第3話バイトするなら・・・・・

 今後の方針を決めた吉法師は村を歩きながら考える。先ずは人材集めだ。優秀な人材を集め自分の手足としてこき使う。幸い俺は城主の息子だ。ある程度の我儘はまかり通るであろうことは承知している。すると傅役である家老の平手政秀が追い掛けて来た。


「若様。勉強の時間です。学習を疎かにすると知識が無いバカ殿になりますぞ。」


「爺、お前の教える馬鹿な考えや昔からの伝統なぞ覚えるに値しない。あまりにも非合理的だ。現にお前らは俺の言う事を理解できないだろう。放っておいてくれ。」


「何を仰るのですか、そんな事ばかり言ってるから、うつけと呼ばれとりますぞ。」


「それがどうした。馬鹿にうつけと言われて何を気にする。お前は豚になぜ残飯を食わない、馬鹿だなと言われて豚に腹が立つのか?残飯を食わない理由があることを人間は理解しているからこそ腹も立たない。つまりお前らはそんなことにも気づかない豚という事だ。」


「また訳の分からぬことを。それでは本当にうつけと言われても仕方ないですぞ。」


「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんやというやつだな。呆れて話す気も失せるわ。」


「若、本日は鷹狩りですぞ。」


「何?鷹狩り?なら行くぞ。何処だ。馬で連れていけ。」


 政秀は後ろに吉法師を乗せ鷹のいる禽舎まで連れて行った。禽舎には既に鷹を飼育し訓練する人々が整列し若様を出迎えようとしている。


「こいつらが鷹匠か?」


「はい、その通りで御座います。この者らが鷹を育て訓練した鷹を若様他殿様や家来の物が鷹狩りに使用します。」


「鷹を持ってこい。」


 鷹は吉法師を睨みつける。じっと睨みつける。鷹はよく訓練されているようで人間に対し怯えも見せず驚き飛び立とうともしない。


「こちらが、鷹狩りに使うオオタカで御座います。」


「胸の横縞がかっこいいな。前から飼ってみたかったんだよ。一匹呉れ。自分で育てる。」


「若様がお育てになるのですか。」


「もちろんだ。」


 吉法師には考えがあった。魔法が使える吉法師はテイムの魔法で懐かせることが出来ると考えていた。


「それでは来年までお待ちください。来年春ごろに鷹は卵を産みます。その卵が羽化する頃から育てれば良く懐きます。」


「おっ、インプリンティングと言うやつだな。」


「な、なんですかな?」


「では来年まで待つぞ。孵化する頃に俺の所まで持って来い。褒美を取らせるぞ、父上が。」


「若様、我儘ですな。」


「爺、何を言うとるのじゃ。若様が我儘でなくて誰が我儘になれるのじゃ。よし、今日は帰るぞ、爺。」


「はっ、城までお連れ致します。」


 馬上、吉法師は考えた。


 は?バイト探しは・・・・


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