第40話秋の鳥行記 国鳥 キジ

 

 自然公園に着いたのはもちろん開園前でした。しかし公園の外にある街路樹にもたくさん鳥がいるので、退屈はしません。それに何よりも主人のお目当ては、早朝に公園の敷地内を堂々とウロウロすることもあるという「キジ」でした。


「おらんなあ、キジ」


いたとしてもフェンス越しにしか撮れませんが、やはりキジは何度見ても「また見たい」と思える鳥です。同じ年齢の方ならば経験がおありになるかもしれませんが、私の通っていた小学校にも動物の飼育小屋があって、ウサギとともにキジが飼われていました。ですから見慣れた大きな鳥ではあったのです。

 しかしこれが不思議なのですが「野生のキジ」に出会った時、それは本当にクジャクのように思えました。

とにかく美しい。大きく、様々な色を持ち、尾羽が長い。目の周りの特徴的な赤。また凛とした気品も感じられました。


 ですが実はそれはもう二十五年以上前の話になります。その当時住んでいた山間の町の小学校で、家族で遊んでいた時の事でした。バサバサと大きな羽音がしたと思ったら、オスの立派なキジが舞い降りてきました。


「飼育小屋のが逃げ出したのかな? 」

「野生のに決まっとるやろう」


と私たち夫婦は彼に釘付けになり、その時にキジの体高とそう変わらなかった子供に「これがキジよ」と教えたのかどうなのか、実は全く覚えていません。それほどに見ることが楽しく、本当に美しかったのです。

 トコトコとしばらく歩き回っていたでしょうか、カメラも何も持ってきてはいなかったので、逆にずっと観察できました。


「これは国鳥になるよね、きれい」


そしてそう長くいることもなく、飛び去ってしまいました。


 それから私はちょっと疑問に思いました。小学校でキジは見慣れているはずなのです。なのにあれだけ食い入るよう見て、本当に美しいと思ったのは何故なのだろう、と。

しかしその疑問は子供と動物園に行った時にわかりました、


しかもライオンを見て。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る