第39話 チャングム王国

チャングム王国は、海洋国家である。

貿易と海運により、順調な国家運営がなされている。

他国同様、チャングム王には、領土的な野心はある。

だが、内政重視の政策と、商人気質の国民性から、絶対の自信がないかぎり他国への侵攻など考える事もなかった。


そんな、チャングム王の元に、セガル王国の残党である魔道科学者を連れた一人の男がやってきた。

その男は、青白い肌で真っ赤な髪はオールバック、黒い丸メガネをして黒のスーツを纏っていた。


「私の名前は、ギナ」


「王よ、ドラゴンと言う強大な力を、手に入れたいか?」


その男が、王に言った。

王は、男の眼を見ていると、不思議な力によって、逆らう事が出来ずに提案を受け入れるのだった。


「このギナの言う事を聞けば、お前を、この世界の王にしてやろう」


不思議な男は、そう言った。

王は、その内、その男の言う事だけを聞き、その男の言う事だけを信じるようになった。


「兵器となりうる、強いドラゴンを捕獲してくるのだ!」


王の号令の元、軍の精鋭達と魔道科学者達が、ドラゴンを捕獲に旅立つ。

一行の中に、体の大きな赤い目をした者がいる。

男の名は、アガス。

ドラゴン捕獲隊の指揮官である。



出発前――


チャングム王国の将軍 アガス。


アガスは、先ほど、王よりドラゴン捕獲の命令を受け。重い足取りで、城の廊下を歩いていた。

なぜ、他国とイザコザを起こすような真似を……アガスには、理由がわかっている。

わかっていても、どうする事も出来ない。

王が、その理由の言葉しか聞かないのだから……

アガスがそう思いながら、廊下を歩いていると、理由が待ち構えていた。

ギナだ。

この男が、チャングム王国に来てから、王が、おかしくなった!

アガスは、目の前のギナを睨む。


ギナが近づく。


アガスは、薄ら笑いをうかべるギナを不審に思い立ち止まる。


ギナが、歩きながら、黒メガネを外す。


「アガス、私の眼をみろ…」


ギナが言う。

奴の赤い眼を見てはいけない! アガスは、思った。


だが、もう、アガスは、すでに目をそらすことは、出来なかった……


そして、アガスの意識と記憶が途絶えた。


そして現在、ドラゴンの里へ向かいチャングム王国の一行が、森を進むのだった。




ドラゴンの里、入口付近では、


キャンピングカー、ルファスとキャスカ


軽キャンピングカー、野上博志とレイラとプロム


キャンピングトレーラー1、ウィズとバン


キャンピングトレーラー2、カイとフィリー


キャンピングトレーラー3、前川 彰


と、言う風に現在、担当を割り振られてある。


ルファスは、軽キャンと大きなキャンピングカーとの交換を申し出てきたが、俺は、軽キャンが大好きだから、断った。


そんで、現在は、離れた所に、各、担当車輌をバラバラに配置してある。

だって、夜、大きな声だせないから。

大きい声ってのは、セック…ゲフン、ゲフン、プライベートって、大事だよね。


あ~、後、カイとフィリーがくっついた。

どうでもいいけど。

ウィズとバンが可愛そうなので、女の子を探してやろう。

今度、暇になったら女の子探してやると、二人に言ったら、なぜか、二人の俺への扱いが良くなった。


ルファスの運転もだいぶ上手くなってきた。

キャスカは、身長が足りないから、覚えるのは、ゆっくりでいい。



「勇者アキラ! 行くぞ!」

ウィズが叫ぶ。

「また、返り討にしてやるよ!」

前川は、不敵に笑う。


ウィズと前川がバドミントンをしている。


前川の野郎、バドミントンで、国体に出たらしい。

俺も学生の時は、クラスで上手い方だったから、前川をギャフンと言わせようと戦った。

結局、一回も点が取れなかった。

いや、一点入ったけど、それは、前川がワザとミスしたからだ。

俺は、そんな要らない気遣いをしてきた前川にイラついて、ラケットで、ぶん殴ってやった。

それから、前川は、俺をバドミントンに誘わない。

前川には、悪い事をしてしまったと思ったので、軽キャンクラブ最強の男、ウィズを対戦相手にしてやった。

だが、ウィズが勝ったところを見た事がない。

で、今日も、運転講習が終わったのを見計らって、ウィズが前川に挑戦したようだ。


でだ、俺の可愛いバンが、一人あぶれてんだよ。

ルファスは、キャスカとイチャイチャ。

カイは、フィリーとイチャイチャ。

ウィズは、前川とスポ魂。

俺は、嫁さん二人、レイラとプロム。


軽キャンクラブの危機だ。


仲間思いの優しい俺は、焦っている。


みんな、あんまりイチャつくな!

(俺は、勿論除くが)


俺も、モテなかったから、バンには、特別優しくしてやりたい。


次の日、夜が明けきらない時に俺は、レイラとプロムをルファスのキャンピングカーに乗せた。

ちなみに、キャンピングカーに俺達が入った時、ルファスが起きてきたのだが、裸だった。

奥のベッドルームは見ないように心がけて、ルファスにレイラとプロムを頼んだ俺は、軽キャンに戻って走り去る。


俺が朝早く走り去った目的は、バンに合う女性を探す為だ。

ホントにお人好しだぜ、俺は。


一日中、森をさまよったが、女どころか、人が全くいない。


だんだん、めんどくさくなってきた。



「なんで、俺が、こんな事しなきゃ…」

と、後半、半泣きになりながら運転する俺。


だいぶ、遠く迄きた。


そして、更に軽キャンを走らせる。


「ん? あれは!」

俺は、思わず叫び、軽キャンを停めた。




軽キャンが猛スピードで森の中を疾走する!

