第43話 チャングム王の最後
チング王子と、勇者、前川 彰は、チャングム王の元へ走った!
すべての元凶であるギナは、軽キャンクラブが対処してくれている、この時がチャンス! と、二人は、走った!
行く手を阻む兵士を、チング王子が切る!
ミロースとヘリウスが、この城に攻め行った時、多くの兵士を倒したが、まだまだ、数が多い。
王の元へ行くための通路には、沢山の兵士が待ち構えている。
「あぁ~、この世界でも、死ぬのかな」
前川が呟いた。
前世では、がむしゃらに働いた。
会社をデカくするため、無茶もしたし、周りは、自分を利用しようとする奴ばかり。
そんな世界で、すさんだ自分は、沢山の人を傷つけた……
だから、この世界では、人の役にたとうと思った。
糞みたいな能力しかもらえなかったけど、日本での経験とか知識でなんとかなるって思っていた……なのに、こんな所で、自分は、死ぬのか……
前川は、諦めた。
「勇者様、諦めないで!」
チング王子が言った。
無駄だよ。
二人で、何が出来る?
ミロースは、帰ったし、勝てないよ。
そう、思った前川は、うつむいて黙ったまま動かなくなった。
バシッ!
チング王子が前川を殴った。
「アキラ! 何、諦めてんだ! お前と俺で、この国を背負っていくんだ! その荷物の重さに比べりゃ、こんなん屁でもないだろ! 何時もみたいに、褒美狙いでガツガツいけよ!」
チング王子は叫ぶように言った。
前川が、そばにあった剣をつかむ。
「誰に、物言ってんだよ……」
前川が呟いたと思ったら、猛然と走り出す。
兵士達の近くまでいくと壁を蹴って天井に向かってジャンプする。
天井のへこみに指をかけてスルスルと上っていく、
ガシャッ!
天井のシャンデリアに飛び移った前川がシャンデリアを吊るしている鎖を切った!
シャンデリアごと前川が、下にいる兵士達に向かって落下する。
そして、地面に叩きつけられる前に、前川がジャンプして着地した瞬間に転がって着地時の衝撃をいなした。
ガシャーーン!
落下してきたシャンデリアに何人かの兵士が潰された。
ゆっくりと前川が立ち上がる。
「バドミントン国体出場 、趣味 ロッククライミング 仕事は会社経営、とんでもないクソ野郎が、なんでか現在、勇者様だ! 俺が、マエカワ アキラだ!」
前川は、力が溢れ出し、鼻からは、鼻くそがボロボロ落ちている。
「ぷふーー」
チング王子が吹き出して笑った。
チング王子の後ろに、王子派の兵士がどんどんやって来る。
「勇者アキラにつづけ! この国を我らの手に取り戻そう!」
チング王子は剣を掲げて言った。
兵士達は、それに呼応して、叫び声をあげながら、王への道を阻む兵士に向かって行った。
「王子は、先に言ってください!」
俺に、命を狙われていると教えてくれた兵士がチング王子に言った。
「死ぬなよ! お前も、俺の国づくりに必要だからな!」
チング王子は、兵士に言って、先を急いだ!
走った!
自分に向かってくる攻撃をよけつつ、走った!
チング王子が兵士達の壁を抜け、たどり着いた先にある大きなドアの前に着いた。
ガガガガ…
チング王子がドアを開いた。
「ヒッ! 貴様! ワシを殺しに来たのか?」
王がチング王子の姿を見て言った。
あの、凛々しかった威厳のある王はいなかった。
「父さん……」
チング王子は、剣を下ろして王に歩み寄っていく。
「ヒッ、ヒッ、 く、くるなぁ~」
王が後ずさりして転んだ。
チング王子は、そんな父が憐れでしかたなかった。
部不相応な夢をみた、憐れな初老の男が無様に命乞いをしている。
そんな父の姿を見たくない。
他の者に見て欲しくない。
自分の手で……今なら、皆に威厳のある王の記憶がある。
……今なら
チング王子は、剣を握る手に力を込めた。
「やめろ!」
アキラが部屋に飛び込んできた。
チング王子は、アキラを驚いた表情で見た。
アキラがチングを見据えて歩いてくる。
「父親殺しになるなよ、俺がやる」
アキラは、チングの手から剣を奪った。
アキラは、チングにニコリと笑った。
ただ、まだ鼻から鼻くそが出続けていたのが気になった。
剣を持つアキラが王に近づいていく。
王は、ガタガタ震えていた。
王の前にアキラが到着したと同時に剣を振り上げる。
その時!
王が正気にもどった。
チング王子もアキラも気づいていない。
ギナが死んだのだ。
「王様、最後に何かありますか? ……無駄か」
アキラが言った。
ドン!
王がアキラを突き飛ばした。
「すまなかった」
え?
王は、窓に向かって走り出す。
ガシャーン!
王が窓を突き破り飛び降りた。
アキラと、チングも、ただ見ているしかなかった。
「と、……父さん?」
チング王子が、王が突き破って割れた窓に向かって、ヨタヨタ歩いていく。
アキラが、チングに言った。
「王様は、最後、まともになってた。 すまなかった。って言った」
チング王子は、泣き崩れた。
戴冠式の日ーー
「もう良いのか?」
アキラが、式に向かうチングに言った。
「泣いてる暇はないさ。 お前には、働いてもらうからな! その知識、便りにしている」
チングがアキラに向かって言った。
「報酬は、たっぷり、いただきますよ! チング王」
アキラの言葉に、チングは、笑った。
その姿をみて、アキラも笑った。
二人なら、やっていける。
同じことを、チングとアキラは思うのだった。
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