第45話 今川義元を救出する吉法師

 次の日の朝、一益の奥方が朝食を用意して寝ている皆を起こしてくれた。


「ご飯が用意出来ましたよ。起きてください。」


「あーも―、寝たりないわね。ってちょっとダーリン、何、珠に抱き着いて寝てるのよ。そりゃ私より胸も大きいし抱き心地も良いかもしれないけどそれはちょっと妻に対して失礼よ。珠を愛人一号にするつもり?一体何号まで作るの?まぁ戦国だし、味方を作るという意味でも愛人一杯作って子供も沢山作るべきかもしれないけど、未だお前は子供だろ!まだ早い!」


「もう、煩いぞ帰蝶。子供が母親に抱きついて寝てるようなもんだろ。今日、夜から行動開始するぞ。だから一日のんびり過ごすぞ。敵兵来たら隠蔽魔法だな。じゃ、寝るぞ。珠膝貸せ。」


「はい。どうぞ(⌒-⌒)ニコニコ 」


「珠、何よその笑顔は?ダーリンは下心見え見えよ。」


「帰蝶怒るな。だったら帰蝶が膝枕してくれ。」


「嫌よ、何で私が膝枕するのよ。」


「妻だろ。一番愛してるのはお前だよ。」


「は?それって他にも愛してる女がいるって事じゃない。珠、そこで照れない!」


「(///ω///)テレテレ♪」


「私は今から車回収して来るから。あなた達は釣りでもしてお昼ご飯を確保してなさい。」



 そして、夜がやって来た。

 外は下弦の月が出始めたところで深夜12時を過ぎた辺りだろうということが窺える。

 駿府城は見張を除いて眠りについているだろう。


「計画はこうよ。」


「帰蝶なんでお前が仕切る。」


「私に任せなさい。私は、あいつのマインドコントロールの魔法を封じる魔道具を持っているわ。これであいつに近づくことが出来る。」


「おい、あいつはもうマインドコントロールできないぞ。義元も操れていなかっただろ。」


「え、そうよね?でもそれじゃ、なぜ、義元を排斥してその他の武将や兵士たちを自分の部下のように使えたの?それって、単に義元をマインドコントロールで操ることが出来なかっただけなんじゃないの。」


「そうか、義元も帰蝶が持ってる魔封じの魔道具を持ってたんじゃないのか。だからマインドコントロールが効かなかったんだろ。俺達も帰蝶がその魔道具を持ってたから奴のマインドコントロールが効かなかったのかもな。」


「そう考えると納得がいくわね。よしそれじゃ、潜入、救出は私とダーリンの二人で。愛人一号・二号と一益は銃を持って門の側で待機。銃は車からアサルトライフル持って行きなさい。」


「帰蝶様、私が愛人二号という事でしょうか。」


「そうよ、妻木。あなたが愛人二号よ。早くダーリンの子供作りなさい。まだ早いけど。」


「w( ̄Д ̄;)w・・・・しょ、承知致しました。」


「妻木、嫌そうな顔しない! そこ、ダーリン、にこにこしない。」


「(#^.^#)ニコニコ、へ、そうか?」


「さぁ、行くわよ。車に乗り込んで。」


 五人は真夜中の駿府をお城へと向かって走り出した。当然、川は渡れず橋の無い狭い所を車を空中に浮かべて通過した。

 駿府城まで来ると車を隠す場所を探す。そして、駿府城手前に空き地を見つけ、そこに車を止めた。


「三人はここで銃を持って待機。ねぇ、ダーリン。携帯電話作ってよ。」


「無理、信行なら作れるんじゃないか。」


「じゃぁ、作ってもらってよ。兄弟でしょ。」


 二人は車を出て、夜の闇に紛れて堀の橋が無い場所から浮かんで塀を越え駿府城の中へと入って行った。

 駿府城の中は下弦の月がある程度上昇した為に薄暗く見える程度には明るいが突然の襲撃など思いもせぬようで、何らの警戒も無く静まり返っており兵は門にいる門番だけであった。

