第7話 サクセス万歳

「ヒロシ、起きて」

レイラが優しく俺の髪を撫でて言った。


おじさん昨晩は、大変頑張りました!

とても眠いのですが、頑張って起きます。


「おはよう、レイラ」

レイラにキスをして、起きあがる。

目の前で横になってるレイラの、可愛いおしりにムラムラきた。

若い時じゃ無いのに……何で、こんなに元気なんだ? と、思ったが、ここは我慢! 今日は、町へ行かないといけないのだ!


我慢だ、俺!

我慢できる男それが、この俺!

キリッ


「あ、駄目だぁ~」

我慢できずに、レイラと朝っぱらから、愛し合ってしまった。


軽キャンをキャンピングトレーラーのところに移動させると、みんなは、起きて出発の準備を済ましていた。


「すまん。遅れてしまった」

俺は、軽キャンをキャンピングトレーラーに連結しながら言った。

「ハハハ、昨晩は、頑張ったんだろう? ヒロシも、まだまだ若いな!」

デカい声で、デリカシーの無い発言のゼノス。

全く下品な奴だ!

俺のように、品良く出来ないものかね? それに、若い時と比べりゃアレですけど、まだ45歳、現役バリバリですよ。

ふー、やれやれと、ため息をついて、レイラを見ると顔が真っ赤になっていた。


こう言うプレイも悪くないかも……

「えへへへ」

俺は、レイラを見てヨダレをたらした。

「もう、やだ!」

レイラが言って、俺を突き飛ばす。

ガッ!

突き飛ばされた俺は、転んで石に頭をぶつけた。

血がダラダラ出たが、些細なことだ。


俺達は、食事と打ち合わせを手早く済ませて、町へと移動を開始した。

途中に、休憩やらモンスターとの戦闘(轢き逃げ)を、何度か繰り返す。

レベルも幾らか上がりながら進んでいく。


町は、もう目の前!


ここで、俺の作戦により、軽キャンが怪しまれないように完璧な偽装を施したのだ。

だが、ゼノス達の反応は、すこぶる悪い……


国境の町ゴルソンーー

ここは、辺境貴族のゴルソン家が治めている。


町の入り口に獣人の兵士が数名立っているのが見えた。


「あー、お前ら止まれ」

兵士の一人に呼び止めらる。

まさか、偽装がバレたのか?!


ゼノスの乗る馬に、牽引用のロープをつけて、そのロープの先を軽キャンの前に括り付けた、

《これは馬車ですよ作戦》

が、バレるとは!


完璧とも言えるこの作戦が……俺は、焦った!


兵士が、馬に乗るゼノスに近づく……


「この町に、何しにきた?」

と、兵士が聞いてきた。

「ここへは、商売にきたのだが。何か、あったか?」

と、平然を装いながらも答えたゼノスだったが、俺の方を、無理だろ? 的に、恨めしそうな目で見てきた。

大丈夫! いけるって!


「では、商人ギルドカードを出せ」

兵士が、カードの提出を求めてきたが、そんなもの持っちゃいないので、正直にゼノスが兵士に言う。

「商売をするなら、ギルドに登録した方が良い、場所は…」

と、丁寧に教えてくれた。

後、町で面倒を起こすな! と言って、検問が終わった。


俺達は、無事、町に入ることが出来た……

俺の作戦の勝利だ!

ゼノスは、納得いってない顔をしていたが、俺のおかげだ!

町外れの空き地に軽キャンを停めて、塩や胡椒など、いくつか持ち出し徒歩での移動を開始する。


町を歩いていると、大きな屋敷があった。


ノア商会

って、看板が出てるので、俺達は中に入る事にした。

商品が売れるのではないかと思ったからだ。


俺達は、カウンターにいた、猫族の女性に話しかける。

「売りたい物が、ある」

俺がそう言うと、ゼノスが、塩の入った袋を、ドスン! と、カウンターにのせた。

持ってきた物は、怪しまれないように、ゼノス一家が持っていた何個かの袋に、品物別に詰め替えてある。


「拝見させていただきます」

猫族の女性が、袋から塩を小皿に移して確かめる。

その後、秤のようなものに全ての塩をいれ、重さを調べた。


「こちらは、物がよいので、銀貨13枚。 いかがでしょうか?」

俺は、相場がわからない。

カローラを見ると、頷いたので、猫族の女性に、

「わかりました、お売りします。 あと、こんなのも、あるんですが……」

と言って、ゼノスを見た。

ゼノスが、塩と同じくらいの胡椒が入った袋を、カウンターに乗せる。

猫族の女性が、袋を開けた

「これは!……少々、お待ち下さい」

猫族の女性が驚いた顔をしたと思ったら、血相を変えて奥に走っていった。

そして、猫族の女性が戻ると、俺達は、別室に通され待つように言われた。


俺達は、高級そうなソファーに腰かけて、ソワソワしている。

「ヒロシ、どうなってるの?」

レイラが、心配そうに聞いてきた。

他のみんなも立派な作りの部屋に通されて、不安な表情を見せている。

「まかせとけ!」

特に根拠はないが、みんなを安心させるために、言ったが俺も不安だぜ。


暫くして、ドアが開き入ってきたのは……タヌキ?!


