第48話 ウィズの結婚

「みて! ヒロシ、また、ウィズが」

俺の部屋の窓からウィズが、こそこそ宿を出ていくのが見えた。

ウィズが昨夜に出かけた事を、次の日の朝、聞いたがはぐらかされてしまった。

昼間も何か、そわそわしてやがったし、怪しい。

怪しいぜ! ウィズ!

俺は、ミロースのお尻にしがみつきながら、思った!


そして、小さな胸に手をのばす。


「ぁん、ヒロシ、今日は……ダメ、ウィズが……あ……」


そして、この夜も結局、愛し合った。




次の日の朝、食堂でウィズが起きてくるのを待つ。

その間、ミロースの後ろ姿を見る俺。

今日も、可愛いぜ、ミロース!と、昨晩を思い返しながら、キリッとした面持ちで俺は、ウィズを待った。


眠そうな顔で、ウィズがやって来る。

ミロースが、俺に目配せした。

まかせろ! 尋問には、自信がある!

ま、昨日は、失敗したのだが……。


俺は、ウィズに向かって歩いていく。


「ウィズ、昨日の夜、何処に行ってた? 吐け」

俺は、ウィズの胸ぐらをつかんで言った。


「なんて、尋問の仕方だ」

その様子をみた、ミロースがひきつった顔をして呟いた。


「な、なんですか突然」

ウィズが生意気に、 俺に意見する。

「何処に行ってたか、言え! 言え! 言えー!」

グイグイ首を締め上げて俺が尋問した。


「く、くるし……い……」

そう言って、顔が真っ赤になるウィズ。


そして、ウィズの顔が紫色になってきた。


ガツ!


「ぁ痛ー!」

俺は、殴られて、ウィズを放してしまった。

てか、いてーよ!

俺は、頭を押さえて踞った。


「バカ、ウィズが死ぬだろう」

ミロースが片手に椅子を持って言った。

俺は、止めるのに椅子で殴る事はないだろうと、ミロースを見ると、呆れた顔で俺を見ていた。


「ゲホ、ゲホ……か、関係ないっす」

ウィズが走って出ていった。

「あっ! 逃げた」

俺は、頭を押さえながら言った。

「追うぞ! ヒロシ!」

ミロースが走り出す。

俺は、頭を殴られたので、もう、やる気が失せた。


ミロースが振り返った。

そして、着ている俺の制服をスススっとたくしあげる。

「!」

もうちょっとで見える!

ミロースが悪い顔で笑っている。


小悪魔め!


だが、俺は、やる気が出た!

「待って~、ミロース」

気がつくと、ミロースを追って走り出していた。



「てか、はえーな。 ミロースもウィズも!」

俺は、必死に走った


あれ? 村長の家の方にむかってると思った。


ミロースが片ひざをついていた。


俺がやっとの事で追い付いて、

「はぁ、はぁ、み、ミロース、ウィズは?」

俺は、ゼーゼー言いながら聞いた。

ミロースが、口許に人差し指をたてた。


「中だ」

小声でミロースが俺に言った。


俺は、慎重に建物に近づく。

ここって、昨日の未亡人の家じゃないかと思った。


コソコソ


俺は、そ~っと、窓から様子を伺う。

「はっ!」

俺は、声が漏れないように口を手でおおった。


ウィズと未亡人が抱き合ってる。


「なんて、破廉恥な……」

俺は、純情、清純派なので、目の前の光景に驚いたのだ。


未亡人と間男……。


興奮した。


気がつくと、隣にミロースがいた。

俺の角度から、胸元がバッチリだ。

立った。

いや、座ってるんですけどね。


「み、ミロース……」

俺は、ミロースを見つめた。

ミロースは、ウィズ達を見てる。

「我慢できん!」

俺は、人様の家の庭先でミロースを押し倒す。

「や、やめて……こんなとこじゃ」

ミロースがはずかしがった。


いや、ミロース、変化の度に平気で裸になってたじゃんと思ったが、これはこれで興奮するので、俺は、


気にしない! むしろ、良い!

