」
「それで、今日の作戦どうする。このまま決行する。変更する?たった三日で四か国を占領した能力が分からないと戦えないし、三日で三国を征服したという事はそれだけの数の兵を纏めて転移させる巨大な魔力があるという事。だとすれば、戦っても負けるかも知れない。」
「それ、本当なの?本当に占領したの?それが嘘だったら?」
「嘘?そ、それは考えなかったわね。信行の事だからあり得るかも。ちょっと尾張迄行って確認してくる。じゃぁね。」
そう言うと帰蝶は尾張の那古野城まで転移した。
那古野城は相変わらずで、天守閣は義信が先日壊したままの状態のままで尾張の兵が場内をのほほんと警備している平穏な状態だった。
「どういう事?」
帰蝶は平手政秀を見つけて事情を聴いてみる事にした。探すと直ぐに政秀は見つかった。
「爺!どうなってるの?」
「帰蝶様、お帰りですか。どうなっているとは?」
「武田が攻めてきて占領されたんじゃ?」
「馬鹿言っちゃいけません。占領される訳がありません。まぁ、攻めてきてもいませんが。」
「はい?どうなってるの?騙された。爺、銃を4丁ほど持ってきて。弾も。」
「承知しました。帰蝶様は女性なのですからあまり無茶はなされないように。」
「分かってるわよ。リュックに入れて持ってきてね。」
帰蝶は銃を受け取った後、信秀がいる末森城へも行ったが平穏この上ない状況だった。だとしたら未だ駿府城を占領した状態で、攻めて来ている途中か。そう思い駿府城へと転移したがここも平穏な状態だった。門番に聞いてみることにした。
「ねぇ、武田は攻めてきていないの?」
「あれ?これは鬼嫁様、お久しぶりでございます。先日は城を救って頂きありがとうございました。ここに武田は攻めて来てないですよ。ただ、長篠近辺に武田の兵が出没したようで
「そうなんだ。分かったわ。長篠へ行ってみるわ。」
「あの、御屋形様は未だ京都でしょうか?」
「あー、ごめんなさい。ここに伝えるの忘れてたわ。義元さんと奥さんの花さんも武田の
「晴信様と一緒に捕らえられてるのですか。心配ですね。鬼嫁様、また御屋形様をお救い下さい。よろしくお願いします。」そう言うと兵士は慇懃に頭を下げて来た。
帰蝶は会話を終えると長篠城の上空へと転移した。見回すと長篠城をかなりの数の武田の兵士が囲んでいた。銃を持っている兵士がいる。が弾が尽きたのか、温存しているのか銃撃の音は聞こえない。しかし、長篠城の周りが真っ赤に染まっている。甲冑を赤く揃えているのは血が流れても流れた血で戦意を喪失しない為なのだろうか、でも、赤い甲冑は格好良いなと帰蝶は考えながら長篠城の中へと転移した。
城の中の天守閣には太原雪斎がいた。
「こんにちは、雪斎さん。調子はどう?」
「これは、鬼嫁様、京以来でございますな。もう、ここは持たないかもしれません。銃でかなりの兵が殺されました。しかし、御屋形様が武田に捕らえられたというのは本当でしょうか。」
「本当よ。花さんと一緒に捕らえられてるわ。うちの旦那も。」
「そうですか。では降伏しなければ御屋形様は殺されるか、降伏しなくても、既に殺されたかもしれませんね。」
「大丈夫よ。私も一緒に捕らえられてたから状況は把握しているわ。義元さんも花さんも助けだすから安心して。これから帰って直ぐに助け出して武田に反撃するから。それと、武田晴信さんが同盟を破棄して攻撃して来たんではなくって息子が謀反を起こして攻撃してきているだけだから。同盟はまだ有効よ。取り敢えず、銃を貸すからここから指揮を執っている武将を狙って倒して。銃の使い方は前に教えたでしょ。矢とは比べ物にならないくらいの距離まで弾が届くから。敵が浮き足立ったら出撃すればいいわよ。私は躑躅ヶ崎館へ戻るから。」
「鬼嫁様、どうか、御屋形様を助け出して下さい。よろしくお願いします。」
帰蝶はその後、躑躅ヶ崎館の外のエリカがいた場所へ転移して来た。すると、エリカが察知したらしくやって来た。
「どうだった、亜里沙。」
「嘘だったわよ。エリカの言った通りだった。武田の兵士は未だ長篠城を攻めていたわよ。とんでもない能力があるように見せていただけだったわ。敵の能力が分かる能力を私も欲しいわよ。くそ―、でも、凄い力があるのは事実だから気を付けないと。それと長篠が大変だから夜まで待てない。今から脱出させるから。そしたら躑躅ヶ崎館占領作戦(改)の作戦決行。」
「どこを改造したの?」
「臨機応変を加えるのよ。」
「それって行き当たりバッタリって言うよね・・・」
「 (*^.^*)エヘッ 」
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