ラリーカー選手権のように、ぐんぐん森を駆け抜ける!



ドラゴンの里に到着した頃には、だいぶ夜も更けていた。


軽キャンを、キャンピングトレーラー1の前に停めて、急いでドアに向かう。

俺は、キャンピングトレーラーのドアを激しく開けると同時に、

「バン! 女の子連れてきたぞ!」

と、言った。

「ん、あ~」

ウィズが寝ぼけてやがる、無視だ。

寝てるバンの胸ぐらを掴んでビンタして起こす。

「はへ? なんれすか?」

と、寝ぼけてるバンの胸ぐらを掴んだまま引っ張って、キャンピングトレーラーの外に連れ出した。


寝ぼけ眼のバンに俺は、満面の笑顔で、

「バンの嫁さんつれてきたぞ」

と、言ってあげた。

「は?」

バンは、? と、なってるが、嬉しすぎる為だろうと俺は解釈する事にするよ。

「バン、ゴブリンの娘が、お前と結婚しても良いと言ってくれたんだ」

俺は、満面の笑みで言った。

明らかにバンの顔が曇る。

「あの、ノガミさん? 今、ゴブ? ゴブリンって…」

俺は、ゴチャゴチャ言うバンの顔をビンタして黙らせた。

「てめぇ、俺が、貴様の為に女連れて来てやったんだ、ありがたく思え!」

そう言って、拒否は認めないと告げた。

バンが泣きそうと言うか、メソメソ女のように泣いていた。

俺は、気を取り直して軽キャンの方を向いた。

「ライカ出てきて良いぞ」

俺が言うと、軽キャンの扉が開いた。


「あの、私で、ホントに、その人は、良いんですか?」

そう言いながら、緑の肌だが、小柄で個性的だが可愛いらしい顔をした感じの娘が、軽キャンから降りてきた。

俺の好みだ。

俺の愛人にしたいくらいだ。

いや、するか、バンも嫌そうだったし

「それなんだが、ライカ」

俺が、ライカに話しかけた時、バンが、見たことのない早さでライカの元に駆け寄った。


「ライカ、幸せにするよ」

バンが、ライカの手を握り言った。


俺も、ライカも固まっている。


「あー、バンも気に入ったようで、よかった。ゴブリンだからと、いじめたりしたら俺、ゆるさんけどいいか?」

俺は、バンに確認をとる。


「いじめる訳ないじゃないですか! 俺は、彼女を一生守ります」

バンが言った言葉、俺は嬉しく思う。

ライカは、キョトンしてる。


「あなたと、けっこん、したら、美味しいものが沢山食べれるってきいたよ。 よろしくお願いします」

ライカは、そう言うと、ペコリとお辞儀をした。


バンが俺を見る。


俺も忙しい身、ここに立ち止まる訳にもいかぬと、足早にライカを連れて

その場を立ち去った。


バンが、立ちすくみ、俺達の乗った軽キャンを見送るのだった。


俺は、ルファスのキャンピングカーに、軽キャンを横付けして、レイラとプロムを迎えに行き、キャンピングカーにライカを泊めてもらう事をルファスに言った。

あと、厳重に、手を出すなと言っておいた。


俺は、レイラとキャスカを乗せて、俺達の停車エリアに向かう。

車窓から、バンが呆然とたっているのが見えた。

俺は、早く寝れば良いのにと思いつつ軽キャンを走らせた。


そして、俺達の車中泊ポイントについた。

ここにくるまでの間にレイラとルファスは、軽キャンをベッドモードにしておいてくれたようだ。

俺は、軽キャンから降りながら服を脱ぐ、そして、軽キャンの横の入り口から、裸で入ると、レイラとキャスカも準備万端、裸でいてくれた。

「二人とも、愛してる」

俺は、狭い車内で二人に飛び付いた。

その夜は、燃えた。


次の日、俺達は、遅くに起きた。


さて、ライカだ。

俺は、ライカの元に歩いて向かう。

いきなり結婚といっても、困ろう二人とも。

とりあえず、付き合わせて、合わないようなら、諦めよう。

そんな事を考えながら、歩いていると、向こうでは、バンが一生懸命、

ライカを案内しているのが見えた。

俺は、バカだな。

そう呟いた。

俺が気にやむのは間違いだ。

二人の事なんだ、二人の事は、二人にまかせれば良いんだと、当たり前の事を思った。


俺は、頑張れとバンにエールを呟き、軽キャンに戻る。

朝の、セック…ゲフン、ゲフン、あれだ、二人に愛してると言いに行くのだ。


本日も、平和なり。

俺は、見上げた空にむかって言った。






一方、その頃、ドラゴンの里へ向かうチャングム王国軍は、現在のところ、絶賛、道に迷い中であった。

前回、ドラゴンの捕獲にきたセガル王国出身者が居ないためだ。

前回の参加者は、セガル王国で、すでに亡くなっている。

今、来てるのは王国待機組だったやつらだ。

アガスを操る、ギナも場所を知らないので、うろうろと、歩き回る岳だった。

もうすでに、脱落し逃亡する者が現れはじめている。

ギナは、焦りながらも、ドラゴンの里を目指すのだった。

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