と、思った。


「良いではないか、良いではないか」

俺は、町娘を襲う悪代官の如く言った。

ミロースにキスをする。

ギンギンにおっ立てた俺がミロースの服に手をかけた。


「愛してるよミロース」

ミロースを見つめながら、服を脱がせにていく。


「私も、ヒロシが好き……」

トロンとした表情でミロースが答えた。


ガチャ


「ちょっと、人ん家のまえで、何をしてるんですか?」

ウィズが窓から顔を出して、聞いてきた。


「いや、ミロースの肩にゴミがついていたから、取ってあげていたんだよ」

と、俺は何事もないように言った。


「中に入りませんか?」

間男と逢い引きしていた未亡人が言った。


「へへへ、それじゃ、お邪魔しますぅ」

俺は、ヘコヘコしながら、ミロースの手をひき玄関に向かった。



中に入ると、先程、未亡人とウィズが抱き合っていたリビングに案内されて、ソフィーに座るよう勧められた。

俺とミロース、ウィズと未亡人が、テーブルを挟んで座った。


「で、ウィズ、どう言うことだ」

キリッとして俺が聞いた。

「旦那さんを亡くした、ユリスの相談を聞いている内に、へへへ」

頭を掻きながらウィズが言った。

へへへ、じゃねーよ!


手が早い! 不潔だよ!

と、清純派の俺は、思った。


「奥さんは、旦那さんを亡くされて、日がたってないのに……いいんですか?」

ミロースが聞いた。

未亡人は、うつむいている。

「あんた、ウィズの事、好きなのか?」

俺が、未亡人に言うと、未亡人が頷いた。

「ウィズは、ユリスの事が好きか?」

ウィズに聞く。

「好きっす! こんな気持ち、初めってす!」

ウィズが、言った。

そんな「っす」ってキャラだったっけ?

と、思ったが、それならいいじゃんと、思った。

人を愛するってのは時間じゃない。

「ちゃんと、責任もって、ユリスを一生守れるか?」

俺は、確認した 。


「守るっす!」

ウィズが力強く言った。

あとで、 「っす」は、やめさせようと思った。


「ユリスは、どうだ?」

俺は、ユリスを見た。


「ウィズを守ります」

ユリスも力強く言った。


俺は、二人をじっと見る。


よし!


「じゃ、お前ら、結婚しろ! 俺とミロースも結婚したから」

俺は、そう言ってミロースとキスをした。



なんだかんだで、ウィズに嫁さんが出来た。


「あ、そうだ! みんなに報告しよう!」

ウィズが、ブレスレットに話しかける。


ウィズ

「カイ! みんな! 聞こえるか?」

カイ

「ウィズ、生きてたか? 全然連絡ないから、心配してたぞ!」

ウィズ

「いや、すまん。 いろいろ、忙しくてな! それより、俺、結婚するぞ」

カイ

「は?」

バン

「おめでとう!」

フィリー

「おめでとう!」

レイラ

「お前、結婚できたの?」

プロム

「そんな事より、早く、ヒロシ様を返してください」


みんなの祝福をうけて、ウィズが涙目になってる。

ウィズ

「みんな、ありがとう! 嫁さん連れていくから、待っててくれ! それと、ヒロシとミロースも結婚するぞ! さっきも、キスしてた」


俺は、ビクッとして、固まった。

ウィズ、お前は、バカなの? バカなのか?

なぜ、いきなり俺達の事まで言っちゃったの?

俺は、鼻水をたらしながら、ウィズを見る。


ウィズ……なんて、笑顔だ。

俺には、奴の笑顔が悪魔に見えた。


俺のブレスレットが、鳴った。


レイラ

「ヒロシ、聞こえるかな?」

「……はい、聞こえます」

レイラ

「そう、早く帰ってきてね」

それだけ言って通信が切れた。

優しい声が、こわかった。

尋常じゃない汗が吹き出す。


直ぐに、次の通信がきた。


プロム

「ヒロシ様、ミロースは、第三婦人ですから、その辺キチッと話をつけて帰ってきてください」

通信が切れた。

なんて、冷静に、かつ事務的に言うんだプロム、怖いぞ。


俺は、通信が切れたブレスレットを見つめて固まっていた。



それから、

「ハハハ、こんなん言ってるよー……ハハハ」

俺は、みんなを見て、乾いた笑いをして強がってみせた。



ウィズを残し、ミロースと宿に戻る。


俺は、死刑に向かう出発の前に、ミロースと楽しむ事にしたのだ。

どうせ、ボコボコにされんなら、その前に、出来るだけ楽しもうと思ったからね!


俺達は、燃えに燃えた。




そして、次の日、この村を後にしたのだった。

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