第46話 帰蝶死す
吉法師は大量の血が流れ出た血溜まりに倒れている帰蝶を抱きかかえた。帰蝶はまだ生きていた。
「帰蝶!大丈夫か!」
「う、うる・さ・い・・」消え入るような声で帰蝶は答える。
「もう、駄目かも知れない。お腹が痛い。痛いよ。‥こんなに・・大きな穴が開いてる・・・でも・・・もう、痛く・・・な・・・い・・・・・・」
「帰蝶ーっ!死ぬなぁ。死ぬなぁ帰蝶。」
帰蝶の全身から力が抜け、帰蝶の生命が尽きたことを物語っていた。
「帰蝶。どうして。死ぬなぁ・・・うぅ・・」
吉法師は泣いていた。
「ぷーっ、ぷぷぷっ、あーははっ、ひーーー、た、助けてぇ、し、死ぬなぁーって映画?映画なの?映画の見過ぎ?ひーーーっ、し、死ぬぅー、本当に死ぬぅ、ダーリンに殺されるぅ―、ヒーーーっ、え?泣いてるの?ひーーひひひっ、こ、殺さないで、助けてぇ―。お腹が痛い、お腹が本当に痛い、ひーひひひっ。」
お腹を抱えて大笑いする帰蝶を呆れて見つめている四人であった。
「大丈夫なのか。」
「銃で撃たれたくらいで私が死ぬわけないじゃない。」
「お腹に穴が開いてたぞ。」
「今更一個くらい増えたってどうってことないわよ。魔法でちょちょいのチョイよ。妻木ぃ、あんた覚えて置きなさいよ。私のお中に風穴開けたのよ。」
「ひ~~~」本気度怖がる妻木であった。
「き、帰蝶様は本当の鬼だったのですねー。」感心する一益であった。
「取り敢えず城の中へ戻るぞ。」
「帰りはどうするのよ、車無くなっちゃったし。」
「セスナでも作るよ。揚力で浮くから車のエンジン位の出力でも大丈夫だろ。ラダーとエルロンで制御すればいいし離着陸は垂直離着陸すればいいし。」
その後五人は今川義元の元へと赴いた。
「終わったぞ。これで三河・遠江・駿府はまたお前のものだ。絶対、三河を徳川家康には渡すなよ。徳川家康は織田信長と手を組んで俺の尾張を自分の物にするぞ、しかも、義元殿も殺すはずだ。敵の敵は味方だからこそ俺たちは同盟を結んで仲良くしなければならないんだぞ。」
「感謝するでおじゃる。同盟はお願いするでおじゃる。ところで、尾張には最近日本に入り始めた火縄銃よりも強力な武器があると聞いたのじゃが、本当でおじゃるか。」
「あー本当だぞ。これだ見てみろ。」
そう言うと持っていたアサルトライフルを見せた。
「同盟を結べばその武器を貰えるのでおじゃるか。」
「いや、裏切りが常の戦国時代だからな。誰にも渡せない。ただ、一緒に戦う時は貸与することが出来るぞ。その為に部下を尾張に派遣して訓練を受けてもらう必要があるけどな。」
「戦力が強化されるでおじゃるな。ところで、同盟の調印はどうするのじゃ。」
「今はうちの親父殿が当主だから尾張まで来てもらわないといけないな。その時一緒に京まで行くか。将軍にも会う用事あるし。」
「それは良いでおじゃるな。ではなるべく早く尾張まで伺うでおじゃる。」
「じゃぁ、一月後くらいに尾張まで来てくれ。」
「分かったでおじゃる。」
「よし、帰蝶帰るぞ。そう言えば高名な僧の太原雪斎殿はおられるか。」
「あいつは、信行の言いなりだったでおじゃるぞ。大丈夫かの。」
「操られていただけだ。大丈夫だ。多分これまで通りだと思うぞ。それでは帰るぞ。帰蝶、お前が持っていた拳銃頂戴。」
「どうするの?」帰蝶は持っていた拳銃を吉法師に渡した。
「義元殿、これで自分の身を守れ。使い方は外で教えるぞ。」
「銃を貰えるでおじゃるか。ありがたいでおじゃる。」
「義元さん。武田信玄と仲が良かったよね。一度吉法師が会いに行くと手紙で伝えておいてね。銃の事も話していいわよ。出来れば同盟を結びたいって。」
吉法師の仕事を勝手に増やす帰蝶であった。
「そうだな。武田も信長の敵だ。敵の敵は味方だからな。仲良くしてて損はないな。」
「 (* ̄ ̄ ̄ ̄ー ̄ ̄ ̄ ̄)フッ 相変わらずちょろいわ。ちょろね、ちょろちょろね。さ、帰るわよ。先ずは一益の自宅へ行くわよ。妻木、あなたは私を背負いなさい。私を殺したでしょ。」
「ひ~~~!」涙目で怯える妻木であった。
吉法師達は徒歩で一益の自宅へと歩き続ける。既に日は昇り次第に暖かくなり始めている天文十三年の初春の季節のとある一日であった。
帰蝶は妻木の背中でぐっすり寝ている。時折、お腹を押さえお腹に痛みがあることを物語っていた。当然それは重機関銃の被弾によるものではなく笑い過ぎによるものであった。
お昼前に吉法師御一行様は一益の自宅に到着した。
「おーい、昼飯作って。」
言ったのは当然一益。
ではなく、我家の様に振る舞う帰蝶であった。
「ご飯食べたら寝るわ。ダーリンは飛行機作ってね。アルミニウムで作るの?川を滑走路に出来るように作りなさいね。あ、滑走路は必要ないんだったわね。お昼何?魚?肉にしてよ。」
「帰蝶、よその家で我儘言うな。」
「私の部下の奥さんなら私の部下でしょ。」
「いや、部下ではないぞ。」
「兎に角、私は血を流し過ぎてお腹が減ってるの、妻木、直ぐに猪捕まえて来なさい。ダーリンのアサルトライフル貸してあげて。いい30分よ。早く行って。」
「帰蝶様、『さんじゅっぷん』とは何でしょうか。」
「
「ひ~~、は、はい、行って来ます。」
「あ、珠も連れて行っていいわよ。」
「駄目だ!珠は俺の膝枕だ。」
「はい?愛人制度中止するわよ。それにあなたは飛行機を作るんでしょ。」
「すいませんでした。」素直に謝る吉法師であった。
妻木は珠を連れてアサルトライフルを持って山の方へと向かって行ったのであった。
未だ初春の駿府の、山から涼しい風が吹く湿気もない、からっとした過ごしやすい午後であった。
そして、
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