第5話 エルフのレイラ

キャンピングトレーラーを引っ張って山道を走っているが、とても軽トラベースの車輌とは思えない、パワフルな走りだ!

これも、女神の加護かな?


カンコロ村を後にして、一つ目の山に入ってから、結構な時間がすぎ、日も落ちかけていた。


しばらく走ると、車中泊に良さげな開けた場所があったので、今日はここで泊まる事にする。


俺は、軽キャンから降りると、背伸びをして体をほぐし、胸ポケットからタバコを取り出して吸った。

仕事後のタバコは旨い。


ゼノスが、木に馬をつないでいるのを眺めながら、俺は、吸い終わったタバコを携帯灰皿に捨てて、飯の用意を手伝いに行く。


カローラが、野菜の皮むきをしている間に、マルスには、テーブルや椅子を用意させた。


今日は、カレーを作る!


食料補給が可能になった今、材料の残量を心配しなくてもいいので、バンバン使ってくぞ!

補給できる目処がない時には、勿体なくて、使わず取っておいた米を食うのだ!

異世界にきてから、米なし生活が続いたのが、何より辛かった。


俺は、軽キャンの冷蔵庫から、肉と缶ビールを出してきた。


プシュッ

キンキンに冷えたビールを喉に流し込む!

ゴッゴッゴッ……

「ぷはーー!」

ウヒー、最高だーー!


ビール片手に、カレー作りの手順をカローラに指示をする。

俺は、作るのが、めんどくさいので、カローラに、俺の知っている料理を、沢山、覚えてもらうつもりだ。


グビグビ飲みながら、マルスには、食器を用意するように指示を与える。

マルスは、ホントに素直で良い子だから、おじさん大好きだよ。

後で褒美にお菓子を与えよう。


ゼノスの姿が見えないな。


「……ほう?」

チャンスだ!


ヒロシの目が、キラリと光った!


サササッ

俺は、カローラの後ろに、素早く回り込んだ!


「ん~、カローラ君、疲れたんじゃ、なぁーい?」

と、カローラのムチムチした尻を撫で回す。

俺は、マッサージ師として、カローラの日頃の疲れを癒してあげるんだ!

デカい、柔らけぇ~、ウヒョーー!


さわさわ さわさわ


カローラの尻尾が、ビクッとした。


俺は、すかさず体を密着させ、カローラの豊かな胸に手をまわした!

あくまで、マッサージ!

その柔らかな感触を味わう。

なんて、デカさだ! ウヒヒ!


モミモミ モミモミ


もちろん、尻を撫でる手は休めない!

働き者だぜ、俺は!


モミモミ、さわさわのコンビネーション。


至福の両手! 最高の感触を楽しむ、俺!



ゴッ!


俺は、ぶん殴られて、鼻血が「ブシュッ」っと、出た。


「グッ……」

よろよろと後退りして、膝をついた。


カローラは、拳で殴ってくる。

女の子らしく、せめてビンタにしてほしい……が、俺が悪いので、何も言えない。


俺が鼻血を出して、うずくまっていると、ゼノスが戻ってきた。


「どこに行ってた?」

鼻を押さえながらゼノスに聞いたら、ゼノスに、またか、懲りねぇーな、オメーは! 的な顔で見られた。


「ん?」


ゼノスの隣に、金色の髪をなびかせた、綺麗な顔の耳の長い女性が立っている、エルフだ!

胸は?

……貧

……カローラと比べたら可愛そうだな。


だが、博愛主義の俺は、小さな胸も大好きです!


しかし、露出度の高い服装だな、この変態め!

……だが、それが良い!


キリッとした顔で、エルフを見る俺。

そして、俺は、丁寧にエルフを、下から上まで、舐め回すように見てあげた!


「貴様、気持ち悪い目で、私を見るな!」

エルフが、腕を組んだ姿勢で喋った。


そちらから話しかけてくるとは、積極的な女だ。


俺は、すくッと立ちあがり、爽やかな笑顔で、

「俺は、ノガミ ヒロシだ。 よろしく!」

と、手を差し出した。


「なぜ、鼻血を出している?」

エルフは、腕を組んだままで言った。

「……気にするな、よろしく!」

と、手を差し出した。

エルフが、俺の手を取らない。


……差し出した手がかわいそうだろうが!


と、思ったが、怒っては、大人げないので、手を差し出した状態のまま冷静に……

「貴女のような、綺麗な方が、こんな山奥で、どうなされましたかな?」

「関係ない黙れ」

と言って、プイッと、顔を横に向けるエルフ。


フッ、そうか……



「えい!」

俺は、その生意気な態度への制裁を与える。

行き場を失って可愛そうに、差し出したままになっていた、この手で、エルフの小さな胸を鷲掴みしてやった!

偶然だから、気にするな。


「え?」

何が起こったか分からない様子のエルフ。


モミッ




胸を鷲掴みされていると認識し、エルフは顔が真っ赤になった。

ウヒョーー!

おじさん、エルフちゃんが顔を赤らめて、可愛いなと思っ

「このっ!」

次の瞬間、エルフのパンチが俺の顔に、めり込んだ。


倒れた俺の上に、すかさずエルフが馬乗りになってきて、執拗にぶん殴られまくった。

何だ? この女は!

