第42話秋の鳥行記 最接近
キジの鳴き声も相当なものですが、その後、ガサガサ、ガサガサ、と茂みを歩く音がします。人間が立てる音とそれほど変わりません。
「出て来るかも! 」心の中で叫び、夫婦そろってカメラを構えました。実はフェンスの向こうには、私たちが立っているアスファルトの道の続きがあって、きっと一度はそこに姿を現すと考えたのです。ピントをそこに合わせて待っていると、音も次第に大きくなってきます。
「全体が撮れるといいな! 」
私はFZ,主人はミラーレスを一杯に伸ばしています。すると
「バサバサバサ!!」という大きな音と同時に目の前にキジが! つまり歩いて道に出たのではなくて、フェンス越し2メートル以内に飛んでやって来たのです。
「え! 」「あ! 」
ほんの数秒、そこにいて、またバサバサと羽の音がして、飛び去ってしまいました。目では本当に美しいオスを見ましたが、望遠にしているためピントが合うはずもなく、夫婦とも一応シャッターは切ったものの、「鳥かどうかもわからない」ブレブレの写真しか取れませんでした。
家に帰ってこのことについて話しましたが、私と主人とでは意見が真反対になってしまいました。主人はキジが
「飛んできてみたら、私たちに気が付き、驚いて逃げた」
と思ったそうですが。私は
「キジの威嚇」
と考えます。それには大きな理由があるのです、ですから主人にこう言いました。
「だってパパ、アッタ君の攻撃を受けたでしょ? 」
「あー、その可能性もあるかもなあ」
アッタ君、容姿とはそぐわないこの呼び方は、主人が付けたあだ名です。アッタ君はキジではありません、ですがアッタ君のことはまた後日詳しくお話しするとして、この日の続きをいたしましょう。
結局キジはそれ一度っきりで、姿を現してはくれませんでした。
しかし
「近かったね! 」「きれいやったな! 」
まさに興奮冷めやらぬうち、今度は
「あれタカや! ハイタカかオオタカや! 」
しかしすっと上空を一瞬で過ぎ去ったので、構える暇もありません。そうして、ようやく公園のゲートが空きました。
「どっちの道から行く? 」
「こっちの方がルリビタキが出るんでしょ? 」
「そう」
大きな公園なので道は何本かあります。私たちはメインではない、ちょっと暗めの道を行くことにしました。
「何か飛んだ! 」
主人が言うのですぐその方向を見ました、確かに何かが動いているようですが、暗くてよくわかりません、さすがの主人もカメラを構えることもせず、とにかくベニマシコの居るところに向かいました。
「最近は朝よく出ているみたいですよ」
と親切に公園の方が教えてくれました。ですがバードウオッチヤー一番乗りは私たちで、他の方は見当たりません、とにかく去年彼らを見た所に行きました。
「うーん・・・・・」
それらしき声がしません、鳥の声自体が少なく感じ、少し登ったところにある屋根付きの休憩所で荷物を下ろすことにしました。何故なら、そこでも去年はいたからです。
十五分んほど待ったでしょうか
「出た! ベニマシコのメス!! 」
「どこ???? 」
同じ女性には冷たいのでしょうか、主人は詳しく説明してくれたのですが、私は全く分かりません。
「おるおる、結構じっとしとる」
数分後、彼女は行ってしまいました。私に一枚もくれないままに。
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