第2話 誰だよそれ

 四郎は考えた。

 信秀?誰だよ、それ?織田って信長しか知らないよ。と考えたが、当然生後数日であるために言葉にはできない。

 動けないが、魔法は使える。そうだ魔法が使えるんだ。訓練すれば魔力が強くなるのではないか。それがセオリーだ。しかし、けっぽーだかウンピョウだか変な名前だった。また呼ぶだろう。一度じゃ覚えられない。しかし魔力はどうやって使うんだろうと考えながら吉法師は周りを見回していた。

 すると布団が捲れていた。魔法が使えるのならこれも戻せるのではないのか。もし呪文でも詠唱する必要があれば言葉がしゃべれない今はどうする事も出来ないが詠唱が必要ではないなら今でも動かせるのではないのだろうかと考え、頭の中で布団を動かす事を考えた。

 すると捲れていた布団が動いたではないか。

 魔法は詠唱は必要ではない。ただ考えれば動く。よし毎日訓練しよう。そして魔力を高めよう。などと考えならが疲れ果て眠りについていった。


 そして、5年の歳月が流れた。


 5年の月日は吉法師に巨大な魔力を与えた。

 最早、牛位なら持ち上げることが出来るし、火の玉も飛ばすことが出来る。その他にもある程度の魔法が使える。

 吉法師は5年で色んなことを知った。この国が尾張と呼ばれていること、隣に美濃がある事。美濃とは仲が悪い事。

 そして、自分が織田弾正忠家の嫡男である事。

 そして、この織田家にあの織田信長がいる可能性がある事を知った。

 ただ、俺は歴史には詳しくはない。未だ信長がいると決まったわけではない。信長の父親の名前など知る訳が無いし、近所に織田さんは沢山いる。

 色々な知識を平手と言う爺さんが色々教えてくれる。

 しかし、前世の記憶がある俺が勉強をする必要はない。嫌だと言っても無理に勉強を押し付ける。俺の方が知識があるんだと説明する。例えば数学。例えば宇宙の知識。色々説明する。しかし平手さんは何訳の分からない事を仰ってるのですかと馬鹿にして来る。否、お前が理解できないだけだ、馬鹿にバカにされる気分が良く分かったと吉法師は自分を理解する事の出来ない遅れた世界に辟易し始めていた。

 特に彼を苛立たせたのは宗教だ。応仁の乱から続く戦乱の世界で人々は宗教に救いを求め、そして宗教は力を付けて行った。宗教がまるで独裁国家の様に振る舞うこと。そして周りの国が宗教だからとそれを看過していることが許せなかった。

 彼はこの国に対しての不満が募って行くのを感じていた。


 特に感じた巨大な不満がある。

 それは、この国には金髪の美人がいない事だ。これでは異世界名物の金髪美人によるハーレムが作れないではないか。何のために異世界に来たのか、もしかしたら騙されたのかと彼は5歳にして考えていた。


 もし自分が信長であった場合、待っているのは殺される未来だ。これだけは回避しなければならない最優先事項だ。

 しかし、それはこの国にいた場合だ。この国には金髪美人がいない。それなら、この国を出て金髪美人のいる北欧に行けばよいのではないのか。しかしただ、北欧に行ってもハーレムなど作れないだろう。だとすればこの国で戦力を作り北欧に攻め込むべきなのではないのか、かつてチンギスハーンがやったように。

 そうだ、俺はチンギスハーンになるんだ。まず尾張を纏める。次に国を纏める。そして中国へ進出しシルクロードを征服しながらヨーロッパだ。幸い、俺には未来の知識がある。この国にはもう直ぐ銃を作る技術が出来る。その技術と未来の知識でアサルトライフルやロケットランチャーなどの近代兵器を作り上げる。夢は北欧だ。俺はチンギスハーンになる。先ずは自分の右腕となる腹心の部下になるやつを集めないといけない。しかし今はインディードもバイトルアプリもタウンワークも求人雑誌も無い。自分で見つけなければいけない。頑張らないと。男の原動力はいつだって性欲だ、ハーレムだ、その為に男は行動するんだ。


 吉法師は5歳にしてスケベだった。


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