第38話チョウゲンボウその2


 今、日本中にシベリア方面からやって来ている「ツグミ」はスタイルの良い鳥の代表格です。嘴も尻尾も適度な長さで、ツグミちゃんという名前の方が羨ましく思えます。

確かに美観はそれぞれですが、ハトは頭がちょっと小さすぎるように感じますし、小鳥はミニチュアサイズなので、どうしても頭が大きくなります。それが小鳥の可愛らしさの元ではあります。

ですがチョウゲンボウのあの横の姿は、まさにバランスの取れたツグミでした。


「カッコいい! 」


小さいと思っていた故に私は感動しました。しかも電柱の上で下を歩く中学生女子を見ているのか、頭が灰色のオスのチョウゲンボウでした。


「うわ! ピントが合わない!!! 」


近いのです、距離は住宅地の道一本分しかないのに、まあボケたままの映像しか映りません。それでも仕方なく撮っていると

「ギロリ」と私の方を見て、飛んで行ってしまいました。


 それ以来、この電信柱の上を見るのが日課になったのですが、今の所、二度とここでは撮ることができていません。そして鳥果を確認すると案の定、ぼやけた写真になっていました。でもその当時としては最大限の努力をしたつもりなのです。電柱に体を押し付けて固定し、なるだけ揺らさないように撮ったのです。


「なんでこんなにぶれとるん、せっかく近いのに」


「だって暗かったんだもん」


と気候のせいにしましたが、電柱はばっちり撮れているので、ぶれてはいないのです。とすれば、彼らのオレンジの入った茶色の羽は、カメラには映りにくいのでしょう。

でも私にとっては記念すべき一枚でした。


「あーあー、こんなチャンス、もうないぞ」


私もそう思いましたが、これが野鳥の面白い所で、そうではなかったのです。



 それから一年後の事でした。朝もやで数メートル前が見えないような日で

「いないかな」と思いながらも、彼らの狩り場に向かいました。するとちょっと離れた所にどう見ても

「中途半端な大きさ」の鳥が見えました。しかも頭が大きい。


「フクロウかな? 」

高倍率で見て見ると


「チョウゲンボウのメスだ!」

とわかりました。頭がかなり大きく見えたのは、朝もやで濡れた翼を乾かすためなのでしょうか、かなり体を膨らませていたのです。しかもどんどんとこっちにやってきます。


「あ! いけるかも、翼が重そう」


とかなり近くで撮影させてもらいました。実はチョウゲンボウは

「撮らせてくれる」場合も多いのです。ハヤブサがあまり動かないのと同じなのかもしれません。しかも近年は都会で繁殖している例もあり、海外では「町の鷹」とも言われているそうです。


 全国的に飛来する彼ら、私の住んでいる地域では、チョウゲンボウはバッタを食べていることが多いですが、小鳥ももちろん食べないことはありません。それに対してスズメやムクドリは大集団を結成し、そう数のいない鳥たちは、タッグを組んで混群となる。


私は生き物は人間の考えることぐらい、普通にやっていると思うのです。よく魚は「三日たつと忘れる」などと言われますが、しかし人間だって

「三日坊主」はたくさんいます。


私がここ最近チョウゲンボウに出会えていないのも、もしかしたら


「三日連続していなかったから、別の場所に変えた」


からなのかもしれません。明日からはまた彼らの狩り場を見に行くことにします。





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