第3話 出発進行!そして村へ
森に朝がきた。
「ヒロシー!そろそろ行くから、早く準備しろ!」
ゼノスの、デカい声に起こされた。
俺は、軽キャンの天井部分、ポップアップルーフから頭を出す。
「ゼノス、用意するから、待ってくれ!」
と、叫んだ。
軽キャンを、ベッド展開するのが面倒だったのと、気候が暖かかったので、昨夜は、ポップアップルーフで就寝したのだ。
「おじちゃん、何してるの?」
と、マルスが、軽キャンの中を、覗きにきた。
ルーフから、俺は、どっこいしょと、降りながら、
「マルス、昨日は、上で寝たんだよ」
と、言った。
しかし、マルスは、朝から元気だこと、こっちは、まだ眠いってのに。
「僕も、上で寝てみたい!」
マルスが、ピョンピョン跳びはねている。
子供は、ホント元気だな。
俺は、ポップアップルーフを、降ろしながら、
「お父さんが、良いって言ったら、マルスにも使わせてやるからな」
と、マルスに言ってやる。
「ホント? やったーー!」
マルスは、喜んで、外に走っていった。
ホントに元気だね。
俺は、サッサッと片付けを済ましてから、車外に出た。
「出発前に、軽くご飯にしない?」
俺は、買ってあったチョコチップスナックパンを、皆に配った。
みんなからは、旨い旨いと高評価をもらい、喜んでもらえたようだ。
俺は、近くの小川で顔を洗って、スッキリした。
さぁ、出発だ!
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って、おい!
助手席にゼノスが座っている。
「おい! そんな所に座って、どうしたゼノス?」
俺は、普通に座ってる、ゼノスに聞いた。
「ヒロシ! 馬車は、もう出発したぞ、我々も早く行こうではないか!」
さも当然と言わんばかりに、指示をするゼノス。
質問に答えろ!
「ゼノス、馬車に乗らなくていいのか?」
と、俺が聞いたら、家長である自分が、まず最初に軽キャンに乗り、どんなものかを確かめるためだ! と、言って、完全に降りる気が無いようだった。
俺は、諦めて、エンジンをかける。
ああ、カローラが助手席なら良かったのに……
ブロロロ~
「わっ! なんだ、コレ!」
エンジン音や、ナビの音に画面、全てが初めてのゼノスは、おっかなびっくりしていて、見てて微笑ましかった。
だがそれも、しばらく走るとなれたようだ。
「馬車と違って、尻が痛くないぞ!」
と言って、ゼノスが、喜んでいる。
よかったね、でも、カローラが助手席なら良かったのに……
俺は、諦めて、運転に集中した。
・
・
森の中の道を、馬車の速度に合わせてトロトロ走っていると、馬車が突然止まった。
「どうした? ヒロシ?」
助手席でウトウトしてた、ゼノスが言ってきたが、確かに、何事なんだろう?
俺が前の方を見ると、柄の悪そうな奴等が、武器を手に馬車を待ち構えていた。
アレか! 山賊? 盗賊? なんだ? そう言った類いの者か?
ファンタジーでありがちなイベントだ! と、俺は思った。
盗賊A「まーずは、金と食料を寄越しな!」
盗賊B「雌の獣人と、ガキの獣人かぁ! ひゃっひゃっひゃっ、奴隷商人に売っぱらおうぜ!」
盗賊C、D、E、Fは、そうだ、そうだ! と、騒いでいる。
僕は、頭の悪い悪人です! と、言った風貌の男達が、馬車を取り囲みにかかった。
「ああ! カローラ達が危ない!」
それに気づいたゼノスが、急いで降りようとする。
「まてっ!」
だが、俺は、それを制止をして、軽キャンから降りた。
そして、
「やめな!」
と、カッコ良く、俺は、盗賊達に言いはなった!
今の俺、かっこいい!
盗賊達が、俺の方を見た。
「何だぁ? テメー!」
盗賊どもが俺に、注目する。
バカめ! この俺に敵うかな?
だが、念のため…… 賢い俺は、自分のテータスを、チェックする。
レベル 50
体力 500
攻撃力 1
防御力 3
「ん? ぇえ? あれ?」
よし!
俺は、軽キャンの運転席に戻った。
「ホントに、なんだテメーは!」
盗賊が叫んだ!
このステータスでは、怪我や死ぬ可能性が高い。
無理せず、撤退の判断が出来る有能さを、俺は、持っているのだ。
「何だ!助けに行かねーのかよ!」
ゼノスは、そう言って、軽キャンから飛び出そうとする。
その時である!
ブオォーーン!
突如、軽キャンが唸りをあげて、急スピードで発進した!
俺を、ナメるんじゃねぇ!
「死ねーーーーー!!!」
人が変わったかのように、ヒロシは、叫び声をあげながら、盗賊に突っ込んでいった!
パンパン盗賊を撥ね飛ばしていく、キャンピングカー!
俺は、ちゃんと正確にぶつけるため、激しくハンドルを左右に振り回す!
ドリフトをかます!
先週、45歳にして高校生からカツアゲされた怒りも込めて、一人、また一人と撥ね飛ばしていく!
やがて、盗賊は全滅した。
……戦いは終わった。
ゼノスは助手席でぐったりしていた。
・
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ゼノスは、しばらく軽キャンに乗りたがらなくなった。
今日は、ゼノスが馬車に乗り、カローラが助手席にマルスが後ろのソファーに座っている。
ウヒョ……
カローラの胸は、デカいのに……
その胸の谷間を強調した服を着ている。
……誘ってるのか?
