短編ドラマシリーズ「ゲーマー・サバイバル物語3」

溶融太郎

西暦4000年、世界の機器は進化を極め、言葉を発しなくても自ら考え行動出来る様になった。人間並みに繊細な思考を持つ彼らは、医療、政治、文化、生活、産業、あらゆる分野で大いに役立ち、最早無くてはならない存在になった。しかし、進化を極め過ぎた彼らは意思を持ち始め、世界を蹂躙し始めた。この事態を重く見た世界の政府は、RPG方式にてウイルスを破壊できるシステムの開発に成功。

政府は各地のゲーマー達を集め、高い賃金で雇い入れた。これに志願したブラッド・ホークもまた、1人のゲーマーである。




「テレビ見れなくて超ー困るー。」

そんな見知らぬ女子の声を聞きながら、ブラッドは政府の建物に向かっていた。

テレビ局にウイルスが侵入し、テレビが見れなくなってしまったのだ。ニュースや天気予報、何気なく見ている者も沢山いるだろう。ブラッドは、怒り心頭だった。

第1話から欠かさず見ていたドラマ「初恋、告白、行って恋!」が見れなくなってしまったのだ。数々の困難を乗り越え、まさに男女のクライマックスを迎えようとしている次回を、見逃す訳にはいかない。待っていろ・・・俺が必ずくっつけてやる・・・ブラッドは使命に燃えていた。今日は月曜日だ、ドラマの放送がある金曜日までにはクリアしなければいけない・・・ブラッドの心は加速する。

「志願しました。ブラッドです。」

ブラッドは、政府の建物内を通され、ソファのあるスペースに案内された。

「ブラッド様!待っていましたよ!」

そう声をかけて来た男は、政府の者のウィリアムだ。ブラッドは、これまで2回程ゲームクリアの実績がある。期待しているのだろう。ブラッドとしてもテレビドラマがある。利害は一致だ。

「では、システムの確認をいたします。先ず、ブラッド様の意識をゲーム内に飛ばします。ゲーム内でケガをされても、現実のブラッド様の体は傷付きません。

ゲーム内に入りますと、現実世界の記憶は無くなり、ウイルスとなるラスボス撃破の後に、現実世界の記憶を戻します。システムはほとんど変わっていません。

ここまでよろしいですか?」

ブラッドは頷いた。

「ラスボス撃破後、2日間の猶予を持って現実世界に戻します。ゲームクリアでもリタイアでも、ゲーム内の記憶はありません。ゲームクリアの意思が無いと判断した場合も現実世界に戻します。リタイアの場合は1日分の日当を。ウイルスとなるラスボス撃破の場合は報奨金を支給致します。今回は、こちらからジョブを指定させていただきます。ブラッド様、アナタのジョブは、学者です。」

ウィリアムはそう言う。・・・学者!!これまでガテン系の仕事ばかりしていたブラッドは、頭脳系労働に憧れていた。・・・学者かあ・・・カッコイイじゃないか・・・・ブラッドは、悦に入った。

「では、コンピュータールームへ行きましょう。」

ウィリアムとブラッドは、コンピュータールームへ向かった。3回目ともなれば

慣れたものだ。ブラッドは、自分からベッドに横たわる。

「準備はよろしいですね?では、行ってらっしゃい・・・・」

ブラッドは、深い眠りについた・・・・




「ザザーン・・・ザザーン・・・」

ブラッドは、波の音に目が覚めた。日差しが眩しい。ここはラステル国のリゾート地、ライグルの街だ。ブラッドは、ビーチチェアに横たわり自由気ままに暮らしていた。既に学者として成功し、何の不自由も無い暮らしだ。

「博士、仕事の依頼が来ています。」

ブラッドの秘書が声をかけて来た。しかし、ブラッドは首を振る。もう金などあっても仕方ないのだ。ブラッドの家はビーチの目の前にあり、扉を開けばすぐリゾート地だ。この誰もが羨むような生活だが、ブラッドはもう飽き飽きしていた。人間、全てを手に入れると無気力になってしまう。今のブラッドが正にそうだった。

「キャハハハハ!!」

バカンスに来ているだろう人々の笑い声も、最早、うっとおしいだけの物に感じる。・・・だが、やりたい事など見当たらない・・・毎日が退屈だった。

「オース・・・」

1人の男が声をかけて来た。その男はレイドンという。レイドンは科学者で、ブラッドと同じように成功し、いつもの様にビーチチェアを持参しては、ボーっとする。ブラッドにとっては、似たような友人がいる事が、唯一の救いだった。

「何か面白い事はないのか・・・」

レイドンの声をブラッドは無視する。これが、永遠とも思える日常だ。

「・・・・・・・」

今日もまた、無意味な時間が流れていく・・・・太陽を見送るのが、役割の様にさえ思えてくる。不老不死じゃなくて、本当に良かった。

「じゃー、帰るわ・・・・」

レイドンは家に帰った。ブラッドも、モソモソと帰る。寝て食べて半分寝て食べて・・・・ああ、そうだな、俺のジョブは、暇人だ・・・・何故か、体も重くて辛い・・・でも、働いても仕方ない・・・ブラッドは、この世界を地獄の様に思っていた。




翌朝、ブラッドはビーチにいた。何故ここに来るのか、自分でも分からない。

家も外も暇地獄なら、せめて動く物を見ておきたいのだろうか?自問自答する。

太陽が、また暇人を見下ろしている。

「ブラッド!面白い物を見つけたぞ!」

振り返ると、レイドンがいた。貧乏人が一攫千金を手にした様に興奮している。

「これを見てくれ!!」

レイドンは、何やら設計図面を開いて見せた。・・・湾曲渡航修正機能?西暦座標自動追跡型ナビゲーションシステム・・・時空間航行機・・・。これは・・・

「ブラッド!お前なら分かるだろう!!これは、タイムマシンだ!」

ブラッドは目を丸くした。

「タイムマシン!?」

ブラッドは、久しぶりに大きな声を出した。タイムマシンなど、随分昔から聞き覚えはあるが、未だに発明されていない、想像の産物だ。

「俺の家の蔵から出て来たんだ!ヒーヒー爺さん位のもんかな?全く、ヒーヒーさせるぜ!!」

レイドンは、別人の様に生き生きしていた。少し眩しく見える。

「ブラッド!一緒に作ろうぜ!タイムマシンを!」

レイドンはそう言う。タイムマシンなど作れるのだろうか?・・・いや、やる事が出来た!助かった!!ブラッドは、目に力が戻った。

「やろうぜ!レイドン!!どうせ暇だしな!!」

2人は、ガッチリ手を組んだ!




「ガラガラガラガラ!」

レイドンはガレージを開いた。

「俺の家のガレージを使おう。大体何でもある。楽しみだなあ!」

レイドンは元々、車いじりが好きだった。だが、それにも飽きてしまったのだろう。ガレージの中は、放置された状態だった。

「先ずは掃除からだな・・・掃除機持ってくるわ。」

レイドンは奥の方に姿を消した。ブラッドは、ガレージの電気を付けた。冷たく武骨な壁に囲まれている。見回すと、色々な機械が並んでいる。ブラッドは胸が高まった!ここで作業して下さいと言わんばかりに道具が揃えられている。どんなタイムマシンが出来るのだろうか?ワクワクして仕方ない!

「ブアーン!!」

レイドンは口で掃除機の真似をしながら戻ってきた。

「おいブラッド、知ってるか?最近の魔女は、掃除機で飛ぶんだぜ!?」

レイドンは掃除機にまたがる。確かに、どこかで見た様な気がする。ブラッドも掃除機にまたがった。

「こちらブラッド!出撃する!!」

ブラッドは、腰をコスコスした。

「ギャハハ!やめろブラッド!!オレんチの掃除機だぞ!」

「こちらブラッド!レーザー汁を発射する!」

「するなー!!ギャハハ!!」

いつの間にか、2人は昔の様に笑っていた。そして、2人はガレージを掃除した。

「良し、こんなもんだな。作業は明日からにしよう。朝から来てくれ。」

気が付くと、すっかり日は傾いていた。ブラッドはレイドンにまた明日と言い、自宅に戻った。心地良い疲れを得たブラッドはいつの間にか、寝落ちしていた・・・




「オース!」

ブラッドはガレージに入った。

「ういー。」

レイドンはコーヒーをすすりながら、壁に貼った図面を眺めていた。

「先ずは、骨組みからだなー。今の所、カーボン素材が最有力だなー。」

レイドンはそう言う。こーゆーのは、レイドンの方が詳しそうだ。

「良し、まずはカーボンを細く切断しよう。」

レイドンの指示により、2人は作業を始めた。

「ギュイーン!」

2人は、ノコでカーボンを切断し、機械で半円にノシた。

「骨組みの材料は出来上がりだ。これをこうして・・・」

レイドンは材料を並べていく。

「あれ?レイドン。力学からして、こうした方が強いぞ?」

ブラッドは、手書きの図面を作成した。

「あーそうか!ブラッド、さすがだなー!」

今度はブラッドの指示により骨組みが出来上がった!

「おお・・・骨組みだけで、既にイカしてんぞ!こりゃあ・・・すげえモンが出来そうだ!」

2人は胸がときめいた!

「よし、次はボディの素材だな。ブラッド、高熱にも耐えられる素材がいい。何かいい案は無いか?」

レイドンはブラッドに尋ねる。

「それなら耐熱材料のセラミックスがいい。スペースシャトルにも使われている。」

ブラッドは、ズバッと即答した。

「セラミックス!いいなそれ!大気圏も突入出来そうだ。何なら陸、海、空、更に海底、宇宙、全部行ける様にするか!!」

レイドンは無茶苦茶、言い始めた。

「神ってんなそれ!!やっちまおう!!」

ブラッドも悪ノリで承諾する。かくして、悪ノリ作業が始まった。

「よーし!ボディが出来上がったぞ!カッコよく黒の塗装を施すか。ブラッド!そっち側を頼む!」

2人は、ボディを塗装し始めた。男の乗り物は黒、何故かこうなる。

「フフフーンフフーン。」

レイドンは反対側から鼻歌を歌い始めた。ブラッドは、はっとした!

「おい!レイドン!お前、ラリってないか!?しっかりしろ!!」

レイドンは我に返った。

「は!!危ねえ!シャッター開けろ!!外に出るんだ!」

2人は急いで外に出た。

「あー。あっぶねー・・・おお・・・少し遠くから見たら、マジでいかしてんな・・・・」

2人は外から作りかけの機体を眺めた。更にワクワクする。

「外はもう日が落ちてんな。もうこんな時間かー。続きは明日にしようぜ。」

ブラッドは作業を終えて、家に帰った。




「オハヨーさん。」

ブラッドは、ガレージに入った。

「ういーす。」

レイドンは何やらゲームをしている。

「何だ。古いゲームしてんなー。それ、ツインミーだろ。昔やったぜ。」

ブラッドも、イスに腰かけた。

「飛行機飛ばす練習だ。ブラッド、ツーコン取れよ。2人プレイだ。」

ツーコンとは、2人プレイ用のコントローラーの事だ。今でもそう呼ぶのだろうか?ブラッドは、ツーコンを手に取った。

「よし!赤でバリアだ!」

ツインミーはスズを撃つと色が変わり、機体の装備が変わる。昔、大流行したゲームだ。

「あっ!腕が取れた!救急車、救急車。よーし。・・・出た!牛乳瓶!1UPだぜ!」

今の2人は、体の大きな子供だ。昔と同じ所でゲームオーバーした。

「フーッ。続きやるか・・・」

2人はまた、作業を始めた。ボディを黒く塗装し終わった。

「次は、いよいよコクピットだな。計器類を運び込もう。」

コクピットは、まさに男の城だ。幾つも並べたタコメーターに配線を繋げる。

「バッテリーの電源入れるぞ。」

レイドンは、バッテリーの電源をONにした。コクピットが、美しい輝きを灯す。

「・・・・ヤベエ・・・痺れちまった・・・」

2人の時は止まっていた。血液が通ったコクピットは、男のロマンだからだ。

「早くエンジンを組み込もう!!」

タコメーターが躍動し、ジェットエンジンが吠えて振動を起こす・・・見たい・・・その光景が見たい・・・その想いが2人を突き動かす。

「エンジン乗せるぞ。よっこいせ・・・」

エンジンを組み込み、配線を繋いだ。

「イグニッションするぜ?」

機体を固定し、レイドンは、エンジンを可動させた。

「キィィィィィン・・・」

飛行機特有の機械音が鳴り始めた。レイドンは、出力を上げる。

「バババババ!!バババババ!!」

ジェットエンジンが火を吹く!