「お待たせいたしました。私はこの商会の主、ノアです」

俺は、立ちあがり、

「私は、野上博志です。ヒロシと呼んでください」

爽やかな笑顔で、タヌキに自己紹介をしてあげた。

「では、ヒロシさん、貴殿方が持ち込んだ物は、胡椒ですね? 珍しい物を、お持ちだ」

タヌキと会話してるのも変な感じだが、話が通じそうな男でよかった……

「そうですね。手に入れるのに、大変苦労しました」

俺は、適当な事を言った。


「大金貨150枚で、いかがでしょうか?」

みんなが目を見開く、俺は、大きくため息をついた。

「ノアさん、我々をバカにしてるのですか? この量と、この質で、その金額は無いでしょう」

俺は、呆れたように言った。

勿論、ハッタリだ。

「いやはや手厳しいですな、では、大金貨180枚でいかがですか?」

「大金貨200枚」

俺は、とりあえず適当に上乗せして、言ってみた。

すると、ノアは、難しい表情をした。


失敗した? どうなのよ? ダメだった?


「わ、我々は、定期的に今回の量と、同じだけの胡椒を提供する、ルートを持っています!」

俺は、焦りながら言った!

ピクリと、ノアの眉が動いた。

「次回から、同じ量の胡椒を、そちらの提示した、大金貨180枚でお売りするので……」

俺が言うと、ノアが決断した。

「分かりました。今回は、金貨200枚で購入しましょう。 ヒロシさん、次回から、私共が出せる限界、大金貨180枚で、必ず購入致しますので、独占契約を、お願いします!」

「分かりました!」

相場がわからないが、売ることに決めた!

どうせ、軽キャンには、まだまだ在庫があるし、増産も可能だ!

かなり稼げそうだぞ。


大金貨200枚と、銀貨13枚と、契約書が運ばれてくる。

金を、カローラに確かめさせ、俺は、契約書にサインをした。


こうして俺達は、金持ちになった。


まだまだ、先は長いが、目標の第一歩を踏み出したのだ。

もっともっと大金持ちになって、土地を手にいれ、俺達が平和で安心安全に暮らしていける理想郷を、俺は、つくって見せる!


俺達が、ゴルソンにきてから、数ヶ月が過ぎた。


この町の外れに家を借り、そこを拠点にして、定期的にノア商会に胡椒を納品して、ガンガン金を貯めていった。


レイラは、俺の隣にいて色々世話を焼いてくれる。

ゼノスは、俺が頼んだ情報収集を、一生懸命やっている。

カローラは、俺の教えた料理を、ほとんど覚えてくれて、それに飽き足らず、今じゃ、新たなレシピの研究に熱心に取り組んでいる!

マルスは、俺や、みんなから文字や計算を教えてもらって勉強を頑張ってる。 お手伝いも良くしてくれ凄く助かる。


みんな、ホントに、よく働いてくれる!


みんなの頑張りに報いるために俺は、ゼノスに、家族の分もまとめて毎月、給料として、大金貨1枚を支払うことにしてるのだ!

レイラには、小遣いとして、金貨30枚を、あげているのだが、あんまり使っていないようだ。

基本、俺と一緒にいるから、特に金が必要ないのかもしれない。


クオース国の辺境、国境の町 ゴルソンは、戦争中のガンデル国とは、反対側にあるためか、のどかなものだよ。

それに、ゴルソンと国境を接しているという、ウジマル国は、こちらの国と、不戦協定が結ばれているらしいから安心して人々が商売を出来るってワケだ。

そう言った諸々の要因によって、ここは、平和だし、金儲けも十分に出来る環境にあった。


もう、ここで永住して良いんじゃね?

俺も、みんなも考え始めていた。

しかし、油断大敵!

何があるか、わからんぞ!

老後の為にも、俺は、金を稼ぎに稼いだ!


やがて俺は、貯めた金を使い、小さな商会を買収した。

名前を、ノガーミ商会とし、最初の勝負に出る!


買収した、その商会の販売網を使い、俺は、定番のリバーシを、製作販売した。

予想道理の、大ヒット! 俺は、大儲けをした。


俺達は、デカい家に引っ越し、執事、メイド、警備係を雇った。

だが、安心できない……金なんて物は気を抜くと、すぐに失くなるからな!



俺も、みんなも、アホみたいに働いた!


ノガーミ商会が、ある程度の規模になった時、ノア商店と良い条件で、業務提携にこぎ着ける事に成功した!

その事により、リバーシの販売網を一気に広げた。

各国に、販売直営店や代理店を作り、莫大な利益をあげる。


ノガーミ商会は、一定のブランド力を得た。


やがて、リバーシは、安物の模倣品が市場に溢れ始めたので、俺は、次の手に出る事にした!


