第46話 交渉
俺、ウィズ、ミロース、ギア付き柱、ギアの軍の幹部、この村の長の6名が野外に設置された会談場所に移動した。
ギアの柱を固定したあと、各自が席につく。
「そんじゃ、まずは、自己紹介から、俺は、野上博志。 ヒロシとでも読んでくれ、こっちが、ウィズとミロースだ」
俺が言うと、オーガの村長が立ち上がった。
「俺は、この村の長を任されている。 ジャックだ。 どっちも、村から早く出ていってもらいたい」
俺達は、味方だろ? って、思った。
「私は、ライル。 ギア様の部下だが、不在のギア様の代理で、軍の指揮をとっている」
ライルが落ち着いたそぶりで、言った。
「そんじゃ、ま、始めッか」
俺は、ライルを見つめて言った。
俺
「確認だが、アレ、あんたらの大将なの?」
ギアを指差してライルに聞いた。
ライル
「そうだ。 ギナ様のいる、チャングム王国への侵攻軍の指揮官だ」
俺
「ん? ギアは、ギナの弟じゃないの?」
ライル
「ギナ様に、謀反の嫌疑がかかっていた、そして突然、定期連絡をしなくなったのだ、それで、弟のギア様 自らが立ち上がられ事態の把握と謀反の場合の討伐に向かわれたと言うわけだ」
俺
「なんで、ギアは、一人で行動していた?」
ライル
「そ、それは……ギア様の悪い癖だ」
ライルの歯切れが悪い。
俺は、ギアを見ながら、どうせ、村人いたぶって楽しむクソ野郎なんだろうなぁと、思った。
ライル
「そんな事より、まずは、ギア様の拘束をといてもらいたい」
俺
「ダメだ、何の合意もとれていない」
ライル
「話にならんな、我々は、このような村さっさと通り抜ける。 村人に手を出さないと、約束しよう」
村長の顔が、明るくなった。 バカめ。
俺
「わかった。 で、こちらは、負傷者、及び、死者がでている。 その賠償の話をしようか」
俺は、テーブルに肘をつけて顔の前で手を組んで言った。
ライル
「賠償? 正気か?」
ウィズ
「暴力で、どうこうしようなんて、最低だぜ!」
お前さっき、こん棒でギアを滅多打ちにしてたじゃん! と、村長のジャックは、思った。
俺
「かわいそうに、何の罪もない善良なアイツが、殺されるなんて……」
死んだ、オーガの事など、俺は何も知らないが情に訴えかけてみた。
ジャックは、お前、今日きたばかりだろ? と言う顔で、野上を見た。
ライル
「話にならん。 皆殺しにされたいのか?」
俺
「ライル、そんな口きいて大丈夫か?」
俺は、ギアを見た。
ライル
「脅しか? ギア様に何かあれば、確実にお前らは、死ぬ事になるぞ」
ライルが椅子にもたれて言った。
「お前らを殺さないで、通りすぎる、これが、我々の最大の譲歩だ」
俺は、フッと笑った。
俺
「バカか? 俺達も死ぬ気で戦うぞ? お前らの大多数が死ぬだろうね。 戦略的に意味のない場所で戦力を削っていいの? 金で解決した方がいいんじゃない?」
ライル
「大きなお世話だ」
ウィズ
「よく、考えろ!」
おかしな格好をしたウィズが言った。
ライル
「払う気などないが、要求は、幾らだ?」
バカめ、交渉の余地ありと自分で白状してるようなもんじゃないかと、俺は思った。
俺
「そうだな、お前らの持ってる金すべてだ。 足りない分は、武具や食料を置いていけ」
ライル
「ふざけるな!」
ライルが思わず立ち上がって言った。
俺
「座れよ、ライル。 皆殺しにするぞ」
今度は、俺が椅子にふんぞり返って言った。
ジャック村長
「そこまで、してもらわなくても、遺族が、これから生活していくのに幾らかもらえれば……」
ジャックも、俺の話に欲がでたのか、賠償金請求にのってきたようだ。
俺
「やさしいなぁ、村長は」
俺は、村長をみて言った後、ライルを見る。
「これは、支払うしかないなぁ、お幾ら支払えますか? ラ・イ・ル」
ライル
「お、お前ら、ふざけるな!!」
ライルが剣を抜こうと剣に手にかけた。
ミロース
「抜いたら、終わるぞ」
ミロースの鋭い眼光にライルが怯んだ。
ライル
なんだ? こんな小娘に睨まれて俺は、恐怖した……だと?
