第41話秋の鳥行記 痛恨のミス
我が家のアルバムには、ライオンの檻の前で撮った一枚の写真があります。しゃがんだ私と子供たちの物です。奥のライオンはほとんど映っていませんが、そのライオンを見た時ほど、可哀そうに思ったことはありませんでした。
あのフサフサしているはずのたてがみが、色んな所で固まったようになり、しかも茶色く変色しているようなところもあるのです。ムースのように何かがくっついてしまったのでしょう。
「野生のものは、こんな風になったものは見たことがない」
私たちが見ているのは選ばれた映像であるかもしれませんが、もし、自然界でこうなったとしても、雄ライオンは「元に戻す」ことをしているのでしょう。
大きなプライド、群れを保つには「風格」も必要なはずです。鳥は美しさを求めて、オスが美しく進化したと考えられていますが、もしかしたらライオンのメスだって
「いくら強くてもあのオスのたてがみはね・・・」
なんておしゃべりして、オス同士の争いでも
「お前のたてがみ格好悪い! 」
等と口喧嘩しているかも。
ほとんど狩りをしないと言われている群れのオスライオンは、もしかしたらこんなことに時間を費やしているのかもしれません。
ですが動物園ではその「必要もない」のです。
つまり野生生物はやはり
「美しくなければ生きてはいけない」
と思いました。
より美しく、賢い者だけが生き残る世界。
ですから野生のキジはあまりにも美しかったのでしょう。
だいぶん話はそれましたがその日の話に戻します。
さて、キジはいない、メジロはいるけれども朝元気いっぱいで動き回っている。かろうじて主人がジョウビタキのオスとメスが道路にいる写真を撮りました。
「へえ、面白い写真撮れたね」
と私も何か見つけようと探していると、道路の先、行きどまったフェンスの向こう側に、大き目の小鳥が止まりました。いつも思うのですが、その時も何故か先に双眼鏡を持ってしまいました。
「ベニマシコのメス! 」
「どこ? 」
「フェンスの向こうの道の飛び出た枝! 」
「ほんと! おるおる! 」
で、私がカメラを構えたとまさに同時、に飛んで行ってしまいました。
「もっと近づかんと」
確かに撮ったとしても豆粒だったでしょうが、やはりベニマシコが大きな目的だったので、これは痛恨でした。
「あーあー、俺ベニマシコのメス好きなのに」
オスと違って赤みはありません。バードウオッチヤーの中には
「メスか・・・」と言ってカメラを向けない人もいます。主人は地味鳥はあまり撮りませんが、派手なオス鳥の地味なメスは大好きなのです。
ちょっと私への愛情を感じたりします。
で、諦めきれず、そのフェンスの側までやってきました。朝、茂みの中、鳥たちの声はしています。
「戻って来るやろう」「そうね」
と思いながらしばらく待ちましたが、それらしき姿は、茂みのギリギリを飛び、すぐ中にもぐってしまうのです。私は自分の失敗に落ち込みましたが、急に真横で大きな声がしました
「キエーン!!!! 」
「キジだ!!! 」
「お前声が大きい! 逃げる! 」
確かに「キジも鳴かずば撃たれまい」と言いたくなるほどの大音量でした。
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