 吉法師と帰蝶は認識阻害の魔法を掛けた上で今川義元が捕らわれていた部屋のある建物へと向かいできるだけ陰のある場所を歩いて行く。


「どうして木陰を選んで歩いて行くだ?」


「雰囲気よ。スパイ映画みたいでしょ。」


「それと、銃を顔の前に持ってくると危ないぞ。」


「それも雰囲気よ。どうせ使わないわよ。先行くわよ。付いて来て。」


 建物には鍵がかかっていた。吉法師が鍵を壊して中へ侵入した。二人の兵が巡回していたが帰蝶が眠らせる。


 二人は義元が捕らわれていた部屋の前へとやって来た。鍵を壊して中へ侵入する。


「おい、起きろ。義元殿。」


「ん?お主は?なんでここにいるでおじゃる?」


「助けに来たんだよ。俺と同盟結んでくれるんだろ?」


「わ、分かったでおじゃる。無事助けてくれて、あの信長を倒してくれたら同盟を結ぶでおじゃる。」


「よし。ただ、あいつは信長じゃない信行だぞ。」


「ねぇ、ところで、あなたもこれと同じ魔封じの魔道具持ってるんでしょ?」


「持ってるでおじゃるよ。これで身を守れると言っていたでおじゃる。」


「やっぱりね。」


「それで信行は何処にいる?」


「分からない。見えないわ。この魔道具がジャミングしてるみたいね。」


「以前、殺したと思ったのも魔道具で勘違いさせられたのかもな。兎に角探さないと。義元殿を連れだして逃げても何も変わらない。義元殿、ここにいろ。絶対その魔道具を離すんじゃないぞ。」


「分かったでおじゃる。だがなぜお主はそんなに偉そうなのでおじゃるか?」


「そうなの、この人本当に偉そうなのよね。」


「お、お前にだけは言われたくないぞ、帰蝶。」


「ん?おかしいわ。」


「何が?」


「愛人軍団が動いてる。何かあったのかも。」


「一度車に戻るぞ。」


 二人は周囲を警戒しながら可及的速やかに建物を出て堀の手前の門へと走って辿り着きかんぬきを外して門を開けた。

 門から見える橋の先に車が止まっている。屋根の上には妻木が車の屋根に設置されている重機関銃を構えたいた。


「おい、兄上、残念だったな。いつもいつも俺に先手を打たれるな。頭悪いんじゃないのか。俺が魔道具が使えるって知ってるだろ。」


 銃を構えた妻木の隣に現れた信行だった。


「あ、そうだ。信行。お願いがあったんだ。スマホとは言わないけど携帯電話作ってくれないか。トランシーバーでもいいぞ。」


「誰が敵の為に魔道具を作るんだ。阿呆か!」


「だったら、お前が俺の部下になればいいだろ。」


「嫌に決まってるだろ!それなら、お前が俺に部下になれ。」


「いやだね。交渉決裂だな。」


「おい、女。二人をその銃で撃て。」


 信行は隣にいる妻木に命じた。


 ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ・・・


 低い重低音の発射音がそれほど早くない速度で連射され吉法師と帰蝶を攻撃し始めた。


「シールド!」


 吉法師はシールドを魔法で前面に作り出し弾を防いだ。


「おい。転移魔法で三人を転移できないか?」


「多分出来ると思うわ。」


「そしたら、車ごと信行を爆発させろ。」


「分かった、転移!」


 すると、射撃音が止んだ。


「何だ?何が起こった?女はどこ行った?」


「エクスプロージョン!」


 すると車が大爆発を起こした。発生した爆風で周囲の家を巻き込み倒しながら。橋も消えてしまった。道路には小さなクレーターが出来ていた。


「帰蝶。三人は何処だ?」


「後ろの曲輪にいる。」


 吉法師が後ろを見ると口を開けたまま消えてしまった車があった場所を見ている三人がいた。再び前方を見ると帰蝶がいない。下を見ると帰蝶は血の海の中に腹這いに倒れていた。背中には見てはっきり分かるほどのでかい穴が開いていた。50cal.の弾丸が貫通したことが窺えた。


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