第48話寒い話



 豪雨の後の強い日差しの中ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。こんな時だからこそと、実はとっておいた鳥行話があります。書きかけの昨年秋のものには、目をつぶっていただけると幸いです。

では



「寒い!!!! 」


 昨年の大みそかの午後、私は本当にビュウビュウと耳元で聞こえる平野のど真ん中で、言っても仕方のないことを口にしていました。

仕事が午前中で終わり、年末休みの主人から

「本当に行きたいか、あそこは風を遮るもんがないぞ」

「もちろん、行く! 」と即答したのは自分なのですから、仕方がありません。

「ああ、休日ダイヤなのを忘れて一本電車をのりおくれたからなあ」

実はあまりそのことは関係はありません。暖冬だった昨年、私たちの住んでいる所で、一番寒く感じたのがこの日でした。


「まあ、これが当たり前の冬やけどな」

この場所に行き慣れている主人はケロリとしています。


しかし、この日が一番の寒波だろうが、田んぼの中の冷たい風だろうが、この鳥の「群れ」に出会えるのであれば、そんなことはどうでも良いのです。

数日前ここにいるという情報を得てやって来ると、


「あ! 飛んでる! 二十羽以上いる、あれだ!! 」


車の中から発見し、その群れが降りた場所も確認したのです。しかし車を止め、畦道を歩いたのですが、

「あれから飛んだ? 」

「ずっと見とったけど、飛んでないと思う」

「近寄ってるはずなんだけど」

私たち夫婦ともう一人の方と、結局見つけることはできませんでした。

その数日後、主人は一人で出かけ、写真を撮ってきました。


「虎穴に入らずんば虎子を得ず」トラの恐怖に比べれば、寒さなんてどうということもありません。


「タゲリのためなら、マガンも私にとっては初だし」


タゲリの名前もその存在も、バードウオッチングをするようになって初めて知りました。

タゲリは、本当に不思議な美しさを持つ鳥なのです。








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