第47話 嫁さん探し

ミロースが頑張って、ゼノス王国まで俺達を乗せて飛んでくれた。


街中に突然ドラゴンが降り立ち、当然、大騒ぎになった。

だが、街の人が俺の顔を確認すると、あぁ、また、あの人ね。 と、言った感じで何か納得された。

俺的には、納得が行かないが……



でだ、その足で、俺は、行きつけの奴隷屋に向かった。


「オッス、親父さんいる? 今日は、奴隷にしたい犯罪者、連れてきたんだけど、いっちょ頼むわ」

俺は、店の受け付けに言った。


縄で縛ったギアが、激しく抵抗する。

「ヴー! ヴー!」

何? どうした?

優しい俺が猿轡をはずしてあげたら、

「殺してやる」

だって!

どう思う? この生意気な態度!

早く、やっちゃってと親父さんにバトンタッチした。

ギアは、さんざん抵抗したようだが、店の親父さんが手慣れた感じで奴隷紋を刻み込んでくれた。

さすが、専門家、あざやか!

俺は、職人技に感嘆の声をあげる。

後は、専門家に任せて、俺達は城に寄らずに俺の経営する宿屋に泊まった。



次の日、俺は奴隷となったギアを、ちゃんと強制労働施設に入れてあげた。

俺の奴隷への命令は、この施設の職員の言うことを聞いて、真面目に働くこと。

それだけだ。

真面目が一番。

命令したら他に用がないので、強制労働施設を後にする。

奴隷になった他の犯罪者達と仲良く、国の発展に協力するんだぞ! 腐ったみかんのお前が更正してくれる事を俺は願った。

元気でなギア。

二度と会うこともないだろう。



そして、俺達は、早々にゼノス王国を旅立つ。

なぜなら、本来の目的、ウィズの嫁さん探しの途中だからね。



「あぁー! また、きた!」

ジャックが空に向かって叫んだ。

空にホワイトドラゴンが見える。

また、面倒な事に巻き込まれたくない!

ジャックは、家に入り、鍵をかけたのだった。


俺達は、村長の家の前に降り立った。

そして、いつものようにミロースが人化したので、服を着せた。

さぁ、英雄の凱旋だ! さぞ歓迎されることだろうと、村の家のドアに手をかけた。


ガチャ、ガチャ。


鍵が、かかっている? なんだよ、留守か?

残念だが、村長への挨拶は、また今度にしよう。


俺達は、村の食堂に向かう事にした。


隣の家のオーガの女が洗濯物を干していた。

「どうも」

俺は、挨拶をして、通りすぎようとしたら、女が駆け寄ってきた。

「先日は、どうも、ありがとうございました」

何かお礼を言われた。

「は?」

俺がキョトンとしていると、

「主人を殺され、賠償金を勝ち取っていただいたのに……お礼をする間も無く行ってしまわれたので、お礼が遅くなってしまいました……申し訳ございません」

女が、ペコペコして言った。

ギアの触手で殺された男の嫁さんか……

俺は、なんて言ったら良いのかわからなかった。


「すいません。旦那さんを助けれませんでした」

ウィズが、残念そうに言った。

「いえ、村の為に戦死したのですから……でも、主人がいなくなって、これからの生活を考えると……途方にくれていました……ですので、お金、本当に助かりました」

女が、涙ながらに言う。


「村長にも、挨拶されました? 村の為に戦ってくれた恩人ですもの、きっと。歓迎されますわ」

女が涙を拭きながら言った。

「いやー、奥さん、村長さん留守みたいで」

俺が言ったら、

「えっ、さっきまで、そこにいたんですけど」

奥さんが、そう言った。


ほう……


俺は、村長宅を見た。

窓からこちらを伺う村長が見えた。


あっ、俺に気づいて隠れやがった!