「すげえー!!かっけー!!」

2人は目を輝かせた。

「コクピットに行こう!」

コクピットに乗り込む。エンジンの出力を上げる度に、タコメーターの針が上昇する。

「すげえー!!すげえー!!」

2人は、はしゃぎまくる。エンジンを止めると、静寂が訪れた。

「よーし!とりあえずは、飛行機になったな。羽を収納すれば車、スクリューを回せば船、潜水も出来る様に、改造しよう。」

2人は図面を書き上げ、理想の改造を施した。悪ノリで始めた作業だったが、段々とイメージに近づいてきた。

「よーし!今日はここまでだな。しかし、大分、形になってきたなー。コイツに名前を付けよう。何か、鳥っぽい名前がいいな。」

レイドンはそう言う。

「ウーン・・・・フェニックス、ホーク、スワロー、コンドル、ペリカン、ガルーダ・・・・」

ブラッドは、ツラツラと提案する。

「ガルーダ!!・・・ガルーダがいい!!」

レイドンはピンと来た様だ。

「よし!お前はガルーダだ!ヨロシクな!ガルーダ!!」

レイドンは、ガルーダの機体をペシペシと叩く。

「じゃ、ブラッド、また明日な!」

ブラッドは家に帰った。




「おーはよーさん。」

ブラッドはガレージに入った。

「おっ!待ってたぜ!ガルーダの燃料は、特殊なバイオ燃料だ。しばらく分は持つが、どうしようかと思ってな。」

レイドンは図面の前にいた。

「あー・・・このバイオ燃料か・・・昔は山程、あったらしいがなー・・・」

ブラッドは、顔をしかめた。

「最近は手に入らないんだよなー・・・ん?昔?そうだ!ガルーダは、タイムマシンだろ!過去に戻って補給すればいいじゃないか!」

レイドンは、朝から冴えていた。

「それもそうだな!いけるいける!」

ブラッドも楽観的だ。

「でも!先ずは未来が見たいよなー。そうだろ?ブラッド。」

ブラッドは、笑顔で頷いた。

「よーし!ジーサンの図面道理に、時空間航行装置を作ろう。」

レイドンは、別ページの図面を開いた。

「ん?特殊なオイルが必要だな。ブラッド、作れるか?」

レイドンはブラッドに尋ねた。

「うーん・・・コイツとコイツを混ぜ合わせて・・・・」

ブラッドは、硫黄と過酸化水素水を混ぜて、加熱した。

「ボン!!」

爆発を引き起こした。

「・・・今のは、ダイナマイトを作る実験だ・・・キュー、バタン!」

ブラッドは、頭をチリチリにして倒れた。顔が真っ黒だ。

「大丈夫かブラッド!?お前、そのリアクションちょっと古いぞ!!」

レイドンは少し笑っている。ブラッドは、諦めずにオイルを作り出した。

「よし!時空間航行装置も完成だ!組み込もう!」

2人は装置を組み込んだ。

「よーし!マジでガルーダもサマになってきたなー。この辺で祝杯でもあげようぜ!」

レイドンは、ガシャガシャと酒を運んできた。

「では・・・俺達とガルーダに乾杯!!」

2人はガブガブと酒をあおる。

「後は、ガルーダに武器を搭載しよう。男のマシンは戦えないとな!」

レイドンは、ガルーダに変な改造を施したがる。

「ういー。ミサイル撃てるようにしよう。敵をぶっ飛ばすんだ。ヒック!」

ブラッドはまた悪ノリで快諾する。

「マシンガン搭載してよ。ウィ!戦場を駆け抜けるんだ。ヒーック!」

ベロンベロンに酔ってきた2人はガルーダに武器を搭載し始めた。

「両翼に・・・ヒック!・・・ミサイルと・・・ランチャーと・・・ヒック!」

「ギャハハ!レールガンも鼻先につけようぜ!ヒーック!」

「マジでいかしてんな!ギャハハハハ!ウイーック!」

千鳥足でガルーダに武器を装備していく。

「出来た!最強だ!・・・ウプ・・・オエ!オーエ!!」

「ブラッド!ここで吐くなよ!!俺まで・・・オロロロロロ!!」

「ギャハハハハ!レイドン吐いたー!!」

「ギャハハハハ!くっさ!ゲロくっさ!!シャッター開けろ!!」

その後、ベロベロの2人は、ガルーダに体を預けて眠っていた。





「オハヨーさん。」

ブラッドは翌朝、ガレージに入った。

「オハヨーさん。頭いてーな。痛つつ・・・」

2人は二日酔いになりながら、ガルーダを見つめている。

「完成だな・・・」

美しく機体を輝かせて、ガルーダは佇んでいる。2人共暇つぶしになればいいと思っていたが、今はガルーダを誇りに感じていた。

「とりあえず、作業はこれで終わりだ。ブラッド、先ずは未来に行って、先輩面してやろうぜ!!」

レイドンはそう言う。

「いいなそれ!未来はどうなってるんだろうな!?今度こそ、車が空を飛んでんのかな!?」

ブラッドもノリノリだ!想像する未来は胸を膨らませる!

「今が2020年だ。3000年に飛んでみよう!」

2人は計画を練り始めた。次第に二日酔いも引いていく。ガルーダの大きさは8人乗りのワゴン車位だ。数人乗れれば十分だ。計画も練り終わり、2人はコクピットに乗り込んだ。ガルーダをガレージから出し、収納した両翼を広げた。

「よし!ガルーダ出発だ!」

ガルーダは大空に舞い上がった!

「時空間航行装置オン!!」

「バババババ!!!」

ジェットエンジンが更に火を上げて、マッハに達した!

「行くぜ!!未来に!!」

ガルーダは、2020年から姿を消した・・・・




「シュン!」

ガルーダは姿を現した。ここは西暦3000年、未来の地球だ。ガルーダは、草原を見下ろしていた。

「ほえー。自然がある景色は特に変わらないなー。着陸してみよう。」

レイドンはそう言いながら、ガルーダを着陸させた。

「これが未来の景色かー。実感湧かないなー。おっ!あそこに街らしき建物があるぞ!行ってみよう!」

2人は、胸を躍らせて駆けだした。

「・・・・何だ・・・こりゃ・・・」

街に辿り着いた2人は呆然と立ち尽くした。そこは、廃墟の街だった。

「何があったって言うんだよ・・・・」

瓦礫の中を進んで行く。人の気配など一切しない。想像していた未来とは、大きくかけ離れた世界だった。

「ブラッド・・・どう思う・・・?」

そう聞かれても、首を傾げるばかりだ。崩れ落ちた建物には看板などが横たわり、かつての賑わいが名残を残していた。

「あっ!新聞があるぞ!」

レイドンは、パリパリになった新聞を拾い上げた。

「地底より魔王軍襲来!?軍隊も歯が立たず・・・・」

レイドンは、新聞の一面を読み上げる。

「何だ、魔王軍て?これ、まじか?」

2人は、また廃墟の街を見渡した。否応なしにその事実が浸透してくる。

「じゃあ、この街は、魔王軍てのに襲われたのか・・・?」

2人に突き付けられた現実は、厳しいものだった。

「グギャアアアア!!」

突然の咆哮に2人は驚いて振り返った!

「な・・・何だコイツ!見た感じ、モンスターって奴だぞ!ゲームに出てくる・・・」

辺りをうろついていた謎の生物は、じりじりと近寄って来た。

「い、いや・・・僕達、無関係なんで!よその人なんで!!」

人間の言葉が理解出来るようには見えない。

「グオオオオッ!!」

「ヒイーーーーーッ!!!」

2人は逃げ出した!

「こ、殺される!殺される!追いつかれたら終わりだー!!」

2人は、懸命に走った!!瓦礫に身を隠し、息をひそめた。

「ハア・・・ハア・・・何だアイツ・・・マジでヤベエ・・・」

モンスターは、キョロキョロと2人を探している。ブラッドも心臓が飛び出しそうだ。見た目どうり、知能は低いのだろう。モンスターは諦めて去って行った・・・・

「と、とりあえずガルーダに戻ろう。こんな未来は危険過ぎる。俺達の時代に帰るんだ。」

レイドンは、新聞を握りしめたまま、立ち上がった。2人はガルーダに乗り込んだ。

「2020年に帰還するぞ。」

ガルーダは、西暦3000年から姿を消した。




「シュン!」

ここは西暦2020年、レイドン家、上空。ガルーダを着陸させ、ガレージに納めた。

「やっぱり家が一番だわー。」

レイドンは、ありきたりの言葉を吐いた。持ち帰った新聞を広げ、2人は読みふける。

「地底より這い出た魔王軍は、モンスターを従えて、人間を襲う。死者、行方不明者、多数。人類は、存亡の危機に追われ、ひっそりと身を潜めるしか無い様だ。」

それ以上、2人は言葉が出ない。

「・・・・ブラッド・・・・あれが未来なんだな・・・・」

レイドンは、ポツリと呟いた。1000年後など、自分達はとっくに存在しない。

しかし、あの惨状を目の当たりにして、関係ない!と言う者もそうはいないだろう。少なくとも、この星の未来を考えてしまうはずだ。

「・・・・・・」

2人は、考えこんでいた。ゲームなどでは、俺達が未来を変えようぜ!的な発言が出て来るが、殺されかけた事実が2人の口を閉じさせた。だが実際には、地球の未来を知っているのは、自分達だけだ。そして、タイムマシンが目の前にある。

「・・・・・・・」

ブラッドは、目を丸くしたまま、ガルーダを眺めていた。

「・・・・おい?まさか・・・ブラッド・・・お前、何か、カッコイイ事

考えて無いだろうな・・・・?」

レイドンは、釘を刺す。

「・・・・いや・・・・でも・・・・何ていうか・・・・あの未来を知って、何もしないっていうのも・・・的な。」

ブラッドは、ポツポツ語る。

「・・・それで?未来を?変えて?俺達に何が出来るって言うんだよー。」

レイドンは現実的だ。

「これを見てくれよ。」

ブラッドは何やら古文書を取り出し、唱え始めた。

「ボンッ!!」

ブラッドの掌から、炎が上がる。

「おおお・・・さすがは学者だ。・・・いや待てよ・・・そんな事が出来るんなら、モンスターとも戦えるんじゃないか?」

レイドンは立ち上がった。

「ああ・・・いけるかもな。レイドンだって科学者だろ?何かで戦えるんじゃないか?」

「え?ウーン・・・危険な薬品を混ぜ合わせるとか・・・・銃を造るとか・・・・戦闘ロボを造って乗り込むとか・・・・?」

「ああ、それそれ。レイドン、いけそうじゃないか。」

「え?いっちゃう?いっちゃう?」

「いっちゃおうぜ!」

「いっちゃおうか!どうせ暇だしな!」

今度はレイドンが暇という最強の武器を掲げた。2人には、暇が一番恐ろしい。こうして未来を変える、暇戦士が誕生した!