各国の貴族向け高級モデル《ノガーミリバーシ》の製作販売だ。


単価の高い、高級モデルは、貴族達に売れた。

まぁ、リバーシの落ちた売り上げを補填するに至らなかったが、貴族達へのノガーミ商会ブランドの浸透に役にたった。

やがて、粗悪な模造品によって急激にリバーシの売り上げが落ちていった。

まぁ、想定の範囲だ。


俺達の、ノガーミ商会は、この時点で既に、一般、そして貴族へのブランドの浸透、販売網の入手が出来ている……


俺は、商会の社運を賭けて、勝負にでた!


広大な土地を購入し、ノガーミ商会の本店となる住宅兼店舗、工房、倉庫、畑や牧場を作った。

それに伴い、従業員を大量に雇い入れた!

従業員数は、この時点で、飛躍的に増え、数千人になった。


それも、これも、ノガーミ商会が秘密裏に開発していた商品を、一気に広める為だ!


そして、迎えたXデー!


戦略商品マヨネーズが、ノガーミ商会 貴族担当部により、各国の貴族向けに出荷された!


そいつは瞬く間に、ヒットを飛ばした。

評判が評判を産んでいく……

やがて、貴族界で、マヨネーズが大流行している事が、庶民の耳にも入るようになるのだが、俺の狙い通りだった……


貴族相手に稼いだ、その利益を元に、大規模な工場を建設した。

開発済みである、庶民用廉価版マヨネーズの、大量生産体制を整える為だ!


昼夜を問わず工場は、フル稼働した!

積み上がるマヨネーズ達……


そして、その時が来た!!


ノガーミ商会、全ての販売網を使い、各国での販売が大々的に開始されたのだ!

俺達の命運をかけた大勝負!

失敗したら全てを失う……



結果は、病的なまでの爆発的ヒットを飛ばした!!


人々がマヨネーズを求め、町を彷徨った!

需要が供給を大きく上回り、工場の増産を繰り返す。

供給が追い付かない状況であっても、勿論、製造方法は、極秘扱いである。

情報管理の為、ここ以外では、作らせない。

作れば、売れる。

儲けが、儲けを産み、莫大な資産が積み上がる!!


やがて、世界有数の商会となったノガーミ商会は、潤沢なマヨネーズマネーにより、業界大手のノア商会も傘下に納め、ゴルソン領の領地のほとんどを所有するに至った。


その頃には、俺の家は巨大な城となり、ゴルソン領の人口は、百万を越え、街には、高層建築の建物が立ち並ぶ一大都市になっていたのである。


ちなみに、領主のゴルソンは、完全にお飾りの存在。

今は、俺、監視の元、俺の家で、一家仲良く元気に使用人として働いてくれている。


思えば、リバーシ辺りでの巨額の税収と、俺からの多額の賄賂を得た頃から、ゴルソンの没落が始まっていたのかもしれない……


辺境のいなか領主が、身の丈を越えた金を手にし、夢を見たのだろう。

度重なる散財。

俺は、ゴルソンの要求の度に、金を貸した。

法外な利息をつけた貸付だったがな……

だが、賄賂と思っているゴルソンは、気にせずにドンドン俺から、金を借りた。


まぁ、奴は、俺の事を、便利な財布とでも思っていたのだろう。

バカな奴だ……

一応、金を貸す時に、毎回、忠告してたのに……

やがて俺は、借金の利息の足しにするため、税金を支払わなくなった。


そして、廉価版マヨネーズ生産を開始した頃には、ゴルソンの持つ資産を全て売り払っても返せない借金の額になっていた。

俺は、資産を超過した借金の額に達したので、返済不可能と判断した。

速やかに、ゴルソン所有の土地に建物、人に至るまで、奴の持っているもの全てを差し押さえをした。



そして、事件は起こった!


後に、「ゴルソンの逆ギレ」 と、呼ばれる反乱だ。


ある日、ゴルソンの軍隊が、ノガーミ商会へ攻めこんできたのだ。


完全なる不意打ち!


だが、……無駄な事。

ゴルソンは、俺を侮っていた。


ノガーミ商会の私設軍隊が、難無く、ゴルソンの軍隊を返り討ちにしたのだ。


奴の軍など、我がノガーミ軍に比べれば、大人と子供程違う!

数と質、全てがノガーミ軍に劣っていたのだ!



そして、俺が実質的に、この地域の支配者となった。


商会は、拡大を続け、私設軍隊は、あの頃に比べて、さらに強く、何倍もの規模になっている。


これらの事を、軽キャンの機動力と、みんなの頑張りによって、わずか五年で俺達は、やり遂げたのだ!


俺は、五十歳になった。

妻のレイラは、長命のエルフだからか、出会った頃と変わらず、美しいままだ。

ゼノス一家も、勿論、今も一緒に城に住んでいる。


ああ、そうだ!


言い忘れてたが、昨日、使用人のゴルソンを国王にして、ゴルソン王国ってのを建国したんだったよ。

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