「奥さん、旦那さんの事、残念でした。 賠償金は、当然です! だから、気にしないでください。 で、ちょっと、村長に挨拶してきますね~」

俺は、にっこり笑った。

「ウィズ、ミロース、奥さんとお話しててくれ。 俺は、じっくり挨拶してくるから」

俺は、そう言ってウィズと、ミロースを残して村長宅に歩いていく。



ささ、さささ


俺は、身を屈めて、先程村長が覗いていた窓の下に隠れた。

しばらく待機してから、タイミングを見計らい、頭をあげる。


外を伺う村長ジャックと目があった。


「やあ」

俺は笑顔で言った。

ジャックが固まっていた、



村長の家のドアが開いた。

「お、これは、ヒロシではないか! いつ村へ? 全然まったくもって、これっぽっちも、気がつかなかった」

汗をダラダラかいて、ジャックが言った。

「そうか、そうか、じゃ、中で話そうか」

俺は、ジャックの肩を抱いて、家の中に入りドアを閉めた。



ウィズ達が、隣の家の前から様子を見ていた。

「あ、村長いたんだ」

ウィズが言った。

「あら、肩なんか組んじゃって、仲がいいんですね」

オーガの奥さんが、ほほえましく言った。

「ヒロシは、仲良くなるのが上手いからな」

ミロースが、笑って言った。

「それじゃ、ヒロシさんが帰られるまで、中でお茶でもしましょうか」

奥さんがそう言って、ウィズと、ミロースを家に招いた。



野上博志が村長宅から戻ってきた。


なぜか、ボロボロで、鼻血をだしている。


「いや~村長と、もりあがっちゃって転んじゃった」

ヒロシの言葉を受け、ミロースは、絶対嘘だと思った。

ふと、村長宅を見ると、ドアの前にボロボロの村長が立って、こっちをみている。

何をやっているんだお前は? と、ミロースは、ヒロシを見て溜め息をはいた。



さて、村長と拳で語り合った俺は、本日の宿を探す。

やっぱ、軽キャンに乗って来ればよかったと思う。

こう言うとき困るからね。

軽キャンは、最高だ!

軽キャンが大好きだ!

と、改めて強く思った!

いや~軽キャンピングカー最高!

最近、軽キャンが登場していない事に不安を覚えた俺は、とりあえず、考えた。

って、何でだ?

俺は、なぜ、考えた!


「ヒロシ、何をしている?」

ミロースに呼ばれた。

立ち止まって考えていたようだ。

俺は、前の方にいる、ウィズとミロースの元へ走った。


食堂の二階が宿になっている。

質素な部屋だが、宿屋があるだけ助かる。

宿がない村なんて、ざらだからね。


うまい具合に各自、個室だ。

助かる。

安心して、オナ……ゲフンゲフン、プライベートが守られると思った。


下の食堂で夕食をとった俺達は、明日の朝、ここに集合することにして、部屋に戻った。



木の窓を開けて、村を眺めた。

あんな騒ぎがあったなんて考えられないくらい静かで平和だ。

ウィズに合う女がいれば良いな。

スッキリして、賢者タイムの俺は、そんな気持ちになった。


コンコン


ノックする音が聞こえた。

俺は、音速でズボンを履き、焦りながら、ドアへ向かった。

「いま、あけますから」

そう言って、ドアをあけた。


ミロースが立っていた。


「どうした? ミロース」

言いながら、エロい用事か? ならば、なぜ、する前に来ない! と、思った。


「ヒロシ……」

ミロースが話しかけてきた。

俺は、何も言わず、部屋に招きいれ、ドアを閉じた。


「ミロース、少し時間をくれ、今、回復薬を飲むから」

俺は、バックから、回復薬を取り出して、飲む。

「なぜ、今、回復薬を飲む?」

ミロースが言ったが、そりゃ、こっちも事情があってだな、お前が、もっと早く来てれば……と、飲みながら思った。

「お前は、バカだから、私との交尾でも考えてるのだろうが用件は違うぞ、さっき、ウィズが、宿から出掛けた」


ブフォー!


ミロースの言葉に俺は、回復薬を吹き出した。


「ば、ばっきゃろー、そ、そ、そんな、わけないだろー」

しどろもどろで、俺が言った。


ん?


「なんで、ウィズが? 知り合いなんて、いないだろう?」

俺は、袖で口を拭きながら、聞いた。

「そんな事、私が知る訳ないだろう、それと、お前が交尾を考えた事は、レイラとプロムに後で報告しとくから」


ミロースの言葉に、目が点になる。


「ミロースさん、そんな事、考える訳ないじゃないですかー」

俺は、土下座して言った。


顔をあげると、ミロースがブレスレットに話しかけようとしていた。


「やめて! やめてくださいよ、ミロースさん! お願いです」

俺は、ミロースにしがみついて言った。


ミロースが俺を見下ろしている。

なんて、冷めた目を……

すると、ミロースの口角が上がった。


「へ?」


俺は、間抜けな声をだした。


なぜって?

だって、ミロースが俺にキスをしたから。


意味がわからない。


あれか、死の前、最後のキス的な?


呆然としている俺に、ミロースがキスをしてくる。

舌が……入ってきた……

ん…ん……


キスが終わり、俺の顔を両手でつかんだいるミロースが笑っている。

「冗談、二人には、言わないよ、で、ウィズ探しに行く?」

って、言った。


ウィズの件……今日は、いいや。

明日の朝、本人から聞けばいい。


今は、この、いたずらっぽく笑ったミロースと一緒にいたいと強く思った。


俺は、ミロースを抱きしめる。


「私の事が好きか?」

ミロースが聞いてきた。

「お前は?」

俺は、質問に質問で答えた。

「ズルい、聞いたのは、私だぞ」

ちょっと怒ったように言うミロースが愛しかった。


「好きだ、お前も嫁さんになってくれ」

俺の言葉に、ミロースが

「なってやる」

だって、そっけないなぁ。

でも、そんなミロースが、俺は大好きなのだ。


俺とミロースは一晩中愛し合った。


大好きなミロースが、俺の嫁さんになってくれた、

一生大事にしようと思った。

一生守っていくと思った。


ただ、レイラとプロムに殺されるかも! とも思った。

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