「おしおーし!モンスターと戦える様に、特訓だ!」

それから2人は1週間、戦うトレーニングを始めた。ブラッドは、古文書の魔法を、レイドンは、科学の武器を、それぞれ突き詰めた。そして、1週間が過ぎた。

「よし!やることはやった!先ずは、過去に行って、燃料の補給だ!」

「燃料のバイオ燃料は、西暦1500年に、たらふくあったそうだ!その時代に行こう!」

2人は、ガルーダに乗り込んだ。

「出発!!」

ガルーダは、西暦2020年から姿を消した。




「シュン!」

ガルーダは姿を現した。ここは西暦1500年だ。

「やっぱり自然はどの時代でも同じだなー。まっ、いいけど。」

レイドンは、草原にガルーダを降ろした。辺りを歩き回る。

「それにしてもだだっ広い草原だなー。ブラッド、どの辺に燃料があるんだ?」

レイドンはブラッドに尋ねる。ブラッドは、探知器で地下を調べている。

「ブオオー!ブオオー!」

「ん?何の音だ?」

2人は、辺りをキョロキョロと見渡した。

「ワアアアアアアアア!!!」

前も後ろも、何千という兵が押し寄せる!!何と、ここは合戦場だった様だ!2人は丁度、合戦場の中心にいたのだ!

「ヒィーーーーーー!!!過去も未来も変わんねえじゃねえかーー!!!」

「俺に言うなよーーー!!!」

2人はダッシュで逃げた!巻き込まれたら命が無い。

「ハアハア・・・あっぶねえー。死ぬとこだったぜ・・・」

2人は、草陰に隠れた。

「ぬ?主らは・・・?」

丁度そこに、野伏せりと出くわしてしまった!!

「その傾いた出で立ち、さては阿尻軍の者だな?」

野伏せりは刀を抜いた!

「我は、世羅軍の戦人!覚悟!!」

野伏せりは刀を振り上げた!

「ままま、待て待て!アジリじゃない!!いやあーーー!!!」

2人は、奇声を上げた!

「ズバズバァッ!!」

閃光が戦人を切り裂いた!2人はフルフルと抱き合っている。

「安心されよ!世羅の者は倒れた!・・・お主らは舶来者か?面妖な着物を羽織っておるな。」

一人の武者が2人の前に現れた。

「拙者は阿尻軍の、御門 忠成ミカド タダナリだ。何ゆえ、合戦場に参られたのだ?」

武者は不思議そうにしている。

「僕達はぁ・・・未来から来てぇ・・・」

レイドンは半泣きだ。

「ここは危険であるゆえ、しばし離れたほうが良かろう。何、今日は阿尻軍の負け戦だ。拙者は用心棒であるゆえ忠義はござらんよ。」

武者に案内されて安全な場所に辿り着いた。

「して、何ゆえこの様な場所におられたのだ?」

武者は言う。

「いや・・・僕達は2020年から来て・・・未来の3000年が危険に晒されて

いて・・・」

レイドンは、冗談の様な話を全て語った。

「何!?未来が!それは許せぬ!!」

武者はあっさりと信じた。この時代にはジョークは無いのだろうか?

「そなたらの覚悟、誠に見事!この忠成、子孫らの為、一肌脱ごうではないか!」

忠成はカッ!と目を見開く。

「一肌脱ぐって・・・付いてくる気か!?死ぬかもしれないぞ!?」

「この忠成!死に場所を未来と決めにけり!!」

出た・・・この時代の武士はこんな奴ばかりだった。火に油を注いだ様な目をしている。

「この業物、愛染村正アイゼンムラマサと共に、悪を斬ろうではないか!」

忠成は刀を掲げ、燃えている。ちょっと怖い。

「準備はいいのか?忠成。」

「このまま行くとしよう。拙者に身寄りはござらん。」

ガルーダに燃料を補給し、3人は乗り込んだ!

「じゃあ、行くぜ!3000年に!」

ガルーダは西暦1500年から姿を消した。




「シュン!」

ガルーダは姿を現した。ここは西暦3000年、また戻って来た。眼下には、あの廃墟の街が見える。

「新聞には、人類はどこかに追いやられていると書かれてあったな?どこかに集まっているはずだ。」

レイドンは、ガルーダを飛行させる。

「ここが3000年でござるか・・・廃墟の街とは、また物騒なものよ・・・」

忠成は、窓の外を見る。

しばらく飛行していると、ドーム型の建造物が見えて来た。

「あ!あそこに何かあるぞ!行ってみよう!」

レイドンはそう言い、ガルーダを着陸させた。

「とりあえず、ガルーダはここに隠しておこう。」

岩場の影にガルーダを隠し、3人は辺りを見回した。

「ドーム型の建物以外は何も無いな。行こう。」

3人は、ドーム型の建物に向かった。その時、

「ギャアアアアア!!」

モンスターが数匹、現れた!

「よし!特訓の成果、見せてやる!」

3人は身構えた!


レイドンは、硫黄と塩素酸塩を混ぜたフラスコを投げつけ、火炎放射器で焼いた!フラスコは爆発を起こす!

忠成は、深く深呼吸して、刀に手を伸ばした。抜刀した勢いで一閃斬りを放つ!

ブラッドは、古文書の魔法を読み上げた!掌に水柱が舞い上がり、水の槍が貫く!


モンスター達を倒した!

「やったな!俺達、戦えるぜ!」

レイドンとブラッドは、ハイタッチした。

「2人ともやるではござらぬか!その奇怪な妖術、見事なり!」

忠成も感心している。3人は、ドーム型の建物に辿り着いた。

「通っていいぞ。」

門番に促されて、3人は中に入った。このドーム型の建物は、透明なシールドで覆われており、中には入り口からしか入れない、要塞の様な街だ。ドーム型の建物は、あちこちに点在し、人々が暮らしているらしい。ドームにモンスターが侵入しない様、常に門番が見張っている。人間は誰でも通してくれる。ドームの街は、やっと未来らしくなり始めた。

「エレンダの街にようこそ!」

入り口には、横断幕がある。街に入れば、もう平和な世界だ。笑い声も聞こえる。

「あー何か安心するぜー。とりあえず換金所に行こうぜ。資金の調達だ。」

3人は換金所に辿り着いた。

「いらっしゃいませ。どの様なご用件ですか?」

「この金を、ここの通貨に替えて欲しい。」

レイドンとブラッドは、札束を差し出した。

「・・・これは、古銭ですね。こちらの額で買い取らせて頂きます。」

換金のつもりが、1.5倍になって還ってきた。

「あらら。増えちゃったよ。まあ、いいか。」

レイドンとブラッドは、札束をしまい込んだ。

「拙者のも替えれるでござるか?」

忠成は袖に手を伸ばし、1500年前の金を差し出した。

「・・・・これは!!!・・・少々お待ちください。・・・店長!店長!!」

係の者は奥に入って行った。

「これは!!!」

奥から声が聞こえる。店長だろうか?ヒョコヒョコと係と店長らしき人物がやって来た。

「いや、お待たせいたしました。こちらの額でよろしいでしょうか?」

バサバサと札束の山が置かれる。どうやら忠成の時代の金は、大変なお宝らしい。頭のいい人物なら金儲けを考えるだろうが、レイドンとブラッドは既に金持ちだ。

忠成もガルーダの操縦など出来ない。

「うむ。良かろう。」

忠成は、係が差し出したリュックに札束を詰めた。これで資金は大丈夫だ。

3人は扉を開けて外に出た。

「そこにコンビニがあるな。喉が乾いたから、飲み物でも買おう。」

3人は、コンビニに向かった。

「スンエニビンコ??」

「いや忠成。コンビニエンスだ!左から右!左から右だ!」

コンビニの看板を見た忠成は、首を傾げる。コンビニの自動ドアが開いた。

「やや!誰もおらぬのに扉が開くとは!さては罠でござるな!笑止!この忠成、この様な罠にはかからぬぞ!!」

忠成は刀に手を伸ばした。

「いいから中に入れよー。」

レイドンは顔をしかめた。

「やや!中はヒヤリと冷たい!さては拙者らを凍傷責めにしようとしておるな!ええい!曲者め!姿を現せい!!」

「いいから進めよー。」

またレイドンは顔をしかめた。忠成はこの時代について来れるのだろうか?3人は、飲食物を手に入れ、コンビニを後にした。




「図書館があるな。新聞なんかもあるんじゃないか?」

レイドンは指差した。先ずは情報収集だ。3人は図書館に入り新聞を漁った。

「魔王軍、侵略は拡大。軍隊は撤退を余儀なくされる。地上の7割強を占領。」

「魔王は地底に存在する。占領されたベルブルの火口より魔王軍来襲。」

レイドンとブラッドは新聞を読み上げる。大体、この時代が掴めてきた。

「ううむ。拙者には読めぬ字ばかりでござる。拙者は、この時代の街を散策しても良いでござるか?」

忠成は未来の街が見たくて仕方ないらしい。

「あーまあ、いいぜ?遠くまで行くんじゃないぞ?」

「かたじけぬ!」

忠成は意気揚々と外に出た。ブラッドとレイドンは地図を開いて街の所在を確認する。

「ここがこのエレンダだ。ベルブルは・・・・あった!・・・遠いなー。この大陸の最北西だな。ガルーダで飛んで行っても、飛行モンスターに撃墜されたらジ・エンドだ。歩いていくしか無いな。ガルーダを遠隔操作で呼び寄せれるようにしないとな。幸い、ここは未来だ。パーツ位あるだろ。どこかでガレージを借りよう。」

レイドンは的確に計画を練る。

「エレンダの北に、ラネイルという街がある。1つ1つの街で休息を取りながらベルブルに行くしか無いな。ベルブルに着いたら、火口から地底に突入しよう。溶岩の熱にも耐えられる様に、ガルーダのセラミックスボディを更にコーティングしないとな。俺の武器も強力にして、ブラッドの古文書も深い物にしないと、進めないぞ。」

レイドンは地図をコピーする。ブラッドは、古文書を探す。・・・あった!ブラッドは、古文書の詠唱内容をメモし始めた。レイドンは、科学の本を探し当てて熟読している。

「よし、大体こんなもんだな。今日はもう宿を取ろう。忠成を探すぞ。」

2人は図書館を出て、辺りを見回した。

「ここでござる!」

忠成がやって来た。

「いや、街全体が傾いておって、長屋などござらんかった!豆腐の様な家屋に皆、暮らしておるみたいでござるな。」

豆腐の様な家屋?・・・ああ、ビルの事か。

「皆、これを持ち歩いておってな・・・しからば拙者も、と思い手に入れたでござるよ。この、通信絡繰箱を。」

通信絡繰箱?・・・ああ、スマホの事か。

「して、未来の事を聞き出そうとその辺におったオナゴ達に声を掛け、そこの茶屋で西洋あんみつを食しておってな・・・」

要するに、ナンパしてカフェでパフェを食べていたと。

「オナゴ達とは、通信絡繰箱の顔本手帳で繋がっておるのだ。」

顔本手帳?・・・ああ、Facebookの事か。オイオイ、この時代に適応しすぎだろ。

「何だ、忠成!楽しんでんな!」

レイドンはニヤリと笑う。

「いやいや、拙者は後の未来の世の為、来たでござるよ!」

忠成はキリッとする。

「あー!お侍さんがいるー!」

通りすがりの女子達が、忠成をスマホで撮り始めた。

「これ、待ちなされ。まだ型が・・・」

忠成は、刀を抜いてポーズを決めた!

