第40話 ドラゴン捕獲部隊
ドラゴンの里を目指す、チャングム王国ドラゴン捕獲部隊は、森を進んでいた。
いっこうに到着しない事に、兵士の間に動揺が広がっている。
頼みのアガス将軍は、チャングム王国を出発してから既に、様子が明らかにおかしい。
時折、あー、うーとか言ってるし。
あんな人じゃなかったぜ、と、名も無き兵士は思った。
厳しい中にも優しさのある、親分肌の将軍だったのに……
100名を越えていた部隊の人数も既に半分近く減っている。
部隊から逃亡者が出るたびに、アガス将軍が、あー、うー言いながら、ウロウロする。
焦ってるの? なんなの? 怖いんですけど。
そんな事を思いながらも、行軍は続く。
てか、ここ、昨日も通らなかった? と思いながら、歩く。
今日も野宿だ。
最近食事の量が減ってきた気がする。
肉が出なくなって何日目になるだろう……
腹が減った……
ドラゴンの里入り口付近の軽キャンクラブの拠点
「また、焼き肉かよ、刺身が食いてぇ」
俺、野上博志は、連日のバーベキューに不満をぶちまけた。
「文句言うなら、食べないで良いわよ」
レイラが怖い顔をしている。
「そうですよ、モシャモシャ、世の中には、モシャ、食べたくても食べれない人が、モシャモシャ、いますからね」
肉を口一杯に頬張りながら、前川が言った。
鼻くそでも、食べてたら良いのにと、俺は前川を見た。
「レイラ、ごめん。 俺が間違っていた」
俺は、素直に謝れる男と言うのを、証明して見せた。
バンの様子を見ると、ライカの皿に、焼けた肉をどんどん追加しているのが見えた。
「バン、もう食べれないよ」
たまらず、ライカが、バンに言った。
バンがシュンとなった。
「一緒に食べよ」
ライカが、バンに言った。
バンは、満面の笑みで、仲良く、ライカの皿の肉を食べていた。
俺は、ほっこりした。
ここは、平和だなと、思った。
チャングム王国ドラゴン捕獲部隊。
朝がきた。
目を冷ますと、明らかに、兵士の数が減っていた。
アガス将軍が、あー、うー言って激しくウロついている。
向こうでは、セガル王国からきた、魔導科学者の奴等と我が国の兵士が、言い争いをしている。
もとから、しっくり来ていなかったけど、最近は、言い争う姿をよく見るようになった。
今日のきっかけは、なんだ? また、食事の量か?
何にせよ、どうせ最後は、お前らが王様を、そそのかして…… と、言う話になって、殴り合いになる。
しかし、アガス将軍は、あー、うー言うだけで、何もしない。
なんなの? こいつ。
しばらくすると、また、行軍が始まる。
ドラゴンの里、軽キャンクラブの拠点に朝がきた。
朝の爽やかなひと時、コーヒーを飲んでいると、バンとライカが、手をつないで歩いている。
俺が、声をかけようと立ち上がった時、レイラが後ろから俺の肩を叩いた。
振り向くと、レイラとプロムが唇に人差し指をつけている。
あっ、そっとしてやれって事か! と、俺は気づいた。
俺達は、コソコソと森に入って行くバンとライカに気づかないふりをした。
二人とも、お幸せに。
そうこう、している内に、ルファスとキャスカも森に入って行く。
森で、デートが流行りらしい。
やっぱ、仲が良いと言っても、やっぱり二人きりになりたい時あるよ。
と言う訳で、今日は、修行は休み。
森の中で、デートと洒落込みますか! と、レイラとプロムの手に触れた。
今日も、平和だな。
チャングム王国ドラゴン捕獲部隊
目の前には、切り立った岩の壁。
とうとう、行き止まりに着いた。
あまりの事に、兵士達は、ただただ立ち尽くしていた。
「あー、うー」
アガス将軍が、当たり前のように、登り始めた。
マジか!
兵士の大半が、離脱した。
セガル王国の残党組の何名かも逃亡した。
お前らは、ダメだろ~と、兵士達は思った。
そんな状況でも、アガス将軍に続く兵士達もいる。
アガス将軍、兵士達、セガル王国残党組は、険しい岩を、空腹に耐え、よじ登っていく。
兵士の一人が掴んだ岩がボロッと剥がれ、体制を崩し落下した。
ガシッ!
下から来ていた兵士が、落下した兵士の手を掴んだ。
「こんなとこで、死んでたまるか!」
そう言って、兵士を励ます。
しかし、周りで、よじ登る兵士の何名かが、落下していくのが見える。
死にたくない。
死にたくない。
兵士達が考えるのは、それだけだ。
頂上に着いた時には、10名程まで、人数が減っていた。
生き残った喜びに、俺達は、チャングム王国もセガル王国の残党も関係なかった。
共に死線を潜り抜けた仲間。
そう、仲間意識が彼らに宿ったのだ。
アガス将軍は、あーうー言って、ウロついていた。
ドラゴンの里、軽キャンクラブ拠点。
今日は、俺達全員、ロッククライミングを嗜んだ。
ホワイトドラゴンのミロースと、ドラゴンの長 ヘリウスが、落下した際にキャッチしてくるので、安全に楽しめた。
前川がメチャメチャうまかった。
あいつ、もしかして、性格はアレだが、金があってスポーツ万能って、マジでモテてたのか日本で! ハゲのくせに!
