第4話 能力発見して倒れた
翌朝ーー
村長宅の前に停めた軽キャンの前で、俺は、ボケ~と座っていた。
目の前で、マルスが村の子供達と、バドミントンをしていた。
「子供は順応性があるな」
マルスの様子を見て言った。
もう、村の子供と仲良く遊んでいる。
軽キャンに積んでいた、バドミントンの道具が役にたったな。
獣人の身体能力は高く、子供のマルスにさえ、俺は、バドミントンで勝てなくなった。
勝てないのだから、面白く無い。
面白くないので、マルスに道具をあげた。
あんときゃ、マルスに凄く喜んでもらえたな。
おじさんは、嬉しいよ。
そう言えば、甥っ子のタケシに、ゲームソフトをあげたら、喜んでいたな……
フッ、
そんな昔の事を思い出すなんて、俺も年をとったな……
「……しかし、スゲーな」
マルスと、村の子供の間で、高速スマッシュのラリーが続いている。
うん。
絶対勝てないと、思った。
「さて、ヒロシチェックと、洒落込みますか!」
俺は、立ち上がり、軽キャンに向き合った。
軽キャンの周りをぐるりと周ってみたが、外装は、汚れがあるけど、傷などは無いようだな。
女神の加護に感謝しつつ、燃料、物資の消費問題を、いかに解決するか……
俺は、頭を悩ませた。
「とりあえず、機能とかチェックするか……」
軽キャンの運転席に移動して、エンジンをかけ、起動したナビをいじる事にしたのだ。
「ん?」
ナビに、カンコロ村が登録されていた。
「マッピング機能か!」
ここまで来るまで、気づかないのも、どうかと思うが、更に機能が無いか調べる。
「補修」と言う項目があった。
タッチパネルを押してみる。
「魔力を消費して、補修します。項目を選んでください」
音声が流れ、画面に補修項目と消費魔力、残り魔力が表示される。
ノガミ ヒロシ
魔力残 5000/5000
外装補修 100
内部機関補修 200
燃料補給 50
物資補給
食料関係 30
道具関係 20
「うっほ」
俺は、すかさず燃料と食料を、補給するため、画面にタッチした!
魔力を50消費したが微々たるものだからか、体に異変は無い。
「おっしゃ!」
燃料メーターが満タンをさした!
「次は、食料だな!」
俺は、エンジンを切り、食料関係の確認に向かう!
給水タンクの水が満タンになっていたので、マジックボックスを確認すると、食料も補充されていた。
検案事項があっさり解決した。
「ふは、はっはっははははーー!」
思わず笑ってしまった。
これは、無敵じゃないか!
古今東西、全てのおっさんは、金と女が好きである。
ヒロシも、それらが、勿論、当然、当たり前に、大好きである!
「この能力を使えば、金、手にはいんじゃね?」
ヒロシが呟いた。
笑いが止まらん!
ウヒャ~ひゃっひゃっひゃっ、ウヒョヒョヒョヒョーー!
「また、ヒロシの奴……」
笑いながら、転げ回るヒロシの姿を遠くから見ていたゼノスは、ため息をつくのだった。
・
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俺はゼノス。
犬族の獣人だ。
今は、家族と共に安住の地を求めて、人間の男と旅をしている。
その人間とは、あそこで奇声を発して転げ回っている男。
名前は、ヒロシ。
スケベで、抜けてて、俺の妻をエロい目で見る最低の男だが、「軽キャン」と男が呼ぶ、不思議な乗り物を操る事ができて、旨い食い物や不思議な物を出してきては、俺達家族を驚かす。
息子のマルスは懐いているし、妻のカローラは大人しく頼りない一面があったのだが、ヒロシのセクハラに対抗している内に、強く逞しくなっていった。
ヒロシは本当に、おかしな奴だけど頼りになるとこもある、不思議な奴だ。
村長の話では、カンコロ村から2つ山を越えたところに、国境の街があると言う。
クオース国の外の世界は、どんな事が待ち受けているかわからない。
だが、ゼノスは家族とヒロシがいれば何でも乗り越えれる! と、空を見上げるのだった。
奇声を発し、笑い転げているヒロシ。
「はっ!」
ヒロシが我に返り、辺りを見渡す!
向こうに、ゼノスがいた! 俺はゼノスへと駆けた!
「ゼノス、教えてくれ!聞きたいことがある」
俺は聞きたい事を、ゼノスにぶつけて、わかったことを、頭の中で整理する。
この世界にも「お金」が存在する事。
それぞれの価値が、日本円の感覚だと、
小銅貨が十円くらい、
銅貨が百円くらい、
小銀貨が千円くらい、
銀貨が一万円くらい、
金貨が十万円くらい、
大金貨が百万円くらい、
白貨が一千万くらいなんだろう。
ゼノスの話だけじゃ、よく分からないから、適当だが……実際の感覚は、経済活動をしてみてだな。
市場価値を肌で感じていこうと思う。
塩や胡椒、砂糖は価値が高いのか?と言う質問には、塩はそこそこの値段だが、けっして安くはない! とのことで、胡椒や砂糖は、俺が食べさせるまで知らなかった。と、言ってた。
それは、庶民には手が届かない高級品か、この世界に無いものと言うことだろう?
で、あれば、かなりの金額になるのでは無いか? と、大いに期待した!
