第13話 森の中

モスノフを出て南に向かい数日が過ぎた。


現在地は森だ。どこかは知らん。


レイラは弓を持って、ルファスは剣を持ち狩りに出ている。

俺は、キャスカと仲良く待機だ。


お互い警戒心があるままではいけないと、子供扱いに長けた大人である俺は、

「バドミントンしようか?」

と言って、軽キャンからバドミントンの道具を出してきた。


「何よ? それ」

警戒心バリバリで言うキャスカを無視してラケットを渡す。


「このシャトルをポーン、ポーンと打ち合って遊ぶ道具だ」

俺はキャスカから少し離れて、ゆっくり放物線を描くようにシャトルを打った。


スカっ


キャスカのラケットが空を切る。

「良くシャトルを見て打ってごらん」

優しく教えてあげる俺。


キャスカがサーブをする。


スカっ


外れる。


シャトルを拾って、サーブをする。


スカっ


外れる。


シャトルを拾って、サーブをする。


カッ


ラケットの縁にシャトルが当たって側に落ちる。


「面白くない」

キャスカが拗ねた。


「・・・」

俺は、黙ってキャスカからラケットを返してもらい、軽キャンに仕舞ってきた。


やらなきゃ良かった。

マルスは良い子だったなぁ……俺が、許して下さいと言うまでバドミントン付き合わされたっけ、しみじみ思い出していた。


二人は体育座りでレイラ達の帰りを待つ。


「……」

「……」


……会話せねば間が持たぬ


「なぁ、キャスカ。レイラ達どんなの狩ってくるのかな?」

俺はキャスカに聞いた。

「……」

無視か! クソガキめ。


普通の人間なら、ぶん殴ってる所だ。

だが、出来た人間なので俺は我慢した。

感謝するがよい。


「あんなのじゃない?」

キャスカが指差した。

その先には、熊のように大きな猪がいた。


「お、そうだ!それっぽい。で食べたら豚肉みたいで美味しい!ってなるアレだ」

俺とキャスカは、猪の化け物を体育座りをして見てる。


ゴフゴフ ゴッゴッ ゴフ~

猪の化け物は、片足で地面を蹴ってる。


ゴフゴフ言って、こっちを見てるね。


「ゴフゴフ言ってるわね」

キャスカが言った。

そうだなと思った。



ん? これはヤバイのでは?


「キャスカ、キャンピングトレーラーに入ろう!」

って、俺が言い終わる前に、キャスカはキャンピングトレーラーの方へ走っていた。


「あっ、ズルい! 俺も行く」

猪の化け物が走り出した!


キャスカがキャンピングトレーラーに入って、ドアを閉めやがった!


まだ俺、入ってねぇよ!


「おい開けろ! 開けて! 開けてください、開けてください、開けてくださ~い」

ドアをガチャガチャやって叫んだ。

全く開かない、ドア!

うん、クソガキが鍵をかけたようだね。


後ろから猪の化け物が突っ込んできた!

「横っ飛び!」

猪の化け物が俺に当たる寸前に、飛んで避けることが出来た!


ガツっ!!


猪の化け物は、突進してキャンピングトレーラーにぶつかった!


……ぐったりしてる。死んだか?

いや! 油断大敵!


俺は、素早く軽キャンの運転席に乗り込んだ。


「もう安心、さぁて、早くひき殺してやりますか!」

俺は無敵の軽キャンに乗ったことにより、余裕がでた。



ピギャー!!!

突然、猪の化け物の叫び声がした。

まだ、俺は何もしてないよ?!


見ると、猪の化け物に矢が何本もささっている?

そこにルファスが素早く近づき、矢が刺さった猪の化け物の首をはねた!


「良くやった二人とも」

俺は軽キャンを降りて、猪の化け物を倒したレイラとルファスを褒めてあげた。


猪を見ると、グロい。

吐きそうになるが、大人なので悟られないように自然に振る舞う。


「これだけデカいワイルドボアも珍しいですね」

ルファスが、剣についた血を拭きながらいった。


……中々やるな、荒んだ生活で身を守るために努力して身につけた技術なのだろう……と俺は思った。


「狩りから戻ったら、あんなのいて……大丈夫みたいで安心した」

レイラがホッとした表情で俺に言う……

優しい奴め! キスしたい!


それに引き換え……

俺はキャンピングトレーラーを見た。


ドアがあいとる!


キャスカがルファスに駆け寄るのが見えた。


「お兄様、怖かった!」

「キャスカ、大丈夫だよ俺が側にいる」

キャスカとルファスが抱き合った。


キャスカ、多分お前より俺の方が怖かったと思うぞ。


そう思いつつ俺は、白けた顔で二人を見ていた。


「お兄様の助けが無かったら……私と、アレの命は無かったですわ!」

甘えたようにキャスカは、ルファスに抱きついたまま言った。

アレとは、俺の事だろう……聞くに耐えないので見るのをやめた。


「これ、どうしよう?」

ワイルドボアの残骸を指差して、レイラに聞いた。

「売れるわよ。でも食べるぶん取っとこう」

レイラが嬉々として、ワイルドボアの解体を始める。


俺は、奥様に任せて解体の様子は見ない。

怖いから。


一人やることもないので、ウロウロする。


ワイルドボアの匂いにつられたのか、ゴブリンがやって来た。


「おうゴブ、ワイルドボア欲しいのか?」

生きとし生けるものみな尊い。

慈悲の心で俺は、ゴブリンにワイルドボアの肉を分けてやろうとレイラの方を見る。

差別はいけない!


ゴンッ!


「いだっ!」

俺は後ろから、こん棒でぶん殴られた。

「この、腐れゴブリンが!」

俺はゴブリンを殴る!


死闘。

最強のゴブリンと一進一退の攻防。


「えい」

ルファスがサクッとゴブリンを剣で倒した。


「ノガミさん大丈夫ですか?」

爽やかに言いやがる。


「ぷっ」

キャスカが口に手をやり笑った。

うん。

俺は、キャスカのそばへと歩いていく。


キャスカの頬をつねった。

「いたぁー」

キャスカが言った。


そりゃ、つねってるからね。


「ノガミさん、やめてください~」

ルファスが、おろおろしている。


「ゴミがついてたから、取ろうとしたんだよ」

俺はルファスに言って、つねるのをやめ……ない。


「ノガミさん、つねってるから、やめて」

「いだぁー」

「ゴミがついてたから」

俺たちが言い合ってっると……


「お前ら、手伝え!」

レイラに怒られた。

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