「キャー!カッコイイー!!」

女子達は忠成を写真に撮る。

「ありがとうございまーす。」

満足した女子達は立ち去った。

「うむ。拙者もまだまだ隅には置いてはおけぬ者だな。」

忠成は眉をひそめた。

「いや、珍しいだけだから!レアなだけだから!」

レイドンはちょっと悔しいのか、顔が本気だ。

「まあいい。宿を探すぞ。」

3人は宿に辿り着いた。部屋を取り、キーを渡される。

「この部屋はまた西洋でござるな。この西洋布団では眠れぬ・・・・グゴー・・」

忠成は一瞬で眠りについた。

「早っ!」

レイドンは笑っている。3人は眠り、夜が明けた。




「よし!朝食を取ってラネイルに向かうぞ!」

3人は飲食店に向かった。ブラッドは、サンドイッチ、レイドンはパスタ、忠成はカレーを注文した。

「お待たせしました。」

テーブルに注文が並んだ。

「こ、こ、これは!!!食せぬ!拙者には食せぬ!!!」

忠成は愕然としている。カレーを初めて見たのだろう。健康に気を使っているのか、カレーの事を加齢と捉えてしまったのか。

「あー・・・・」

2人はすぐ気づいた。クレームでも出されたら面倒だ。

「忠成、俺のと替えてやるよ。」

レイドンは自分のとすり替えた。

「かたじけぬ!いや、健康も簡単ではござらんな。・・・・ウッ!!」

忠成は、レイドンがカレーを食べているのを見て目を背けた。

「ぬぬ!この西洋そばは美味でござるな。」

忠成はパスタを口に運ぶ。レイドンもブラッドも、忠成が西洋、西洋と言うのも慣れ始めてきた。

「馳走になった!」

忠成の声に、皆手を合わせ飲食店を出た。

「ラネイルには歩いて行くぞ。」

レイドンを先頭に、一行は北上した。

「後の世も、草木は変わらぬものよ・・・」

忠成は風に揺れる草花を眺めている。

「ガアアアッ!!」

モンスター達が現れた!

「出たな!」

3人は身構えた!


レイドンは、引火性液体と酸化性液体を混ぜて投げつけた!大爆発を引き起こす!

忠成は、刀を斬り上げ、返す刀で一刀両断にする!!

ブラッドは、掌に炎を集めて放った!辺りが燃え盛る!!


モンスター達を倒した!

「戦う事にも慣れてきたな。」

3人は、揚々と北上を続ける。ドームが見えてきた。

「ラネイルだ!」

一行はラネイルに到着し、中に入った。ラネイルの街もエレンダと似たような街並みだった。どこの街が特別という事では無さそうだ。皆、細々と生きてるだけで精一杯の様だ。

「ガレージを借りよう。」

一行は、不動産屋に立ち入り、1週間程ガレージを借りる事にした。

一度エレンダに戻り、ガルーダをガレージの中に入れ、宿も確保した。




「オハヨーさん。」

ブラッドはガレージに入った。また繰り返される光景だ。だが今は忠成もいる。

「遠隔操作が出来るパーツは・・・これとこれと・・・」

ブラッドとレイドンは図面を作成していく。忠成は見ているだけで精一杯だ。

「ガガガガガ!!キュルキュル・・・・」

ガルーダに新たなシステムが装備された。

「ふっ。ふっ。」

忠成は外で木刀を素振りしている。剣の道は日常からこうしていないといけないらしい。

「よし、完成だ。ブラッド、俺は自分の銃を造る。ブラッドはどうする?」

ブラッドは、古文書を漁って読んでおくと答えた。3人共、更に強くならないといけないと感じていた様だ。ガルーダは、また岩陰に隠し、待機させた。

そして、1週間が過ぎた・・・・





「このラネイルの西に、アステラという街がある。そこに向かおう。」

一行は、アステラに向かった。

「聞いた話なんだがな。ベルブルに向かう程、モンスターは強くなっていくらしい。この辺りはまだ平和な方だ。常に強力なモンスターの危険にさらされている街もあるみたいだな。」

レイドンはそう言う。

「うむ。そろそろ本腰を入れて戦をせねばならんな・・・・」

忠成は眉をひそめた。いつの間にか、一行は笑って旅をする気分では無くなっていた。

「おっ。見えてきたぜ。アステラだ。」

3人は、ドームの中に入った。

「これはひどいな・・・・」

一行はアステラの街に入るなり、ため息が漏れた。至る所にケガ人が歩いている。周りには吹きさらしの野戦病院の様に、ケガ人がベッドに横たわり、医師達が看護していた。

「何があったんですか?」

レイドンは、ケガをした通行人に声を掛けた。

「いや、俺達は軍の者だ。西のレテの街は度々モンスター達が襲撃に来る。ケガ人はここに戻されるんだ。」

どうやらアステラの街は、レテの街を巡回警備する本部があるらしい。

「近々、レテの街に本部を置きモンスター達を一掃する計画があるんだが、上手くいくかどうか・・・・ほら、そこが本部なんだよ。」

軍の者は本部を指差した。

「来たれ!解放軍募集!傭兵制度有り。」

本部の看板にはそう書かれている。軍の者と別れ、3人は話し合っていた。

「なあ、俺達だけで行動するより、軍と一緒にレテの街に行った方が良くないか?」

レイドンはそう言う。

「傭兵とは何でござろうか?」

忠成は不思議そうだ。

「ああ、用心棒みたいなもんだ。軍に所属する訳では無く、期間を決めて一緒に行動するんだ。地底に行くまでの間、そうした方が良くないか?」

レイドンは提案する。確かに、多人数で攻め込んだ方が有利ではある。

「良き案であるな!兵力が多ければ百人力でござるな!」

忠成も賛成した。

「よし、軍の門を叩いてみようぜ。」

一行は軍の建物に向かった。




「こんにちは!」

3人は大きく挨拶した。

「僕達は傭兵に志願いたします!」

3人は背筋を伸ばす。

「おお!志願者か!入ってくれたまえ!」

責任者であろう人が快く迎え入れてくれた。

「街中を見たと思うが、今は人材が不足している。大歓迎だ。」

責任者は、名刺を差し出して来た。

「私は軍曹のクロイドだ。一緒に戦おう。」

責任者はクロイドというらしい。

「これからレテの街付近のモンスター達を掃討する作戦だ。3人は、戦闘経験は?」

軍曹はそう言う。

「僕達は、エレンダから歩いて来ました。モンスター達と戦いながらです。」

レイドンは、ビビッていた事を隠した。

「おお、そうか。では、直ぐにでも前線に行けるか?」

「大丈夫です。」

あれよあれよと話が進んでいく。

「では、明後日、レテに進軍する。朝10時にこの宿舎に集合だ。ああ、君達の部屋は・・・・」

「いや!大丈夫です!部屋はあるんで!!」

レイドンは、部屋を断った。宿舎に詰められるのが嫌なのだろうか?まあ、資金ならある。

「では、明後日、また来ます!」

3人は、軍の兵舎を後にした。

「フーッ。危なかったぜ。使い古しのベッドとか、マジで臭いんだよなー。」

レイドンはそう言う。確かにそれは嫌だ。

「俺達は優雅に宿を取ろう。」

3人は宿に向かい、2日間、部屋を取った。

「明日はとりあえず休みだな。今日はもう寝よう。」

レイドンは大きな欠伸をした。そういえば、休むという響きはどれくらい振りだろう。もちろん仕事もしてなかったというのもあるが、ここ最近は、ずっとバタバタしていた気がする。ブラッドは、休みが嬉しいという心が嬉しいと思っていた。

3人は、ベッドで心地良い眠りについた。




「おーはよーさん。」

レイドンはモソモソと起き上がった。

「今日はとりあえず、この街でもプラプラしようぜ。そうだ忠成。珍しいモンでも食べようぜ。」

バリバリと頭をかきながらレイドンはそう言う。

「ほう!それは愉快な事だ!楽しみである。」

忠成は目が光る。3人は宿を出て、川べりの公園を散歩していた。川のせせらぎが癒される。

「あー・・・平和だなやー。いい天気だなやー。」

レイドンは老人のような声を出した。

「そうだ。釣りでもやろうぜ。」

3人は釣り堀に移動した。すぐ側には魚をさばける調理台もある。釣竿を借りて来て餌を付ける。

「釣りなら良くやったでござるよ。」

忠成は慣れた手つきで針に餌を付けた。3人は釣竿を振り、魚がかかるのを待った。

「あー・・・平和っていいな・・・」

暖かい日差しが、ウトウトとさせる。

「ぬっ!れいどん、かかっているでござる!」

忠成は大きな声を出した。

「おお!キテル!大きいぞ!おっほほ!キタキター!」

レイドンはリールを巻き上げる。

「ゆっくり引き上げるでござる!糸が切れてしまうぞ!ハハハ!頑張れ!」

ブラッドも固唾を飲んで見守る。

「上がって来た!デカいぞ!アミを入れてくれ!」

「任されよ!くっ!重いでござる!」

忠成はアミを上げた。

「おお!でかいなー。生きがいいぜ!!40㎝てとこか!」

上げた魚は、ビチビチと暴れている。魚をバケツに入れ、レイドンはまた竿を投げた。

「おお!今度は拙者も来たぞ!ぬう、れいどんには負けんでござる!」

男はどうも競いたがる。忠成も目がマジだ。

「おい!ブラッドも来てるぞ!」

ブラッドは、はっとしてリールを巻く。

「今日は入れ食いだ!おっ!またきたぜ!」

3人はリールを巻く。笑いが止まらない。3つのバケツ一杯に魚を釣った。

「大漁だな!よし!捌こうぜ!」

調理台に行き、まな板に魚をのせた。

「ここは拙者に任せるでござる!釣りは生活がかかっておったからな。捌くのはいつもの事であった!」

忠成はみるみる内にキレイに捌く。

「スゲーな忠成!大したもんだ!よし!俺達は酒を買いに行こう!」

レイドンは上機嫌だ。

「む!酒か!何と良き事であろうか!楽しみにしておるぞ!拙者、焼酎を所望する!」

忠成も盛り上がってきた様だ。

「焼酎か。分かった!後は任せた。」

「うむ!心得た!」

レイドンとブラッドは、近くのコンビニに向かった。

「この拙者には通用せぬぞ!」

レイドンは自動ドアの前で忠成の真似をした。ブラッドは笑っている。

「とりあえず、少しのつまみと、後は酒だ。ビールと焼酎と・・・」

レイドンはカゴの中に酒をドサドサ入れた。

「こーしてる時が一番幸せだわー。」

レイドンはそう言う。楽園とはすぐ近くにあるものだ。

「まあ俺が出しとくからよ。」

レイドンは一人で代金を払ってくれた。気前のいい奴だ。

「ありがとうございましたー。」

2人は忠成の元へ戻った。

「おお!うまそうだなー。さすがだわー。」

キレイに捌かれた魚たちは、皿に美しく盛られていた。刺身はキラキラと光っている。焼き魚も喉をくすぐる。

「よし!調理完了でござる!」

忠成はやりきった感を出した。

「じゃ、やっちゃいますか?」

3人は酒を掲げた。戦闘準備は万全だ。

「オホン・・・では・・・カンパーイ!!」

「カンパーイ!!」

3人は一気に酒を煽った。

「ピャー!!最高だわー!」

釣りという一仕事終えた酒は格別だ!