訳がわからない。 こんな奴らと、もう、かかわり合いたくないと、ライルは思った。
剣から手を離し、椅子に腰かけるライル。
ライル
「……金貨、10枚だ」
うつ向きながら言った。
ジャック村長
「ほ、本当か?!」
俺
「冗談だろ? 遺族には、金貨100枚。 後、負傷した者一人に付き、金貨30枚、精神的肉体的に迷惑を被った俺達に金貨500枚だ」
俺は、ニヤニヤして言ってやった。
ミロース
「ヒロシ、欲張るな。 ライル、我々の分は要らないから、遺族と負傷者に賠償してやれ」
ミロースが腕組をして言った。
俺も、別に金が欲しい訳じゃない。
嫌がらせに言っただけだから、別にどうでも良かったので、ミロースの意見を否定しない。
ライル
「……わかった。 ギア様を解放してくれ」
俺
「合意成立だな」
俺は、笑顔で言った。
「そんじゃ、金の支払いが済んだら、解放してやるよ」
そして、交渉は、賠償金の支払いが決定して終わった。
ライルが、待たせていた軍に戻ると、素早く支払いの準備に取りかかった。
ジャックは、負傷者やその家族、死傷者の遺族を広場に呼び寄せる。
準備の間、、オーガの奴等が食べ物や、土産を軍人達に売っていた。
たくましい奴等だと思った。
順次、滞りなく支払いが完了した。
「間違いないな? よし、ミロース」
俺は、支払いが問題ない事を確認した後、ミロースを呼び寄せた。
ミロースが服を脱ぐ。
俺は、服を受けとると、少し離れた場所に移動した。
オーガも、ライルも? と、なって様子を見ている。
ミロースが変化していく。
「……ほ、ホワイトドラゴン……」
ライルがミロースを見上げながら言った。
「ライル、皆殺しにされなくて良かったな」
俺は、ライルに言って笑った。
ミロースが、固定されていたギアの柱を引き抜き、それを、ライル達、軍人の近くに置いた。
「ギア様!」
ライルが素早くギアを拘束していた縄を剣で断ち切り、猿轡をはずした。
「ライル! 奴等を殺せ、皆殺しだ!」
ギアが叫ぶ!
が、無視してライルは、ギアの目隠しをはずす。
ギアが、ミロースを見上げる。
「な、なんで、伝説のホワイトドラゴンが、こんな場所に……?」
ギアは状況を飲み込めず、混乱していた。
「ギア様、我々の敗北です。 本来の目的地へ急ぎましょう」
ライルの言葉にギアが押し黙り、ただ、憎悪の視線を俺にむけていた。
うん、奴は危険だ。
後で、始末するか? と、俺はギアを見た。
それから、
「ライル、ちょっといいか?」
俺は、ライルを呼んだ。
「どうした?」
呼びつけられ、不満そうに歩いてきたライル。
「ライル、ギナだけど、もう死んでるから」
俺は、小声で耳打ちした。
「な! お前……」
ライルが目を見開いた。
「で、ギナを殺したの、お前らの手柄にして、国に帰れ」
俺が言うと、ライルが、? となってる。
「チャングム王国と俺、ちょっと関係あるから、攻められると困んだよ」
ライルが、考えこむ。
「でないと、お前ら、全滅させないといけなくなるけど、それも、嫌だからさぁ」
俺は、ライルの肩に手を回して言った。
「しかし、ギア様には、なんて? 納得しないぞ、あの人」
ライルが困っている。
「だから、殺るんだよ。 アイツ」
俺は、ギアを見る。
まだ、睨んでるよアイツ。
「いや、しかし……」
ライルがギアと俺を交互にみて、悩んでる。
俺は、にっこり笑った。
「じゃぁ、殺さないから、置いていけ。 俺達がギアを預かるから、国には、戦いの中でギアとギナが相討ちで死んだとか言っとけ。 決まりな」
そう言って、ライルの胸をポンポンと叩いた。
ライルが、反論してこない。
了承したなと思った。
俺は、振り返ってギアに手を振る。
「おーい、ギアー!」
ライル達、軍隊が村を離れて国に向かっていった。
「行ったな」
俺が軍隊を見送って呟くと、
「そうですね」
と、ウィズが答える。
「ちょっと、コイツどうするんだ」
ライル達に簀巻きにされたギアを指差してジャックが言った。
「約束したから、殺さないで、連れていきます」
俺は、嫌々、ジャックに言った。
「それより、村長、このウィズに合う娘さん、この村にいませんかね?」
俺が、笑顔で言うと、
「いや、お前、頭おかしいんじゃないの? こんなんあった後に女紹介しろとか……」
ジャックに言われて、それもそうだなと思った。
「ウィズ、今回は、残念だったけど、次は必ず嫁さん見つけてやるからな」
そう言って、ウィズを慰め、ここにいても仕方ない、ギアもなんとかしないといけない俺達は、村を出て、次の嫁さん探しに向かうのだった。
ところで、そんな最中、俺は、閃いた。
そして、ギアを見てニッコリ笑った。
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