と思いかけたが、鼻くそ食うし、ないわーと思った。
とにかく体を動かすって気持ちいいと思った一日だった。
それから、数日たった、ある日、この前のお礼も兼ねて、ミロースとヘリウスをバーベキューに誘って楽しくワイワイやってる時に、ズタボロでガリガリな奴等が軽キャンクラブの拠点として使っているところに入ってきた。
俺が、なんだ? こいつら気持ち悪いな と、思っていると、ドラゴンの里を知らないか? だって、ここがそうだと教えてやると、なんか、抱き合ってワンワン泣き出した。
なんか、感動的な場面に出くわしたと思った。
だが、一人、あーうー言ってる危なそうな奴は除く。
「フハハハ! 見つけたぞ! ドラゴンの里」
危ない、赤い眼をしたおっさんが言った。
抱き合って泣いていた、ズタボロの四名が、
「アガス将軍が喋った!」
と、立ったみたいに言った。
「我が名は、ギナ! 魔界の王の命により、ドラゴンを使役しに来た。 我に従え」
俺は、頭のイカれた奴だと思った。
無視して、ズタボロの四人に聞いた、
「あの、ギナっての仲間だろ? 大丈夫か?」
三人は戸惑いながら、
「いや、あの人の名前 アガスですよ」
と、言った。
一人、様子がおかしい。
なんか、見たことある洋服きてるし、何だっけ?
思い出しそうで、思い出せないモヤモヤした気持ちになる俺。
「無視をするな!」
ギナと名乗るアガスが言った。
ええい! ややこしい。
「ふふふ、なぜ、俺が、簡単に正体を明かしたと思う? もっと、言ってやろうか? ここのドラゴンを捕獲して兵器にします。 で、チャングム王国を使って、この世界をメチャメチャにした後、魔界の王が征服させていただきます」
ギナ・アガスが笑いながら訳の解らない事を言った。
俺達に緊張がはしる。
ヤバイ奴だ!
俺達は、思い出した!
ドラゴンを、おもちゃにしたセガル王国のクソ野郎達を!
「魔界の宝珠の力により、貴様ら全員、我の思うがままになるからよ!」
ギナ・アガスが両手を広げ叫ぶ。
俺達は、身を屈めて、何かに備えた。
身を守る。
で?
何も起きない?
目を開けると、何やら、ギナ・アガスが、俺が思い出せなくてモヤモヤした奴に何か、ゴニョゴニョ言ってる。
ギナ・アガス
「なんで、俺の台詞のあと、宝珠ださないの? バカなの?」
セガル残党
「…いや、…あの」
ギナ・アガス
「いや、あの、じゃないよ? 俺がバカみたいじゃない?」
セガル残党
「……崖で、あの、すいません」
ギナ・アガス
「いや、 え? 何? 崖? 」
セガル残党
「いや、あの……すみません」
ギナ・アガス
「意味がわかんない。 え? なんか怖いんですけど」
セガル残党
「すいません」
ギナ・アガス
「だから、すいません、すいませんじゃわからないだろ!」
ギナ・アガスが突然、大きな声をだして、みんなビクッとなった。
その事に気づいたギナ・アガスは、また、小声で話し出す。
ギナ・アガス
「大きい声だして、悪い。で、怒らないから教えて」
セガル残党が、メソメソ泣き出す。
「が、崖で、お、おどじまじだぁ」
ギナ・アガス
「ううん、そんなの良いから、宝珠は?」
セガル残党は、泣いて、すいません、すいませんと言うばかりだった。
スパンッ
ギナ・アガスと話をしていた男の首が飛んだ。
うん、ギナ・アガスから生えてる触手で切ったようだね。
ヤバイじゃん!
「こうなったら、皆殺しにしてやる」
ギナ・アガスが言った。
こうなったらって、どうなったらだよ? と、俺は、納得がいきませんよ。
どうする? 取り合えず、
「みんな! 奴から、距離をとれ!」
俺は、みんなに指示を出しつつ、ギナ・アガスから距離をとる。
レイラとカイの弓攻撃と、フィリーとキャスカの魔法攻撃でアウトレンジからの攻撃で、ぶっ殺す! と頭の中で考える。
その時、俺の足に触手が絡み付いた。
あ、死んじゃう。
俺は、思った。
ドガァン!!
デカイキャンピングカーが、俺の前を通り過ぎ、ギナ・アガスを轢いた。
俺は、助かった。
ギナ・アガスは、
うん、死んでるよ。
グチョグチョだし、オエェエェェェ~。
俺は、吐いた。
みんな、よく食えるな。
バーベキューが再開していた。
俺と、前川は、アレを見たので、食べる事が出来ない。
ちゃっかり、ズタボロだった三人も食事に参加している。
俺は、少し離れて、前川と並んで座っていた。
「なぁ、前川」
俺は、前川に話しかけた。
「なんですか…」
前川は、アレを見てだいぶ気持ち悪くなったようだ。
「チャングム王国に行くけど、くる」
俺は、何となく聞いてみた。
前川は、しばらく考えこんでから、
「待ってますよ、ここで」
そう言って、遠くを見た。
「いや、参加して、道案内しろよ」
俺は、前川を強制参加させる事にした。
前川は、凄く嫌そうな顔をしたが、
無視だ!
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