「いただきます!」

3人は魚たちを口に運ぶ。

「ピャピャー!!うんめー!!」

奇声をあげたい気持ちも分かる。最高だ。

「やっぱ男はこれだなー!」

レイドンはそう言うが、性別など関係無い。

「いや今日という日は最高でござるな。最近はずっと気が張っておった気がしておった。」

忠成はそう言い、また酒を煽る。確かにそんな気もする。しばらく食べて飲んで、酔いが回ってきた3人は、その辺に寝そべった。

「明日からまた戦場かー。そう言えば俺達、何で旅してるんだっけ?まあでも、なんか楽しいよなー。暇だった頃に比べれば・・・」

レイドンはそう言い、昼寝を始めた。他の2人も昼寝する。空はゆっくりと雲が流れていた・・・・

「はっ。結構寝てたな。今何時だ?」

レイドンの声に2人共目が覚めた。

「15時かー。また食えるな。片付けてラーメン食いに行こうぜ。」

レイドンは、いきなりそう言うがこのだらしない感じも心地いい。

「忠成はラーメン食べた事あるのか?」

「いや・・・聞いた事はある。うどん風そばと・・・」

「うどん風そば!?うーん、50点だなー。」

3人は釣り道具とゴミを片付けて返却した。

「よし、ラーメン屋探そうぜ。俺はもう誰が何と言おうがラーメンだ。」

レイドンは、分かる様な分からない様な事を言う。

「あった!ラーメン屋だ。」

3人は、のれんをくぐった。

「らっしゃいませ!」

店の者は水とメニューを差し出した。

「俺はミソでブラッドは豚骨だな。忠成、初心者は醬油って相場が決まってるんだ。」

またレイドンは適当な事を言う。

「うむ。郷に従えとな。ではその物を所望しよう。」

忠成は醬油ラーメンを注文した。

「お待たせしました。」

ラーメン3つが来た。3人はズルズルとラーメンをすする。

「これは!何と言う美味!未来め!やるではないか!」

忠成は興奮している。そう言えばこんな感じの映画もあったな・・・ブラッドはそう思う。3人はラーメンを食べ終えた。

「ふー。食べたなー。そろそろ帰るかー。」

3人は、明日の出兵の為、早めに宿に帰った。そして、夜が明けた。




「皆、準備は良いか!レテの街に辿り着く前に戦闘が起きるかもしれん!心しておくように!」

軍曹を先頭に兵達は列を作った。

「では進軍!」

新米のブラッド達は最後尾だ。

「やっぱ志願して正解だったな。こんなに仲間がいたら心強いぜ。」

レイドンは手を頭の後ろに組んでタラタラ進む。

「ああ、君らが新入りか。フフッ。頑張れよ。」

声をかけて来たのは、ヒゲモジャの兵士だ。優しそうに笑っている。

「もう長いんですか?戦うのって怖くないですか。」

レイドンは返事した。

「ああ、ワシらは命をかけんと生活出来ないんだよ。」

兵士はそう答えた。

「・・・・・・」

レイドンとブラッドは黙り込んだ。もうずっと忘れていた・・・いや、命をかけるとか、考えた事は無いかもしれない。自分達とは違う境遇の人間といると、色々考えさせられる。この兵隊達は皆、そうなのだろう。レテに近づくにつれ、顔が暗くなる。しばらく歩くと遠くにドームが見えた。

「おお!レテだ!もうすぐつくぞ!」

兵士の一人が大きな声を出した。

「皆待て!!」

軍曹が皆を止めた。

「囲まれているぞ・・・・」

軍曹の声に辺りを見回す。モンスター達は兵をぐるっと包囲し、じりじりと近づいて来た。モンスター達に知能は無い。自然に集まって来たのだろう。人間を捕食の対象としているのが厄介だ。

「皆、円になって構えろ!」

軍曹が陣形を促す。兵達は円になった。

「いいか!互いに背中を預け合うんだ!よしいくぞ!攻撃!!」

「ワアアアアアアアア!!!」

兵達は突撃した。あちこちで剣戟が響く!軍曹もヒゲモジャの兵も戦っている!

「行くぞ!!」

レイドンは叫んだ。ブラッド、忠成が隣に並ぶ。


レイドンは、体勢を整え、光子雷撃銃を放つ!細い電撃がモンスターを貫く!!

忠成は、村正の妖気を解放した!落ち武者と共に斬撃で斬り払う!!

ブラッドは、詠唱を始めた。風の刃で切り刻んでいく!!


「輪の中にモンスターを通すな!陣形が崩れるぞ!!」

軍曹は叫んで剣を振り下ろした!

「もう少しだ!圧し返しているぞ!!」

ヒゲの兵士も槍を振り回す。モンスター達は次第に倒れ、残った数匹は逃げ出した。

「ハア・・・ハア・・・何とか・・・生きてるな・・・」

ヒゲの兵士は腕から血を流していた。咬み付かれたのだろうか?兵はズルズルと

歩を進め、何とかレテの街に辿り着いた。




「皆、ご苦労であった!しばし休養されよ!」

軍曹の声に兵達は解散した。解散といってもケガ人達だ、治療を受ける他無い。

レテの街は閑散としていた。ベルブルから程近いこの街は生活も脅かされていたのだろう。店などは無い。しかし、進軍も成功し、新たな拠点も出来た。後から兵も増えていくだろう。

「今日はもう休んでくれ。明日、また出頭してくれ。」

軍曹にそう言われ、軍の施設で横になる。野宿よりは遥かに増しだ。

「3人だけで来てたら、マジでやばかったなー。」

レイドンはそう呟いた。まったくその通りだ。3人はそのまま眠りにつき、夜を明かした。




「おはようございます!」

3人は朝食を済ませ、出頭した。

「うむ。早速だが、任務だ。南の洞窟にギガントグリズリーがいる。先ずはレテの安全確保が優先だ。奴は雑食で獰猛だ。今、戦える者は君達しかいない。」

昨日戦った兵達はケガを回復しないといけない。

「1人、ヒーラーを連れていくといい。援護魔法も出来る。」

軍曹は窓を開け、「ジュネル!・・・ジュネル!」と声を飛ばした。

しばらくしてドアが開いた。

「お呼びでしょうか?」

ドアを開けたのは女性だった。まだ若い。

「回復役としてこの者達についていってくれ。」

女性は頷いた。

「はじめまして。ジュネルと言います。」

女性は軽く頭を下げた。美人ではあるが、レイドンもブラッドも金持ちだ。夜の街に出て遊び歩くなどもうとっくに飽きてここにいる。忠成も自分の時代の女性が好きだと言っていた。何でもない人間関係のほうが、時に物事を円滑に進める。

ジュネルを含めた4人は、兵舎を後にした。

「ギガントグリズリーかー。怖そうだなー。」

レイドンはそう言う。

「人間の方が斬りやすそうでござるな。」

忠成はポソリと恐ろしい事を言う。

「ウフフ。咬まれたら回復しますから。頑張って下さいね。」

ジュネルは襲われる事を前提に言う。4人はレテの街を出て南の洞窟に向かった。

草木は穏やかに揺れているが、これからの戦闘を想うと和やかにもなれない。しばらく歩くと洞窟が見えて来た。

「あら?暗くて進めないぞ。こりゃ無理だ。引き返すか。」

レイドンはサッサと諦めた。

「大丈夫ですよ?ほら。」

ジュネルは魔法で周囲を明るくした。ニコニコしている。

「また便利な事でござるなー。やれやれ・・・行くしかあるまい。」

忠成は渋々、足を進めた。最近は忠成もレイドンのチョイダメな空気に感化されて来ている様だ。人間とは変わるものだ。4人はヒンヤリとした洞窟内部に歩を進めた。

「ありゃ?道が分かれてるぞ?」

レイドンは足を止めた。Yの字に道が分かれる。

「どっちかが宝箱に続くのかな。金ならもういらないんだけどなー。まあ、エロ本なら読むけど。」

レイドンはそう言う。

「エロ本とな?春画の事でござろう。未来の春画は凄まじいでござる!それが一番の収穫でござる!」

「だろう!?春画じゃなくて、春動画だろ!?画面に釘付けになるだろ!?」

「無論でござる!抜刀術の達人になれるでござるよー!」

レイドンと忠成は何やら盛り上がり始めた。

「抜刀術!!ギャハハ!!面白いな忠成はー!ああ、ジュネルは春画は知ってるのか?」

レイドンはジュネルに話を振った。ジュネルは真顔になりレイドンを白い眼で見た。

「おっと。どっちかに進もうぜ。」

レイドンは話を逸らした。気を使って話を振ったつもりが裏目に出た様だ。

進行は話し合いの結果、右、1、どちらでもいい、3。

「もー。俺に責任なすりつけんなよー?」

レイドンは困った顔をして右に歩を進めた。歩いて行くと行き止まりになった。ただの行き止まりだ。

「あらら。引き返そうぜ。」

レイドンがそう言ったその時だ。

「グルルルル・・・」

獣の声がした。振り返ると大きなグリズリーが威嚇し始めている。

「ギガントグリズリーだ!まずい!袋小路だ!逃げ場が無いぞ!」

レイドンは大きな声を出した。先程のレイドンと忠成の大声がギガントグリズリーをここまで引き寄せてしまった様だ。

「ンもう!あんな話を大声でするから!!」

ジュネルは2人を責めた。レイドンと忠成は口を尖らせた。

ギガントグリズリーは4人が身構える前に襲いかかって来た!

「グアアアアアッッ!!」

ギガントグリズリーは大きな爪でレイドンを引っ掻いた!レイドンの腕から血が滴り落ちる!

「いってえー!ジュネル!回復してくれ!!」

レイドンは膝をついた。

「もういやらしい話、しない!?」

ジュネルは1クッション置く。

「しないしない!頼むよー!」

レイドンは懇願した。ジュネルはレイドンを回復した。交渉は成立した様だ。

「よし!大丈夫だ!いっちょやるか!」

4人は身構えた!


レイドンは、アジ化アジトを振りまいた!抑圧された膨大なエネルギーが放出される!!

ジュネルは、魔法でグリズリーの足元に草木を這わせた!草木は蠢き足を絡めとる!!

忠成は、念仏を唱えて村正を振りぬいた!黒い斬撃が突き抜ける!!

ブラッドは、稲妻の魔法を地面に放った!電圧の波が襲い掛かる!!


「グオオオオッ・・・」

グリズリーは倒れた。任務完了だ。

「フーッ。大変だったなー。戻ろうぜ。」

4人は来た道を引き返してレテの街に戻った。

「任務完了しました。」

4人は報告した。

「うむ。ご苦労だったな。現在、兵達は続々とレテに入って来た。周辺のモンスターの掃討も進んでいる。で、次の君達の任務だが、ベルブルの南と東に強力なモンスターがいてな、先に始末しておかないと、後々、厄介だ。また明日来てくれ。」

軍曹にそう言われ、職務室を後にした。

「ふあ~あ・・・じゃ、また明日・・・」

4人は解散し、それぞれの部屋を後にした。




「おはようございます。」

4人は職務室に集合した。

「うむ。おはよう。では次の任務だ。ベルブルの南、まあ、レテの北に位置する草原にサーベルタイガーが現れた。危険なモンスターだ。ベルブルに進軍するのに厄介な存在だ。討伐を頼む。」

軍曹から任務を言い渡される。

「了解しました。」

レイドンは見よう見真似で敬礼した。4人は職務室を出て草原に向かった。

「今度はサーベルタイガーかー。」

レイドンは青い空を見上げた。

「サーベルタイガーとはどのような動物なのだ?」

忠成は質問してくる。

「ああ、まあ・・・虎だな。」

レイドンは簡潔に答えた。

「虎?ふむ、虎退治か。腕が鳴るわ。よく武将達も腕自慢の為、戦っていたものよ。」

忠成はそう言う。虎退治の経験があるのだろうか?臆して無い限り、頼もしい事だ。

「私は大きな動物は好きじゃないなー。虎より猫の方が好き。やっぱ猫よ。」

ジュネルは口を挟んで来た。好き嫌いの問題では無い。

「あー。天気がいいなー・・・ピクニックに変わんないかなー・・・」

レイドンはまた現実逃避し始めた。

「ピクニックとは何でござるか?」

忠成は質問してくる。

「まあ、遠足かなー。ちょっとした遠出の散歩だ。」

「ほう、楽しそうでござるな。」

忠成は、レイドンの言葉に乗っかってくる。

「いいわね。そしたら私、お弁当作って来るのに!」

更にジュネルが乗っかって来た。

「遠くへ行こうー。ハイホー。ハイホー。」

レイドンは謎の歌を歌い始めた。皆も楽しそうだ。現実逃避の連鎖が繋がる。

「僕らを乗せてーハイホー。ハイタッ!!」

レイドンはいきなり叫んだ。いつの間にか、その辺にいたサーベルタイガーにぶつかってしまった!

