第36話 勇者

「勇者が、私達の里に来たのだが、その勇者は、お前達の仲間か?」

ミロースが言った。

仲間では、無い。

知らない人だ、だが、美女か美少女との出会いイベントは、ありがたく参加だ!

「念の為聞くが、その勇者によって、お前らの里に何か被害的なものとか~無いよな?」

凄惨だとか、洒落にならないピンチとか、シリアスじゃありませんようにと願いながら、俺は、恐る恐るミロースに聞いた。

「イヤ、毎回挑んできてウザいが、全然大丈夫だ」

ミロースの言葉に安堵したが、勇者の癖に弱いのか?

ちょっと、疑問に思ったが、美少女か美女だ、そんなに強くないのかもな、と、コーラを飲む。

「その、勇者と言うのが、ヒロシ、お前の軽キャンに、似たのに乗ってたから、懐かしくなって遊びに来た」

ミロースが、笑いながら言った。

言った。

言った。

……



ブーーッ!

思わず、飲んでいたコーラを吹き出した。

「何!」

俺は、目を見開いて言った!

「もう、ヒロシ汚いなぁ!」

レイラが、俺が吹き出したコーラを布巾で拭きながら言った。

「ごめんなさい。 いや、ミロース! 軽キャンに似たのって?」

俺は、レイラに謝った後、ミロースの両肩を掴んで聞く。

「ん? ああ、ちょっと形違うけど」

ミロースが、俺に揺さぶられながら言った。


俺は、その言葉を聞いて、考える。



美少女は、軽キャンピングカー、もしくは、キャンピングカーに乗っている。

その車輌が、強いから、本人は、弱い。

なぜ、強い、その車輌で戦わない?

頭が残念だから?

頭が残念に決まっている。

騙されやすい。

ナンパに引っ掛かる。

俺が声をかける。

ヒロシ様、抱いて!

キャンピングカーの中で……



キラーン!

ピカー! 俺の目が光る!

「ミロース! お前の里に行くぞ!」

俺は、立ち上がり宣言した!

みんな、? と、なってるが、無視だ!

……いや、むしろ一人が良いかも。

いや、しかし、護衛を連れた方が安全か?

どっちにしろ、ヤキモチやきのレイラやプロムは置いていき、二人と離れた俺は、美少女と、ムフフフ。

じゃ、護衛だが……顔のいいルファスは論外だし、ウィズは、頭が残念なところがあるが、決して不細工では無い。

連れていけるのは、……バンくらいか。

俺は、バンに向けてニッコリ笑顔を送る。

笑顔を送られた バンは、? と、なってる。

後は、フィリーだが、カイを置いてフィリーを連れて行くとカイが五月蝿いし、女だから、後で、レイラ達に言いつける可能性がある。

却下だ!

俺は、フィリーを、キッと睨む。

フィリーは、突然にらまれて納得いかない表情だ。


「あー、今回は、バンと二人で、ドラゴンの里に行こうと思う。 みんなは、この拠点で、冒険者ギルドで、適当な依頼をこなすように! 働かざる者食うべからず! 各々頑張ろうぜ」

俺が張り切って言ったが、みんな、どうした?

なぜ、俺に白々しいみたいな顔をしている?

特に、レイラ、プロムお前ら……

まったく、訳がわからん。




「それじゃ、準備OKだ! ミロース頼む」

軽キャンに乗った俺が、あっちにいるミロースに叫ぶ。

キャミソール姿のミロースが、ドラゴンの姿に変化していく。

キャミソールは、ビリビリに破けさった。

制服をビリビリにしたくないので、申し訳ないが脱いでもらったが、正解だと思った。

完全にドラゴンとなったミロースが、先頭の軽キャンと最後尾のキャンピングトレーラーを掴んで、飛び上がる。

ん?なんで、キャンピングトレーラー持って行くかって?

みんな、ついてきたからだよ!

クッソーー!

と、思ったが、チャンスを逃さない男、それが俺、野上博志だ!

俺は、運転席で闘志を燃やす。


「ヒロシ、どうせ、録でも無いこと考えてたんでしょ?」

助手席のレイラが笑顔で言った。

「レイラ様、怪しすぎますよね?」

プロムが運転席と助手席の間に顔をだして言った。

バ、バ、バ、バカだなお前ら…と、汗をダラダラ流す俺。

「ほ、ほら、空飛んでる。 わー、たのしいなあー」

俺は、いたたまれなくなって外の景色を観ることにした。

早く着いてくれと願った。


願い叶わず、そこそこ時間が、かかったが、どうやら、向こうに見えてきたのが、ドラゴンの里らしい。

向こうに雲? 霧? 何かで隠された山が見える。

ミロースが里だって、言ったから、きっと、そうなんだろう。

もうすぐ美少女を会える!

俺は、胸をときめかせて目を潤ませる。

もうすぐ会えるね、と、思った。


ミロースが大きく羽ばたいて、ゆっくりと下降していき、そっと軽キャンとキャンピングトレーラーを地面に置いてくれた。


俺達は、車輌から降りた。

見渡すかぎり、デカイ木が立ち並んで、荘厳な雰囲気が漂っている。


「す、すげぇ」

俺は、発見した。

キャンピングカーだ。

レイラ達、軽キャンクラブのメンバーも、あのキャンピングカーのデカさに度肝を抜かれて呆然としているようだ。

あれは、俺、知ってる。

数千万はするだろう、高級な奴だ。

キャンピングカーショーや動画サイトで見た記憶がある。

いかにも、キャンピングカーですって奴だ。


俺は、自分の軽キャンと見比べて、ちょっと気後れしてしまう。

これは、よっぽどのお嬢様か、やり手な女実業家なのか?

俺は、出会うであろう女性に負けてはならぬと、自分を奮い立たせる。

体の一部は、すでにビンビンだがね!



その時、俺達の側にヒタヒタと近づく人影に、俺達は、まだ気づいていない。

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