俺は、軽キャンに走って戻り、調味料関係を外に出しては、ナビ機能の食料補給すると言う作業を、延々と繰り返した。
・
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こうして、大量の調味料関係のストックが出来た頃、俺の魔力が尽きたのか、目の前が真っ暗になった。
ドサッ……
ヒロシが、糸の切れた操り人形のように、倒れた。
「あなた!ヒロシが!」
薄れる意識の中、カローラが叫ぶ声が聞こえた……
・
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・
ーーベットの上で意識が戻った。
「あれ? ……ここは?」
頭が二日酔いの時のようにフラフラする。
村長宅の俺の部屋?
俺は、倒れてたのか? どれぐらいたった?
「俺の宝の山が!」
思い出した俺は、フラフラとしながら、軽キャンへ向かう為、部屋を出た。
大量の調味料を外に放置してあるのが、心配でならなかった。
「ヒロシ大丈夫か?!」
玄関を出ると、心配そうにゼノスが言った。
「ち、ちょうみりょう」
そう言って、調味料を置いていた場所を見ると……無くなっていた。
がっくり力が抜け、倒れそうになったところを、ゼノスに抱き抱えられた。
「ヒロシが出しっぱなしにしてあった物なら、軽キャンの中に入れといたぞ! 散らかしちゃ村長に迷惑がかかるだろう!」
ゼノスの言葉に安心した、
「ありが……と……」
俺は、また、気を失った。
次の日の朝、目が醒めると体調が戻っていた。
ステータスを確認すると、魔力が回復していた。
少し、魔力量が増えてる?
限界まで魔力を使用した場合に起きる事、そして、魔力の回復方法を、身をもって経験した。
次からは、注意せねば! と、気を引き締めた!
部屋を出て、リビングに行くと村長がいた、
「起きたのか? あんたが、最初に倒れたときは、カローラさんとマルス君が一生懸命、部屋まで運んだんじゃぞ。
二人とも、お前さんの事を心配して看病しとったわい! 後で、礼の一つも、言ってやるんじゃな」
村長が言った。
そうか、ありがたい……ちゃんと、お礼をしなきゃな!
村長にも、迷惑をかけた。
俺は、お詫びに、桃の缶詰を村長に食べさせたら、涙を流さんばかりに感動して食べてくれた。
これだけ、感動してくれると気分が良いね!
村長に、この数日、世話になった礼だと言って、桃缶とミカンの缶詰を、置いていくと言ったら、凄く喜んでくれたよ。
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・
ゼノス、カローラ、マルスに手伝ってもらい、バケツリレー方式で、軽キャンの中から、大量の調味料を、車の後部に着けた、アイテムボックスに入れていく。
「みんな、ありがとう! 恩返し絶対するからな!」
俺は、作業をしながら言うと、ゼノス一家が、期待してないよ! と、笑っていた。
しばらくしたら、軽キャンの中がすっかり片付いた。
では、改めて……
「ゼノス、カローラ、マルスありがとう。それに、心配させてごめんなさい!」
そう言って俺は、三人に頭を下げた。
ゼノスは、
「気にするな」
と言い、カローラもマルスも俺の体を気遣ってくれた。
ホントに、良い奴等だ。
俺は、倒れてから、ずっとかけっぱなしだった軽キャンのエンジンを切ろうと運転席に乗り込んだ。
ナビに目をやると、機能追加と表示されていた。
その文字をタッチする。
「機能を使えば使うほど強化されるのかな?」
言いつつ、追加項目を確認する。
・キャンピングトレーラー追加 3000
「魔力消費3000!」
俺は、迷わずキャンピングトレーラーを追加した。
ガチャン!
外で音がした。
俺が外に行き見てみると、軽キャンの後ろに、軽キャンより少し長さが短めのキャンピングトレーラーが連結されていた。
「す、すげぇ……」
アイテムボックスの開閉も問題ない事を確認して、ゼノス達の元へ走る。
「ゼノス来てくれ~!」
トレーラーが連結された軽キャンを見て、ゼノス、カローラ、マルスそれぞれ口をあんぐりとあけていた。
「このトレーラー部分は、ゼノス達の物だから好きに使ってくれ」
俺がそう言うと、みんなビックリした顔になったが、次の瞬間、ゼノスがゴニョゴニョと……
「ヒロシに我々がしてやれる事など無いのに、このような……もらうわけには……」
と、言ってきた。
めんどくせーな、素直に受けてくれよ。
「俺は、この世界じゃない所から来たんだよ。
今までの言動や、軽キャンを見たら、この世界の人間じゃ無いの解るだろ?
そんな俺が、ここまでやってこれたのは、お前達がいたからだ! 俺には、お前らが必要なんだよ! これから、もっと、お前達に凄い物をヤるから、……国とかどうだ? だから、キャンピングトレーラーくらい貰ってくれよ!」
俺は、捲し立てた!
そして、ゼノスの手を取り、
「俺達は、仲間だろ?」
と言って、固い握手をした。
「ヒロシ……」
ゼノスが、俺の顔を見ている。
俺は、笑った。
・
・
・
ブルル~
「準備は、いいか?」
ゼノスが馬に跨がり、言った。
俺は、軽キャンに、カローラとマルスを乗せて、
「大丈夫だ!」
と、運転席から、ゼノスに答えた。
ゼノスの話だと、この道を行き、山を2つ越えれば、街が有るって話だ。
馬車は、この村で買い取ってもらったので、少し現金が入った。
俺は、エンジンをかける。
ブロロロ……
「そんじゃ、スピードあげて街を目指して行きますか!」
俺は、元気にみんなに言った!
馬と、軽キャンピングカーは、街を目指し、出発したのだった。
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