「オイオイ!誰かいるんなら言えよ!」

4人はワタワタと武器を取り出す。

「れいどんのせいでござる!まやかしの術でござる!」

「そうよ!何がお弁当よ!」

2人はレイドンのせいにした。サーベルタイガーが体勢を低くした。

「ままま待て待て!武器が引っかかって・・・」

レイドンは銃をカチャカチャ引き抜こうとするが、焦って取り出せない。

「レイドン!安心して!回復はするから!」

ジュネルは叫ぶ。

「回復って何だよ!痛い事自体が嫌なんだギャアーーー!!!」

サーベルタイガーはレイドンの足を咬んだ!尖った牙が深く刺さる!

「かかか回復!何で俺ばっかり!!コイツ離せ!!」

レイドンはサーベルタイガーを蹴飛ばした!!

「咬まれたのが、れいどんで良かったでござる!れいどんも役に立つでござる!」

「ホントよね!何あの顔!アッハハ!!」

2人はレイドンを指差して笑い始めた。人間関係も慣れ始めると恐ろしい。

「早く回復してくれよ!!」

レイドンはキレ出した。余程痛いのだろう。

「お願いしますは!?」

ジュネルもキレ返す。完全に分が悪い。

「お願い・・・します。」

レイドンはうなだれた。ジュネルはレイドンを回復した。

「コイツ・・・許さねえ!!」

レイドンは個人的な怒りをサーベルタイガーに向けた!


レイドンは、三フッ素化塩素を振りまいた!重度熱反応が起こる!!

ジュネルは、詠唱を始めた!4人は身軽になり素早く行動出来る!!

忠成は、狙いを定めて村正を突いた!直線的な刃が襲い掛かる!!

レイドンは、重力を操り重い衝撃を落とした!地面が窪む!!


サーベルタイガーを倒した!

「参ったか!!」

レイドンは叫んだ!大分スッキリした様だ。

「はー。緊張感を失うと怖いなー。」

4人は反省した。もっとしっかりしないといけない。失敗は次に活かすべきだ。

「まあでも、犠牲が、れいどんだけで良かったでござる。」

「うん。犠牲者はレイドンだけね・・・」

忠成とジュネルは反省した面持ちだ。

「犠牲者って何だよ!死んだみたいに言うなよ!」

レイドンは突っ込んだ。

「あ、ごめん・・・ごめっはは!ハハハハ!!」

「笑っては・・・はは、ぬはは!!」

忠成とジュネルはどうも笑ってしまう様だ。レイドンは恨めしそうに2人を眺めている。

「アハハハハ!!」

「ヌハハハハ!!」

完全に笑いのツボにはまり込んだ2人はレテに帰るまで笑っていた。結局、楽しいピクニックになった様だ。レイドン以外は。

「任務終了しました!」

さっきまで笑っていた2人は、キリッとしている。レイドンは何か面白く無い空気を漂わせた。

「うむ。ご苦労だった。」

いきさつを知らぬ軍曹は4人をまとめて労った。レイドンは面白く無さそうだ。

「では、また明日、来てくれ。」

4人は職務室を出た。

「まあ、いいかー。とりあえずもう休むわ。」

レイドンは苛立ちも収まった様だ。4人は解散した。




「おはようございます。」

4人は職務室に集まった。

「ご苦労。今日の任務は、レテから北東、ベルブルから東の位置に、暴れている猛牛がいる。コイツも危険な存在でな。討伐して欲しい。頼んだぞ。」

軍曹は司令を伝える。

「了解しました。」

4人は敬礼した。4人とも傭兵だが、軍にいるのも様になってきた様だ。

4人は職務室を出た。レテを出発し、北東に向かう。

「今度は牛かー。熊、虎と来て、牛か、獣ばっかだなー。」

レイドンは空を仰いだ。今日も空は青い。

「まあ、人間とやり合うよりは、遺恨が残らなくて良いでござる。人間同士の戦は悲惨なものでござるよ。」

忠成はそう言う。合戦場で生き抜いてきた忠成には、苦い記憶もあるのだろう。

「猛牛かー。食べられるのかな?私、焼き肉大好き。」

ジュネルはそう言う。やはり女性らしい発言をする。

「喰うって・・・モンスターだぞ?さすがに食べる気には・・・はっ!そうだ!

いいか!今日は俺が最後尾だ!最近、戦闘でえらい目に合ってるからな。俺は後ろから付いて行く!」

レイドンは後ろに並んだ。昨日の事が忘れられないらしい。

「分かったわよ!もう!男のくせにだらしないわね。」

「では、拙者が先頭に立とう。」

今度は忠成が先頭に出た。屈強な者が先頭に立つのは普通の事だが、いつの間にか、レイドンが出しゃばっていたんだなとブラッドは思った。しばらく歩くと、草原の中に川が出て来た。牛もいる。

「この辺にいそうだな。暴れている牛を探そう。俺が最後尾だからな!」

レイドンは念を押した。4人は暴れ牛を探して歩いて回る。

「フシュッ!フシュッ!!」

妙な音に4人は振り返った。

「ンモー!!!」

暴れ牛はいきなり突撃して来た。

「ままま待て待て!これじゃ俺が先頭・・・何で俺ばっかり!いやあーー!!!」

レイドンは吹っ飛ばされた!

「レイドン!大丈夫!?」

「また役に立ったでござる!」

「そんな言い方・・・アハ!アハハハ!!」

「フヒヒ・・・フヒフヒ!!」

忠成とジュネルは、また笑い始めた!忠成は村正で暴れ牛をペシペシと叩く、笑い過ぎて力が入らないのだろう。

「この!ナハハハ!!」

忠成も必死だ。笑っている場合では無い事は本人も良く分かっている。ブラッドは、仕方なく強烈な炎を放った!

「おお!食べれるかもしれぬ!!」

炎を見た2人は、我に返った。

「焼肉にしてやるぜ!!」

レイドンも走って戻って来た。


レイドンは、火炎放射器の2丁銃で火力を最高まで上げた!!

ジュネルは、生きた植物を召喚しその油を猛牛に振りかけた!!

忠成は、刃先を走らせ焔斬りを放った!一筋の炎が燃え上がる!!

ブラッドは、更に強烈な炎を巻き上げた!濃く紅い火炎が包み込む!!


猛牛はジュウジュウと音を立てて倒れた。4人は猛牛を覗き込んだ。

「あ、これは食べられそうに無いな。身が黒いぞ。モンスターだからな。」

どうやら食べるのは無理な様だ。

「レイドン・・・ごめんなさい・・・もう笑わないから・・・」

「あい済まなかった。怒りを鎮められよ。」

ジュネルと忠成は心底反省した様だ。2人は笑いのツボに蓋をした様だ。

「戻ろう。報告だ。」

レイドンは皆をなだめた。

「手を取り合って、ハイホー。ハイホー。」

またレイドンは歌い始めた。その歌を聞いた忠成とジュネルは、口を抑えてフルフルと震えている。レイドンは結局、笑わせたいのか?ブラッドは、そう思っていた。




「任務終了しました。」

4人は報告した。

「うむ。ご苦労だった。明後日、ベルブルに攻め込む。明日は休みにしてくれ。

我々は進軍の準備を進めてきた。君達が後方の憂いを断ってくれたからな。感謝している。」

軍曹はそう言う。

「え?あ、いや、まあ・・・・」

レイドンは、まんざらでも無さそうだ。

「とりあえず、明日はゆっくりしてくれ。明後日、朝10時、進軍を開始する。ベルブルを奪還するんだ。ではまた明後日。」

4人は職務室を出た。

「明日は休みだなー。ジュネルの歓迎会でもやるか?」

レイドンは提案する。

「それはいい考えでござるな!名案でござる!」

忠成も賛成だ。

「ホント?それなら明日、ホントにピクニックに行く?」

ジュネルは、顔がパッと明るくなる。

「ああ、いいなそれ!今度は本物のピクニックだ!」

何やら楽しそうな事になってきた。

「それなら私、お弁当を用意する!沢山作るから!」

ジュネルは嬉しそうだ。

「よし!明日、朝に集合しよう!楽しみだぜ!」

4人は約束をして解散した。




翌朝、雲一つ無い快晴となった。素晴らしい天気だ。

「おはよーす。」

4人は集まった。

「じゃあ、海を見に行こうぜ。」

「海を?いいわね。素敵!」

ジュネルはゴキゲンだ。皆でジュネルが作った沢山の弁当を手分けして持ち出発した。今日は心持ちも軽やかだ。草原はサワサワと草花が揺れる。

「ああー。気持ちいいなあー。」

「ホントねー。」

4人の顔を爽やかな風が撫でて行く。草原を歩いて行くと海が見えてきた。

「わあー。海だー。」

遠くに見える海は広く、キラキラと光を放っていた。海は、誰がみても良いものだ。4人は、真っ直ぐに海を目指した。目の前の景色は、海が広がる。

「あっ!あの坂から降りられそうだぞ。行こう!」

一行は坂を下りた。足元は砂浜へと変わり、潮風が漂う。

「来たなー。海にー。」

歩きにくい砂浜を真っ直ぐ歩いた。周りに海草などが見える。

「ザザーン・・・ザザーン・・・」

4人は波打ち際まで来た。波の付近の砂は、やや固くなりしっとりとしている。

レイドンとブラッドは、未来に来る前はいつも海にいたが、全く違う景色に見えた。そして辿り着いた海は、とても気持ち良い場所に思えた。4人は、しばらく口を開かず海を眺めていた。それぞれ、考える事もあるのだろう。

「それじゃあ、ごはんにしましょう?」

ジュネルは、にこやかに言った。

「そうだな。そうしよう。」

レイドンも微笑む。ピクニックは、お弁当が一番の醍醐味だ。4人は、いそいそと昼食の準備を始めた。大きなレジャーシートを敷き、鮮やかなお弁当を並べる。

本当に美味しそうだ。

「皆の者、しばし待たれよ!この通信絡繰箱で・・・」

忠成は、お弁当と、海を背景に写メに収めた。

「何だ忠成。染まってんなー。」

レイドンは冷やかす。忠成は自撮り棒を掲げ4人を写メに撮った。

「うむ。良い出来だ。」

忠成も納得の1枚だ。今度は逆に、忠成は過去でやっていけるのだろうか?