「や、やめてくださいーー! うぎゃぁぁぁーー!」

俺は、男らしく言った。


辺りは、すっかり暗くなっていた。


俺達は、みんなで焚き火を囲んでいる。


「いやぁ~おじさん、ぶん殴られちゃった」

と、顔をパンパンに腫らした俺が言うと、

「お前が悪い」

ゼノスが、呆れて言いやがる。

「おじちゃんダメだよ~」

マルスまで、俺に!

カローラは、冷たい目で俺を見てる。

エルフの奴は、こっちを見ようともしない。


被害者の俺を擁護する奴はいないのか!

と、思ったが、俺は、大人なので、華麗にスルーしてあげる。


「飯にすっか!」

そう言って俺は、カセットコンロで炊きあげたばかりのご飯を、人数分取り分け皿に盛った。

カローラがそれを受け取り、焚き火にかけてあった鍋から、カレーを受け取った皿にかけて配っていく。

色々あったが、晩御飯だ!


俺は、カレーを一口食べた。


「旨い!」

思わず声が出た俺は、熱々のカレーをハフハフ言いながら、がっついた。


そんな俺の姿を見て、エルフを除くゼノス一家が一斉にスプーンを、カレーに突っ込み食べ始めた。


「うめー!」

ゼノスが叫ぶ。

「ヒロシが教えてくれる料理だけは、凄いわね」

カローラが誉めてくれた。

よしよし、また、乳を揉んであげるからねと、暖かい気持ちになった。

「おじちゃん辛い~」

子供のマルスには、ちょっと辛かったようだ。


「待ってろ、マルス!」

俺は、急いで水を持ってくると、マルスに渡した。


ゴクゴク……

マルスが水を飲んで、一息ついた。

「辛いけど、お肉入ってて美味しい!」

マルスは、水を飲みながら、夢中になってカレーを食べていた。


そんな皆の姿を見ていたエルフが、カレーをスプーンで掬い口に入れた。


「えっ!」

エルフは、目を丸くした!

体験したことのない刺激が舌を襲う! そして、その後に旨味が、やって来た!

「何、これ?!」

エルフは、一口、もう一口とスプーンを進め、気がつくと、ペロリと一皿食べきっていた。


俺は、その様子を、しっかり見ていた。

俺の、勝ちだ! ……いや、勝ちって何が? と、言われると困るがね。


「気に入ってもらえたようで良かった。 おかわりするか?」

俺は、笑顔で、エルフに言ってあげる。

「貴様は、最低の奴だが、……料理は、悪くない」

相変わらず顔を向けてくれないが、皿を俺に寄越した。

可愛げの無い事を言うが、可愛い奴だ。

俺は、自然に笑顔になっちゃう。


「そりゃ、どうも」

俺は、そう言って、エルフから皿を受け取り、おかわりのカレーを入れて、エルフに返す。

「……ありがとう」

エルフが、恥ずかしそうに言うと、カレーを旨そうに食べてくれた。

そんな姿を見て、やっぱ可愛いな! と、思った。


食事も終わり、焚き火を囲んで、皆で。インスタントコーヒーを飲んでいる。


カローラの膝の上で、マルスが寝息をたてていた。

お腹がいっぱいになって眠くなったのだろう。


「で、ゼノス。彼女は?」

俺は、エルフを見ながらゼノスに聞いた。

「ああ、俺が馬をつないでいると、声をかけられた。

ここら辺が、彼女達エルフの縄張りみたいで、縄張りに入ってきた俺達に話しかけたらしい」

ゼノスがそう言うと、エルフが続ける。

「怪しい奴らを見かけたと連絡が入ったので、見に来た」


怪しい奴らのくだりで、俺を見るのは感じ悪い。


「そっか、で名前は?」

俺は、エルフの顔を見て言った。

「レイラだ」

また、俺から顔をそむけて、レイラが答えてくれた。

失礼だな、おい!


「私達は、平和に暮らせる場所を求めて旅をしていて、今は、山を越えた所にある町を目指してるのよ」

カローラが、マルスの頭を撫でながら言った。

「レイラ、心配しなくても、見た通り俺達は不審者ではないから、安心しろ」

俺は、ウインクして言った。

レイラは、怪しいものを見るような目で見ているような気がするが、俺の気のせいだろう!

失礼だぞ、ホントに、お前!


「……旨い物を食べさせてもらったし、確かに、悪い奴らでは無さそうだな」

俺の顔を見ずに、レイラが言った。

「だろう?」

俺が、言うと、

レイラは、立ち上がって、森の中に走り去った。

失礼だ!

俺は、レイラの走り去った方を眺めた。


夜が更けていき、俺は、軽キャンに戻り、ゼノス達はキャンピングトレーラーへと入って行った。


今日も疲れた。

軽キャン ナビを弄って、食料と燃料の補給などをしてから、俺は、横になった。


「レイラ……か……」

俺は、エルフを思い出しながら、寝た。


朝がきたーー

水で、歯磨きや、顔を洗ったりした後、出発の準備をしていると、森の中から荷物を入れたバックを持った、レイラがやって来た。


なんだ?


俺達は、レイラに視線をやった。


「喜べ! 村長の許可をもらったから、私もついて行ってやる! 一緒に、また、カレーを食べてやるからな!」

全力の笑顔で言いはなつレイラを、みんなキョトンとした顔で見ていた。

だが、俺は、笑顔になったぞ!


「よし!ついてこい!」

俺は、元気よくレイラに言った!

ゼノス達が、驚いて、俺を見てきた。



こうして。俺達に旅の仲間が増えたのだった。

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