普通の男なら、こう言う場合は、目の前やり場に困るのだろう。
だが、俺は、違う! 素直に嬉しい! そして、見る!
と、言わんばかりに、堂々と、カローラの胸を、ガンガン、チラ見する俺、男らしい!!
こうして、俺と軽キャンは、ゼノス一家を乗せて、安住の地を目指し進むのだった。
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マルスを軽キャンで寝かしてあげたり、
カローラをエロい目で見たり、
カローラのお尻を触ったり、
カローラの胸を触ったり、
カローラの水浴びを覗いて、ゼノスにぶん殴られたりしながら、仲良く続く旅も、数日が過ぎた。
そんなある日、俺達の目の前に、小さな集落が見えてきた!
軽キャンで連泊していると、たまにはベッドで寝たい!
それにゼノス達もキャンプ生活で、疲労が溜まっているだろう……
昨晩、カローラの乳を揉んであげたら、カローラにぶん殴られ、マルスからは蔑みの目で見られた。
下降気味のヒロシ株を上げる為にも、ここは一つ、俺が先発して集落を偵察に行く!
そして、俺は、役に立つ男だと言うところを、ゼノス一家に見せつけねばならぬ!
俺は、軽キャンのスピードを上げて、先行する馬車を追い越し村へと向かう事にした。
追い越しざまにゼノス達に手を振ったが、無視された。
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獣人族の集落、カンコロ村は騒然としている。
「女と子供は家の中へ」
「男は武器を持って集まれ!」
騒がしく鍬や鎌を手に戦闘準備にかかる村人達
「村長!化け物がもう近くまで来てる!」
その声に、
「村の入り口に集合じゃ!」
村長の号令のもと、村の男衆が移動を開始する。
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軽キャンを颯爽と運転する俺、かっこいい。
「おっ!」
村人が入り口に集まっている!
大勢で迎えてくれるのか? そうだよな? 異世界では、軽キャンピングカーは珍しいだろうからな!
素朴でいい人達みたいだ。
俺は、運転席の窓を開け顔と手を出した。
「こーんにーちわー」
爽やかに手を振って言った!
ワーー! ワーー!
凄い声!
村人は熱狂して待ってるようだ。
早く行くからね☆
ブロロローー
軽キャンが村の入り口に到着した。
「出迎え、ご苦労様です!」
窓から身を乗り出して、笑顔で爽やかに言った。
ん?
次の瞬間、
「化け物め!」
「殺せぇ!」
「村を守れぇー!」
村人は、殺るき満々で鍬や鎌を手に、軽キャンに襲いかかってきた!
ドカ! バキ!
「ぅぎゃぁぁぁーーーー!!!」
窓から頭を出していた俺は、棒か何か、鈍器のようなもので、何発か貰いながらも、急いで軽キャンのパワーウインドウを作動させる。
ガツツッッッ!
「いたぁーーーー!!」
俺の頭が車内に入りきっておらず、パワーウインドウが容赦なく俺の頭を締め上げる!
「今だ! かかれーー!」
ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ! ドカ!
軽キャンの外に突きだした俺の頭の頭頂部へ、太鼓を打つように容赦なく攻撃が加えられる!
「痛い 痛い 痛い 痛い 痛い 痛い 痛い 痛いよ!」
俺は、必死で、右手でパワーウインドウのスイッチを操作して頭を抜き、クラクションを鳴らす。
ビィィーーーーー!!
「うわぁあ!」
村人達が、びっくりして軽キャンから距離をとった。
「いてて……アイツか」
俺が、窓の外を見ると、村人Aが手に、すりごぎの棒のような物を持っているのが見えた。
さっき、俺の頭をリズミカルに攻撃したのは……アイツだ!
俺と、村人達とが睨み合いを続けていると、ゼノス達の馬車がやっときた。
「遅いぞ!」
俺は、くらくらする頭で言った。
ゼノスが村人に何やら説明している。
・
・
俺は、軽キャンから降りて、さっきの村人Aを探す。
「いた」
ソイツを見つけた俺は、呟くと、村人Aに近づき、殴りつける!
ボカッ!
この野郎!
ボカッ! ボカッ! ボカッ!
俺が、殴っていると、生意気にも、反撃してきた!
俺と、村人Aが殴り合いを続ける……
「……ヒロシ」
ゼノスは、その様子を見ながら、アイツは何がしたいんだ、と呆れていた。
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・
カンコロ村に、宿屋がないことを知った俺は、村長に対して、迷惑をかけられたお詫びに泊めろ!と、ゴネた。
「……わかりましたよ」
村長が折れた。
実際、ヒロシに迷惑をかけたのは間違いないので、村長は、自宅にヒロシとゼノス一家を泊めてくれる事になった。
俺は、側にいたゼノスに、
「この俺の、交渉術のおかげで、泊まれるんだからな」
と、いかに、このヒロシと言う男は、有能で、頼りになるかを、教えてあげた。
1時間ほど……
だって、ゼノス達が分かるように、丁寧に延々と俺の偉大さを説明するためだから……なのに、途中でゼノスがキレたので困った。
まったく! 理不尽だよね!
・
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・
夜ーー
村長宅、ヒロシの部屋。
「ガソリンも、食料関係も、残りが、やばくなってきたな……」
ベッドに腰掛けたヒロシが呟く。
実は、軽キャンの燃料、消耗品、食料等を、ここに来るまでにほとんど使いきっていたのだ!
この先どうするか?
自分は、どうなってしまうのか?
不安がヒロシの胸に込み上げるのだった。
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