第10話 観光とグルメとルファスとキャスカ
ヴァルファ帝国の首都モスノフは流石に世界最大の領土を持つ国の首都だけはある。
発展してるのもわかるし、人の往来も多い。
町並みも結構な店が並び賑わっているようだ。
キャッキャ言いながらドライブを楽しむ俺達。
「ヒロシ、アレ私たちの城より、おっきいよ」
フロントガラスの方を指差して、レイラが言った。
「ホントだな……」
遠くに、デカい城が見えている。
余程の権力者なのだろう……どうでも良いが、観光として良いものが見れた。
街並みなどを車窓から楽しみながらドライブを続けていると、腹が空いてきた。
腹が減ったら、地元の旨いものを食う!
観光の醍醐味だね。
カーナビのマッピング機能!
通った所でレストランが無いか調べると、近くに数件あったので一番近い店に向かうことにした。
少し走ると目的地に到着したので軽キャンを駐車させて、レイラと手をつないで店内へ入っていく。
見た目は、おじいちゃんと孫位に見られそうだが、レイラは気にしないようだ。
「いらっしゃいませ」
店員の声を聞きながら、俺達は適当に空いてる席に座った。
店内は、まぁまぁ混んでる。
高級店でも無さそうだなと店内を観察してると、注文を取りに来たので、適当に地元の料理か、名物が無いか訊ねた。
料理の名前を言われたが、サッパリだったので適当に見繕って持ってきてと頼んだ。
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場所が変わり、ヴァルファ14世の居城。
高級ブランド品のノガーミリバーシをヴァルファ14世が配下の者と対戦して楽しんでいる。
そこに甲冑姿の若い男が近づき
「陛下、ドライマ国より只今戻りました」
と言った。この金髪の若者は、ヴァルファ14世の7番目の息子で名を、ルファスと言った。
「ご苦労。なかなか活躍したそうではないか。今日は下がってよい」
ヴァルファ14世はルファスを見ることなくノガーミリバーシを続けながら言った。
「はっ!」
ルファスはそう言って部屋を出ていく。
城の通路を重い足取りで進むルファス……
俺は、7番目の息子である自分に皇位継承など無い事はわかっている。
ならば冒険者となり自由に生きたいと願う。
だが、皇族である立場がそうはさせてくれなかった。
死なないように剣術や体を懸命に鍛えてきたが、戦場に送られ続け、死ぬのだろう。
そして英霊として自国の民や兵士を鼓舞するために利用する。
皇帝にとっては自分は生きようが死のうが、どうでも良いのだ。
ルファスは、暗い気持ちで歩き続けた。
「お兄様」
後ろから、明るい声が聞こえる。
ルファスは声の主が誰かがすぐわかった。
「キャスカ!」
ルファスがそう言って振り向くと、ソコには黒髪の可愛い少女が立ってる。
キャスカだ。
俺はキャスカを抱き締めて、
「ただいま。帰ってきたよ」
と言った。
キャスカも俺を抱き締めてくれる……
ルファスとキャスカは近くの部屋に入り、人がいないのを確認して、再び抱き合いキスをした。
妹だろうが関係ない。
俺は、キャスカを愛している。
このまま俺は、飼い殺しにされ、キャスカは政略の道具にされるくらいなら…
二人は互いに求めあい口づけを交わし続けた。
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レストランでは、料理が運ばれ来ていた。
微妙な味だ。
うん、不味くはないんだ。ただ美味しくないだけで……
レイラを見ると、精気の無い顔でモソモソ食べて……露骨に落胆してるのがわかる。
「待ってろ」
俺は、レイラにそう言って、軽キャンから醤油を持ってきた。
かけて食ってみた。
「うまっ」
俺は、レイラの料理にも醤油をかけた。
「ヒロシ、美味しいね」
レイラは醤油を少しずつ料理にかけて、美味しそうにバクバク食べてる。
回りの席の人間が眉をひそめて、ひそひそと話を始めだした。
クレームが入ったんだろう、レストランの店員が俺達の席にやって来て、料理に変な黒い液体をかけて食べないでくださいと言いだした。
ごちゃごちゃ言わずに、店員に醤油をかけた料理を一口食わせる。
「!」
店員が驚きの表情を見せたかと思うと醤油瓶を持って、他の客の席に走っていった。
何してんの?!
「かけた!」
俺は、ビックリして言った。
店員が、無言で客の料理に醤油をかけたのだ。
醤油を料理にかけられたお客は、「え、えぇ~」みたいな顔で困惑している。
俺は、「でしょうね」と思っていたら、
店員がその醤油がかかった部分の料理を客の口にねじ込む!
「ぶっ」
俺は、食っていたものを吹き出した。
無茶苦茶するなあいつ!