「では、いただきまーす!」

一斉に弁当を口に運ぶ。

「うまい!これはうまい!最高だ!!」

レイドンは叫ぶ!確かに最高にうまい。これがピクニックの力だろうか。ただのおにぎりは、金では買えない温かい味がした。

「ウフフ・・・楽しいわね。」

良い景色といい天気と、そして手作りのお弁当。子供の頃には当たり前の光景は、大人になるといつの間にか不可能になっていた。今さらそんな事に気づく。

求めていたのはこの温もりだろうか。腹を満たした4人は海岸線を歩いていた。

「綺麗な貝殻ー。」

ジュネルは貝殻を拾い上げた。貝殻は虹色に光っている。

「む!岩場があるでござる。生き物がいるでござるよ。」

4人は岩場を覗き込んだ。トゲトゲの小さな魚が泳いでいる。

「危ないから触るのはご法度でござる。見るだけでござるよ。」

忠成は注意を促した。

「何だこのタコ。光ってるぞ。」

レイドンは小さなタコを指差した。

「そのタコは毒を持っているでござる。触れてはいかぬぞ。」

忠成は意外と博識だ。4人はレジャーシートに戻り、片付けた。

「よーし。帰るか。明日はまた進軍だ。早めに帰ろう。」

一行はレテに戻り、明日に備えた。




「皆、準備は良いか!!今からベルブルに進軍し、奪還する!命までは落とすな、ケガをした者は引け!良いな!!」

軍曹は大きな声を上げた。

「ベルブルには、難敵、サイクロプスが陣取っている!周囲のモンスターを倒しながらサイクロプスを囲め!いきなりサイクロプスを狙うと挟み撃ちになるぞ!!」

軍曹は更に叫んだ。確かに言う通りだ。

「では進軍!!」

軍曹を先頭に兵は進んだ。レテに集合した兵は長い隊列を連ねた。いつの間にかこんなに集まっていたのか。心強い。

「やはり、戦は武士の生き様よ・・・」

忠成は神妙な顔をする。ジュネルは回復部隊の者と話していた。作戦の確認だろうか。真面目な顔をしている。しばらく行軍しているとドームが見えた。ベルブルだ。その向こうには大きな山が見えた。火口だろう。地底へと続く道筋だ。

「皆止まれ!!」

軍曹は進軍を止め、整列させた。

「ベルブルにはもう人は住んでいない!破壊された建物に見とれていると、いきなりモンスターの攻撃を受ける!気を他に回すな!戦う事だけに集中するんだ!」

軍曹は叫ぶ。戦う事に集中しなくてはならない。

「では、進軍!!」

軍曹は更にベルブルに進む。ベルブルの街並みが見えてきた。建物は破壊され地獄の様だ。最初に未来に来た遺跡の様な街を思い出させる。

「前進!!」

軍曹は走り出した。

「オオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

兵達も続く。ブラッド達も走り出した。ベルブルにはモンスター達が闊歩していた。最早、モンスターの街だ。

「攻撃ィ!!」

軍曹はモンスターに斬りかかる!モンスターは、いきなりの事で戸惑っているように見えた。作戦は軍の有利で始まった!

「ギャアアアアア!!」

モンスター達はあちこちで叩き伏せられていく。ブラッド達も攻撃する!あれよあれよとモンスター達は数を減らした。しかしモンスターもやられっ放しでも無い。あちこちで剣戟の音が響いてくる。

「頼む!回復してくれ!」

「こちらに人を回してくれ!」

周りからはそんな声も聞こえるが、目の前のモンスターで手一杯だ。

「はあっ!!」

忠成はモンスターを斬り裂いた!気が付くと、辺りの雑魚モンスターの姿は無い。

兵は更に街の奥へ歩を進めた。

「グアアアアアッッ!!」

1つ目の巨体なモンスターが姿を現した!サイクロプスだ!サイクロプスは力任せに倒木を振り回した!兵達は吹っ飛ばされる!

「戦えぬ者は引けえっ!!」

軍曹はサイクロプスの前に立つ!

「よっ!久しぶりだな!」

いつかのヒゲモジャの兵士も加勢した!

「サイクロプス!今日で引導を渡してやろう!!」

軍曹は剣を構えた!


レイドンは、自作のショットガンを発射した!サイクロプスの巨体に全て突き刺さる!!

ジュネルは、魔法で皆の筋力を倍増させた!全身に力が滾る!!

忠成は、体を回転させ目にも止まらぬ斬撃を繰り出す!宙を舞う木の葉も細切れになる!!

ブラッドは、地面に掌を叩きつけた!サイクロプスの足元から火柱が幾つも飛び出す!!

軍曹は、高く飛び上がり脳天から剣を振り下ろした!剣は地面までをも斬り抜ける!!

ヒゲモジャは、槍を逆さにし、棒高跳びの要領で体を翻した!そのままサイクロプスの一つ目に槍を突く!!


「ウガアアアアアッッ!!」

サイクロプスは頭の上で手を組み、丸太の様な腕を振り下ろした!

6人全員で受け止める!

「おお、友情パワーって奴?」

ヒゲモジャはニヤリと笑った。

「お嬢さん、アナタには愛情パワーだ。」

ヒゲモジャは首を反対に向けてジュネルにそう言う。ジュネルは極めて苦い顔をした。今後ジュネルはヒゲモジャに近寄らないだろう。

「ハアッ!!」

軍曹はスルリと抜けて、サイクロプスの腹に剣を振る。サイクロプスはよろめいた。

「追撃しろ!!」

軍曹の声に、再度攻撃を仕掛ける!


レイドンは、ショットガンを足元に1点集中させた!サイクロプスは膝を着く!!

ジュネルは、黒い霧でサイクロプスの顔を覆った!視力を奪い取る!!

忠成は、突きの構えで念じた!村正は刀身が伸びサイクロプスの胴体を貫いた!!

ブラッドは、火の玉を辺りに飛ばし一気に集中させた!火の玉は大きな炎の塊となる!!

軍曹は、大きな剣を肩口に叩きつけた!ズブズブとサイクロプスの体に剣が沈んでいく!!

ヒゲモジャは、槍を力一杯投げつけた!更に刺さった穂先に体当たりをかませる!!


「ガアアアア・・・」

サイクロプスは力無く膝を着いた。さすがにこの人数を相手にすれば圧され始めたのだろう。

「サイクロプス・・・これで終わりだ・・・」

軍曹は、思い切りサイクロプスの首に剣を振った!そして、サイクロプスは倒れた。

「皆!我々の勝利だ!ベルブルを取り返した!!」

軍曹はベルブルの地に軍旗を突き刺した!!

「ウオオオオオオッッッ!!」

ベルブルが揺れる。兵達は拳を上げて歓喜した。ベルブルが平和を取り戻したのはいつ以来だろうか?ベルブルには山から下りて来る貴重な水源がある。ベルブルは瞬く間に復興していくだろう。それ程貴重な土地だ。人間は地表を取り返したのだ。軍はレテに帰還した。これまで訪れた街には、号外が飛び交っている事だろう。その夜は、盛大な祝賀会が開かれた。レテには多くの軍機がはためき笑い声が響き渡った。そして、夜が明けた。




「おはようございます!」

4人は軽やかに職務室に訪れた。軍曹もにこやかに向かい入れた。

「うむ・・・で、次の任務は・・・」

「待って下さい!」

レイドンは軍曹の言葉を遮った。

「ここから僕達は、別行動を取ります。だから、ここで傭兵を辞めさせて頂きます。」

レイドンは、真っ直ぐ軍曹に言った。

「・・・・そうか。・・・分かった。君達は本当に役に立ってくれた。今が丁度キリも良い時だ。本当は引き留めたい気持ちもあるが・・・これから、どうするつもりだ?」

軍曹は受け入れてくれた。

「僕達は、地底に向かいます。元々は3人で行動してました。」

「・・・そうか。戦いは続けるんだな。場は違えど我々の目標は同じだ。健闘を祈る。それで、ジュネルはどうするんだ?」

軍曹はジュネルに尋ねた。3人はジュネルに注目する。

「私は・・・・彼らに付いていきたいと思ってます。ただ・・・傭兵を辞めたいとは思いません。どうしたらいいでしょうか?」

軍曹は思いがけないジュネルの言葉に困惑している様だ。

「どうしたらいいって・・・ん~・・・んん~・・・・ああ!じゃあ、こうしとくか!?長期休暇に・・・いや!特別任務だ!ジュネル、彼らと協力して地底に向かいなさい!これ以上の待遇は無いぞ!」

軍曹は、粋な計らいを提案した。

「ありがとうございます!助かります!!」

ジュネルは笑顔を見せた。

「やれやれ・・・まあ、ヒーラーは1人では無いが・・・やれやれ・・・まあ、好んで最前線に立ちたいと言う者もいないと思うが・・・」

軍曹はブツブツ言い始めた。周りの者とのヒイキが無いか考えているのだろう。

「では、今までご苦労だった。ジュネル!報告書、出すんだぞ!!」

「はい!!」

ジュネルは元気よく答えた。4人は職務室を出た。

「やれやれ・・・」

扉を閉める時、最後に軍曹の声が聞こえた。




「ん~またフリーに戻ったなー。あ、今はジュネルが増えたのか。付いて来てくれてありがとうな。」

レイドンはジュネルにそう言った。

「ま、仕事ですから?」

ジュネルはフフンと鼻を鳴らした。

「でも、これからどうするの?地底に行くって言っても、どうやって行くの?」

ジュネルはそう言う。3人は目を丸くした。

「・・・ああ、そうだったな。ジュネルは知らないんだったな。付いて来てくれ。」

「え・・・何・・・?」

4人はレテの街を出た。

「では、久しぶりに・・・・ガルーダ!起動!!」

レイドンは遠隔スイッチを押した。しばらくするとガルーダが飛んできた。

「おお~キタキター!ガルーダ!久しぶりだなー!!」

レイドンは嬉しそうにガルーダを撫でた。

「え?何コレ?飛行機?」

ジュネルはガルーダを不思議そうに見つめる。

「聞いて驚け!ガルーダは、タイムマシンだ!」

レイドンはガルーダを紹介した。

「は!?タイムマシン!?」

ジュネルは眉をひそめた。

「実は!俺とブラッドは、西暦2020年から、忠成は、西暦1500年から来たんだ!」

レイドンはドヤ顔をした。

「・・・・ええええ~~???」

ジュネルはのけぞった。3人は、この旅のいきさつをジュネルに話した。

ジュネルは、ゆっくりと理解した様だ。

「タイムマシンを造ったって・・・凄いね・・・」

「まあ、暇が成せる技だ。こっちも暇逃れで必死だったからな・・・」

レイドンは、あまりカッコ良くない返事をした。

「ベルブルの火口から地底に行けるんだ。マグマにも耐えられるよう改造している。大気圏だって突入出来るぜ?」

レイドンはそう言う。酔って悪ノリで作ったとは言えない。4人は、水や食料を山程ガルーダに詰めた。軍資金ならまだまだある。

「良し。忘れ物は無いな。ガルーダ、発進!!」

レイドンとブラッドはコクピットに乗り込んだ。ジュネルは後ろでキョロキョロしている。眼下にベルブルが見えた。火口も目前だ。

「よし!火口に突入する!!シールド展開だ!」

ガルーダの窓にシールドが閉じる。コクピットにモニターが映し出された。紅いマグマがユラユラと揺れる。

「怖い・・・」

ジュネルは呟く。

「そうだな・・・ゆっくり降りよう。何かあったらすぐ引き返すんだ。」

ガルーダはゆっくりと高度を下げた。今の所、何とも無い。

「マグマに触れるぜ?」

ガルーダの機体はマグマに触れた。更にゆっくり沈んでいく。

「何とも無いか?」

「何とも無いわね。」

「・・・・・・はは、やった。やったな!何ともないぜ!俺達の改造、通用したんだ!よーし!このまま行けるぜ!!」

レイドンは歓喜した。モニター画面は真っ赤だ。

「よーし、どんどん降りるぜ!!頼むぜ、ガルーダ!」

ガルーダは更に沈んで行く。もう5000m程沈み込んだ。その時、フッとガルーダの機体が浮いた。モニター画面の色が変わった。

「うん?落ちてる?飛行モードに切り替えるか。」

落ちてるというか、ガルーダは上昇をする。眼下には、火口が見えた。火山だ。

つまり、火山から入り、反対側の火山から出たのだ。天地が逆転している。

ガルーダは地面に着陸した。

「オエエッ!」

天地が逆転し、気持ち悪くなった忠成は、吐きそうになっていた。レイドンは忠成の背中をさする。丸い地球の地底は球状になっていた。こんな事は初めて知る。地面にびっしりと生えたコケは光を放っていた。このコケが地底を明るくしているのだろう。酸素も排出しているのか、なくてはならない自然だ。レイドンは天を見上げた。何も無い、白い空だ。これまでの学説を覆す現実が、目の前に広がっている。ジュネルもブラッドも辺りの景色に見とれていた。

「オエエッ!」

忠成の気分は中々よくならない様だ。レイドンは、また背中をさする。

「あんたら、大丈夫か?」

誰かの声に一行は振り向いた。そこには、モンスターがいた!4人は武器を構えた!

「待て待て!俺は敵じゃねーって!」

モンスターは手の平を4人に向けた。

「何だコイツ・・・喋ってるぞ・・・」

レイドンは驚いている。いや、4人共だ。

「いやー。人間は初めて見るなー。地上から来たのか?よく来たなー。」

モンスターは感心している。

「何で人の言葉を話しているんだ?」

レイドンはモンスターに尋ねた。このモンスターは危険な感じは見受けられない。

「は?知らねーのか?昔は人間もここで暮らしていたんだぞ?」

モンスターは意外な事を言い始めた。

「なら教えてやるぞ。本に書いてあった事だけどな・・・・」

人間は大昔、この地底でモンスターと暮らしていたらしい。人間とモンスターは言語を共有し、共存していた。好奇心旺盛な人間は、死火山から地上への道を見つけ、移り住んで行ったらしい。地上には季節の変化、宇宙、星、太陽、月など、地底には無い物が沢山あり、人間には住み心地が良かったらしい。特にモンスターと仲が悪かった訳でも無かったらしい。

「ワシらの言葉は昔から変わらんよ。人間と同じままだ。」

モンスターはそう言う。

「地上はモンスターに襲われて酷い有様なんだ。だから俺達は魔王を討伐しに来たんだ。」

レイドンは説明する。

「魔王?ああ、アヌビスの事か。奴は最近、目を覚ましたんだ。」

モンスターは何やら理解した様だ。

「ワシらと違ってアヌビスは神だ。地底を住める様にしたのもアヌビスだ。アヌビスは見返りに人間の生贄を求めてな。人間側も我慢しておったが、住めるのが当たり前になった人間は、アヌビスと対立し、アヌビスを惨殺したのだ。今はアヌビスの怨念が具現化し、モンスターを地上に送り込んでいる。アヌビスが生み出したモンスターは不完全で知能が無い。生みの親と同じ様に人間を殺す事だけ考えているんだよ。」

モンスターはそう語った。

「悲しい話ね。今も恨んだままなんて・・・」

ジュネルは呟いた。

「俺達は、そのアヌビスを倒さないといけない。先祖の代では色々あった様だが、今のアヌビスは人間の敵だ。変な感情を持つべきでは無いな。」

レイドンはそう言った。

「うむ。アヌビスを安らかに眠らせてやってくれ。アヌビスの居所は、ここをひたすら真っすぐ行った所にある。」

モンスターは指差した。

「分かった。色々ありがとう。」

レイドンはお礼を言った。モンスターは立ち去った。

「今の話が、人間とモンスターの歴史だ。モンスターは全て敵では無かった様だな。」

レイドンはそう言う。考えを改めた様だ。

「行こう。アヌビスの所に。」

4人はガルーダに乗り込んだ。ガルーダは飛行する。

「真っすぐだ!」

ガルーダは飛行速度を上げた。空に黒い点が現れ始めた。

「飛行モンスターがいるぞ!!」

鳥獣系や翼竜モンスターは、ガルーダに襲いかかって来た!

「こいつらは悪いモンスターだ!」

レイドンはガルーダのロケットを発射した!次々とモンスター達を撃墜していく。

「やっぱガルーダを戦える様にして正解だったろ!?」

更にガルーダの機銃が吠える!

「どけどけ!ガルーダ様のお通りだ!!」

ガルーダは尚も飛行を続ける。

「何か見えて来たぞ!」

ピラミッドの様な建造物が見えた。

「降りてみよう!」

ガルーダを着陸させ、ピラミッドの前に立った。異様な空気が漂う。

「ここにアヌビスはいるんだな。まさにそんな建物だ。」

レイドンはそう言う。

「瘴気が凄いでござる。不吉な・・・」

忠成は危険を案じた。

「ホント不気味・・・怖い・・・」

ジュネルは肩をすくめる。いつの間にか、白い空は、紫の様な色味がかかり辺りに霧が立ち込める。一行は重い足取りでピラミッドの入り口に進んだ。長く一本道の

通路は延々と続いていた。

「ん?何か見えるぜ・・・?あれは・・・炎か?」

レイドンは呟いた。確かにユラユラと揺れるモノが見える。炎の前に人影が見えた。祈祷している様だ。

「お前は・・・アヌビスか!?」

レイドンが叫ぶ。炎の前の人物は振り向いた。4人は戦慄が走った。その人物の顔は骸骨だった!

「我は・・・創造神、アヌビス・・・人間は皆・・・コロス!!」

アヌビスはおぞましい声を上げた!!

「コイツを倒せば全部終わりだ!行くぞ!!」

4人は身構えた!


レイドンは、液体窒素の放射器を放った!一瞬にして全てが氷つく!!

ジュネルは、聖なる輝きを放った!瘴気は中和され清浄されていく!!

忠成は、村正を分身させて二刀流の構えを取った!十字に切り裂いた斬撃が破壊の道筋を創る!!

ブラッドは、天空より巨大なつららを創って落した!激しく地面が揺れる!!


「コロス・・・人間・・・コロス!!!」

アヌビスは、深い怨念の叫びを上げた!魑魅魍魎が現れ、4人を喰い刻んでいく!!

「くっ!負ける訳にはいかない!!」

4人はまた構える!


レイドンは、一際大きなバズーカ砲を放った!衝撃で後ろに吹き飛ぶ!!

ジュネルは、光の神を降臨させた!光の束がアヌビスを打ち抜く!!

忠成は、村正を巨大化させ叩きつけた!凄まじい轟音が轟く!!

ブラッドは、ピラミッドを半分に切り取りアヌビスに撃ち落とした!大量の瓦礫が崩れる!!


「小賢しい!!死ね!!」

アヌビスは、4人を持ち上げ真っ黒い空間に閉じ込めた!その空間で永い爆発を起こし続ける!!

「ぐああああっ!!」

4人は倒れた!

「もう・・・だめだ・・・」

4人は起き上がる事が出来ない。

「これで終わりだ・・・」

アヌビスは、黒い瘴気を纏った掌を4人に向けた。その時、ブラッドの目の前に古文書が開いて落ちた。ブラッドは、その古文書をただ、力無く読み上げた。ポウッと上がった小さな光は、アヌビスの体に入り込んだ。

「これは・・・・」

アヌビスは、何やら辺りを見回している。ブラッドが読み上げた魔法は、記憶を呼び覚ます魔法だった。

「私は・・・人間に・・・殺されて・・・・」

アヌビスは記憶を辿っている。

「これは!!私の体は、骸になっているでは無いか!!」

アヌビスは愕然としている。記憶が戻り、我に返ったのだろうか。

「私は、果てしない時間を彷徨っていたのか・・・・」

アヌビスの体から瘴気が抜けていく・・・

「アヌビス・・・どうする気だ・・・?」

レイドンが体を起こした。

「この時代の人間達に怨みは無い・・・私は、また眠りにつく・・・今度は・・・もう目覚める事も無い・・・・」

瘴気は完全に消え去り、アヌビスは、天を仰いだ・・・・そして、そのまま消え去った・・・・

「・・・これは・・・勝ちでは無いが・・・・目標は、達成出来たのか・・・?」

レイドンは、ゆっくり立ち上がった。

「何とも煮え切らぬ最後よ・・・」

忠成も立ち上がる。

「全然上出来よ・・・」

ジュネルも立ち上がった。最後にブラッドも立ち上がる。

「はは・・・はは!何とかなったな!ハハハ!!」

「命からがらでござる!ハハハ!!」

「もー!最初からやってよブラッドー!!」

ブラッドは目を丸くして首を傾げた。ピラミッドは見事に崩れ落ち、辺りのモンスターも消え去っていた。休憩した後、ジュネルは皆を回復した。4人はガルーダに乗り込み、地上に戻った。




「只今戻りました!!」

ジュネルは軍曹に報告した。ジュネルは地底の出来事を全て話した。モンスターは全て悪ではない事、言葉を使う事、ジュネルの報告は、この時代を変えていくだろう。4人は職務室を出た。

「自分達の時代に帰るのね・・・・」

ジュネルは見送りに来てくれた。1人、ガルーダに乗っていない。

「ああ・・・元気でな・・・」

レイドンはそう答えた。

「色々ありがとう。貴重な体験が出来た。」

ジュネルはニコリと笑った。ジュネルを置いてガルーダは上昇した。ジュネルは手を振っている。ガルーダは西暦3000年から姿を消した。




「拙者は合戦場に戻るでござるよ。」

ガルーダは、西暦1500年に戻っていた。忠成と出会った時刻だ。忠成は、いつの間にかスマホをケータイ屋に返していたらしい。この時代には、やはり必要ないと思ったのだろう。

「負け戦をひっくり返すでござる。今回の旅で拙者も、格段に上達したでござるよ。」

忠成は笑っている。

「ホントは寂しいでござるが、ここでお別れでござる。ずっと忘れないでござる。」

忠成は最後にそう言った。忠成を残し、ガルーダは上昇した。忠成も手を振っている。ガルーダは、西暦1500年から姿を消した。




「シュン!」

ガルーダは、レイドンの家の上空に現れた。ガレージにガルーダを入れる。

「色々あったけど・・・楽しかったなー・・・」

レイドンは何やら思い出している。仲間達と別れたのが寂しいのだろうか。

「レイドン・・・話がある・・・」

ブラッドはレイドンにそう言った。アヌビスが消えた後、記憶が戻っていたのだ。

自分が、異世界の人間である事、そして、もうすぐ消えてしまう事。それは、仲間達には言いたく無かった。時代は違えど、せめて、自分はこの世界の人間であるとそう思いたかった。

「そうか・・・皆、バラバラになってしまうんだな・・・」

レイドンは、あっさり信じてくれた。こんな話も慣れて来たのだろう。

「俺は、ガルーダを解体しようと思うんだ。時代を悪用しようとする者も現れるかもしれないし、何、ガルーダの図面は、俺の頭の中にあるさ!」

レイドンはそう言う。ブラッドに残された2日間はガルーダの解体を手伝う事にした。




翌朝・・・・

「ブラッド!これを見てくれ!」

レイドンは本を持って来た。歴史の本だ。

「御門 忠成。幾多の戦場を駆け抜け、戦を勝利に導く。その功績が認められ、城主にまで成り上がる。」

そんな歴史は始めて聞いた。歴史が変わってしまったのか。

「やるなー忠成の奴ー。歴史変えちゃったみたいだけど、まあ、いいか!」

レイドンとブラッドは笑っている。

「色々ありがとな、ガルーダ・・・必要になったら、また組み立てるから。」

2人はガルーダを解体し始めた。時間が巻き戻されていく感じがした。





「今日で、お別れなんだな・・・」

2人はガレージにいた。骨組みさえもバラバラになったガルーダの前にいる。

10・・・9・・・8・・・

カウントダウンが始まった。思い残す事なら、山程ある。

「俺達はずっと仲間だぜ!?いつでも遊びにこいよ!?」

2人は握手を交わす。

7・・・6・・・5・・・

「また暇になんのかなー。まあ、何かするさ!」

レイドンは、ニコリと笑う。

4・・・3・・・2・・・

「じゃな!元気でな!」

ブラッドは、笑って頷いた。

1・・・0。

ブラッドは、ゲームの中から姿を消した。




「お疲れ様でした。」

ブラッドは目を開いた。

「ゲームクリアです。お見事です。」

ウィリアムはそう言う。隣の部屋からは、テレビの音が聞こえた。これでドラマの続きが見れる。ブラッドは、満足気だ。

「ウイルスはまだまだ存在します。ぜひまた来て下さい。」

ウィリアムの言葉に頷き、ブラッドは政府の建物を後にした。今日は金曜日だ。早く帰って、ドラマを見る準備をしなくてはいけない。ブラッドは、またここに来る事を誓い、家路に急ぐ。街中にはテレビを見ている人が、いつもの様に笑っていた・・・・



                            続く

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短編ドラマシリーズ「ゲーマー・サバイバル物語3」 溶融太郎 @382964

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