「……あれ? 旨い……旨いよ!これ」
口に料理をねじこまれた客が叫んだ。
ザワザワ……
厨房からシェフが騒ぎを聞き付け店内を見てみると……満場一致で次々客が、自分の作った料理に、なにやら黒い液体をかけていた。
「俺の料理にかけとる。何か黒いのかけとる」
シェフは怒りに、わなわな震えながら店員を呼び事情を聴いた。
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俺たちの席に、シェフがやって来た。
「お客さん、お客さんね、うちの料理に勝手なことされると困るの。ね、分かるでしょ?料理はね味のバランスが大事なのよ、それで、この何?黒いの。こんなもんかけて食ってんじゃねーよ!」
シェフにキレられた。
「……」
店員がシェフの口に料理をねじ込もうとする。
「何すんだ、お前は!」
抵抗してペチペチ店員を叩くシェフを、レイラが後ろから羽交い締めにする。
「やめろ、やめ、や」
店員がシェフの口に料理をねじ込まれた……
みんな、滅茶苦茶だ。
「・・・うまい」
シェフが言った。
俺は、醤油は金になると思いながら店を後にした。
レイラと少し食後の散歩をして、店を周って服を見たりショッピングをして楽しんだ。
そろそろ、変態支店長に頼んだ宿の手配が終わってるかもしれない。
俺達は、軽キャンに戻ると支店にナビをセットした。
「目的地に近づきました。案内を終了します。 ノガミヒロシ様 お疲れ様でした」
ナビの音声が流れ俺達は、モスノフ支店に到着した。
中に入ると、店員が側に来て頭を下げながら、
「ノガミ様、支店長より貴賓室にお連れするよう言伝されておりますので、どうぞ此方へ」
そう言って、俺達を貴賓室へとエスコートしてくれた。
前と同じように貴賓室のソファーに腰かけると、すぐにソイラ支店長がやって来た。
「ノガミ様。ご依頼の宿の手配、抜かりなく終えておりますが、いかがなさいますか?」
笑顔 & 揉み手 のコンボでぐいぐいくる。
うわぁ……苦手だな、と思いながら愛想笑いを返す。
「ご苦労。ヒロシはお疲れです、すぐに案内なさい」
レイラの命令にソイラが土下座スタイルになり、
「ありがとうございます、レイラ様。この豚にお任せください」
と言った。何してるのこの人?
「お前?」
レイラが立ち上がる。
「はい。レイラ様」
土下座スタイルで答えるソイラ。
「あふぅ」
レイラがソイラを踏みつけ、思わず声が出たソイラ。
ダメだ、レイラ。それは奴にとってのご褒美だ!と、おれは思った。
「ハ ヤ ク 案内をしろと言ったよね?」
レイラが踏みつけた足でグリグリしてる。
はぁはぁ、言ってるソイラ。
その時、ドアがノックされ開いた……
「失礼します。お飲み物を、 はっ!」
あの店長らしき人物がお茶を持って部屋に入ってその光景を見て絶句した。
「レイラ様、最高級の茶葉を使用した物ですのでせめて一口」
踏みつけられたソイラが早口で言った。
「頂いてから行こう」
俺は、レイラに言った。
これ以上奴にご褒美を与えるのを見ているのは、キツいからだ。
レイラはソファーに腰かけた。
店長らしき人物はお茶を置くと、ソイラを睨んだ。そして、ソイラは、俺はご褒美をもらったぜ的に勝ち誇った顔をしてみせた。
「グラス、ここは私がお相手させていただいている。君は下がって宜しい」
ソイラは店長らしき人物 グラス に言った。
「営業部の責任者である私も、ノガミ様とレイラ様を宿までご案内するのは当然です」
キリっとしてグラスがソイラに言った。
そしてグラスはレイラの方を向いて、
「この薄汚い豚めに何なりとご命令ください」
と言った。
……やっぱりお前もか!
ゴルソン王国の本店に戻ったら人事担当部署に人選を再考させるべきなのでは?と俺は、くらくらする頭で思った。
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「デカいな」
俺は、如何にも高級そうなホテルを馬車の中から見上げて言った。
アレから店の敷地に軽キャンを駐車した後、ソイラ、グラスの変態コンビの馬車でここに連れられてきたのだ。
「ここも、商会がマヨネーズなどの商品を卸しております取引先でございます」
グラスが説明してくれる。
取引先か……
馬車が入り口の前に着くと、ホテルマンが馬車のドアを開けて俺達をホテル内のカウンターまでエスコートしてくれた。
グラスが手続きをしていると、奥から品の良さそうな人物が現れた。
「支配人、このお方が我らノガーミ商会グループの会長のノガミ様と奥様のレイラ様です。くれぐれも粗相の無いようおねがいしますよ」
ソイラが俺とレイラを支配人に紹介してくれた。
「当ホテルの支配人セザールと申します。この度はホテルモスノフへようこそ御越しいただき、誠に ありがとうございます」
支配人のセザールは深々と頭を下げた。
「当ホテルで使用させていただいておりますマヨネーズやシャンプーなどノガーミ製品はお客様より大変ご好評をいただいております」
「支配人。我が商会の商品を御利用いただきありがとうございます。本日は私と妻が、お邪魔致しますので、よろしくお願いします」
俺は、支配人と握手をした。
「それでは我々は、商会の方へ戻りますので何かあればご連絡下さい」
ソイラは、そう言うとグラスと二人頭を下げて帰っていった。
部屋に案内された俺達は、キスをしてベットに腰かけた……
「やっぱ気になる!」
俺は、商会の敷地に置いた軽キャンが心配で気になって仕方なくなった!
「すまん。レイラ、軽キャン心配だからホテルの方まで持ってくるわ」
俺がそう言うと、自分も行くと言っていたが、
「すぐに戻るから待ってて良いよ。愛し合うのは、帰ってからね」
と、イヤらしい顔をして言ったら、レイラが顔を赤くして、
「ばか、でも早く帰ってきてね」
と言ってくれた。俺は、レイラと軽くキスをして部屋を出てから走ってフロントに行き、ホテルの馬車を手配してもらい商会へと急いで向かった。
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ヴァルファ14世の居城から少し離れた場所。
ルファスは帝国の鎧を脱ぎ捨てキャスカの手をとり走った。
国を捨て自由を求めて走った。
愛するキャスカが側にいればなにも怖くない。
守るべきものの存在が自分を強くしてくれると思った。
キャスカが自分を信じてついてくる決意をしてくれたのが嬉しかった。
モスノフの馬車ターミナルまで行けば長距離馬車が出ている。
この国を出れるのであれば、行き先など関係なかった。
来た馬車に乗ろう、ルファスはそう思うのであった。
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